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ピ・エ・ロ ~流の場合~  作者: 岩石
遊貴の場合
9/33



 ――……ま……ど……て……かな?……――


 どこか遠く誰かの話し声が聞こえる。


「――から」


 大好きな幼馴染みの声だ。

 ああ、もう、大丈夫なんだ……。

 朧げに安全な所に居るんだと判り、ホッとする。徐々にはっきりしてくる意識に、自分が俯せの体勢で寝かされていると気付いた。


「ぅ゛ぅ」


 あらぬ場所の刺すような痛みにうめき声が出た。いまだ残る異物感に吐き気がする。

 側に人の気配を感じて目を開けると、予想通りに流の姿があった。


「よう。ここ、俺の部屋。他には誰も居ないから、安心しろ」


 ゆっくり言われた言葉に、オレは握られた手を軽く握り返す事で応えた。

 大丈夫。ちゃんと判ってる。錯乱したりしない。


「もっと寝てろって言いたい所だけど、薬を飲んだ方がいい。……飲めそうか?」


「う゛ん」


 我ながら酷い声がでた。

 身じろぐだけで体のあちらこちらが酷く痛む。痛みに堪えながら、オレは薬を飲むべく流の手を借りて体を起こした。

 ベッドに腰掛けた流にもたれ掛かり、ゼリー飲料を受け取る。手で持つとひんやりしていて気持ちいい。

 冷た過ぎないそれは飲みやすく、スルスルと喉を降りていく。

 美味しい。生き返る〜。

 流に体を預けたまま、更に差し出されたペットボトルにも口を付ける。

 中身を半分ほど飲み干してから、渡された錠剤を口に含んだ。


「……ありが、と」


「ん。もう横になるか?」


 頷くとまた俯せの体勢に横たえられた。

 再び手を軽く握られると、慣れ親しんだ感触に誘われるように瞼が重くなる。

 ずっと側に居てくれるよね……?


「ここにいる。……ゆっくり寝な」


 まるでオレの心を読んだかのような流。

 その囁くような声を最後にオレの意識は再びブラックアウトした。



※ ※ ※ ※ ※



 眩しさにパチリと目が覚めた。

 窓から見える太陽は高く、昼頃だとわかる。

 よく眠ったおかげか薬が効いているのか、痛みは昨夜より随分マシになっていた。


「流?」


 目だけで見える範囲を見渡すが幼馴染みの姿はない。

 代わりにベッドにくっつけるように移動させてあるローテーブルが目に入った。

 その上にはいつも置いてあるノートパソコンは無く、替わりに手を伸ばせば届く位置に、ゼリー飲料と汗をかいたペットボトルがある。

 それを取ろうと体勢を変えると、脇に紙が置いてある事に気付いた。

 ……えーと、何々?

 メモには買い物に行く旨とおおよその帰宅時間が書かれていた。俺の家には外泊の連絡を入れたとも。

 面倒くさがりの割には、まめっていうか至れり尽くせりっていうか……世話焼きだよねぇ。

 ふふふと笑うと、オレはペットボトルの中身を飲み干しベッドから降りる。

 体ベタベタ……シャワー浴びてさっぱりしよ。

 オレが眠っている間に綺麗にしてくれたようで、春紀さんとの情事の跡は無い。しかし、寝汗をたくさんかいていた。

 体が重く足元がふらつくが一人で歩けない程じゃない。

 走る鋭い痛みにときおり体を固くしつつ、着替えを拝借するとオレはゆっくりと浴室に向かった。





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