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――……ま……ど……て……かな?……――
どこか遠く誰かの話し声が聞こえる。
「――から」
大好きな幼馴染みの声だ。
ああ、もう、大丈夫なんだ……。
朧げに安全な所に居るんだと判り、ホッとする。徐々にはっきりしてくる意識に、自分が俯せの体勢で寝かされていると気付いた。
「ぅ゛ぅ」
あらぬ場所の刺すような痛みにうめき声が出た。いまだ残る異物感に吐き気がする。
側に人の気配を感じて目を開けると、予想通りに流の姿があった。
「よう。ここ、俺の部屋。他には誰も居ないから、安心しろ」
ゆっくり言われた言葉に、オレは握られた手を軽く握り返す事で応えた。
大丈夫。ちゃんと判ってる。錯乱したりしない。
「もっと寝てろって言いたい所だけど、薬を飲んだ方がいい。……飲めそうか?」
「う゛ん」
我ながら酷い声がでた。
身じろぐだけで体のあちらこちらが酷く痛む。痛みに堪えながら、オレは薬を飲むべく流の手を借りて体を起こした。
ベッドに腰掛けた流にもたれ掛かり、ゼリー飲料を受け取る。手で持つとひんやりしていて気持ちいい。
冷た過ぎないそれは飲みやすく、スルスルと喉を降りていく。
美味しい。生き返る〜。
流に体を預けたまま、更に差し出されたペットボトルにも口を付ける。
中身を半分ほど飲み干してから、渡された錠剤を口に含んだ。
「……ありが、と」
「ん。もう横になるか?」
頷くとまた俯せの体勢に横たえられた。
再び手を軽く握られると、慣れ親しんだ感触に誘われるように瞼が重くなる。
ずっと側に居てくれるよね……?
「ここにいる。……ゆっくり寝な」
まるでオレの心を読んだかのような流。
その囁くような声を最後にオレの意識は再びブラックアウトした。
※ ※ ※ ※ ※
眩しさにパチリと目が覚めた。
窓から見える太陽は高く、昼頃だとわかる。
よく眠ったおかげか薬が効いているのか、痛みは昨夜より随分マシになっていた。
「流?」
目だけで見える範囲を見渡すが幼馴染みの姿はない。
代わりにベッドにくっつけるように移動させてあるローテーブルが目に入った。
その上にはいつも置いてあるノートパソコンは無く、替わりに手を伸ばせば届く位置に、ゼリー飲料と汗をかいたペットボトルがある。
それを取ろうと体勢を変えると、脇に紙が置いてある事に気付いた。
……えーと、何々?
メモには買い物に行く旨とおおよその帰宅時間が書かれていた。俺の家には外泊の連絡を入れたとも。
面倒くさがりの割には、まめっていうか至れり尽くせりっていうか……世話焼きだよねぇ。
ふふふと笑うと、オレはペットボトルの中身を飲み干しベッドから降りる。
体ベタベタ……シャワー浴びてさっぱりしよ。
オレが眠っている間に綺麗にしてくれたようで、春紀さんとの情事の跡は無い。しかし、寝汗をたくさんかいていた。
体が重く足元がふらつくが一人で歩けない程じゃない。
走る鋭い痛みにときおり体を固くしつつ、着替えを拝借するとオレはゆっくりと浴室に向かった。




