閑話 切人と流4 side流
「温和な俺でも本気で怒るぞ。そいつは今頃、誰彼かまわず吹聴してまわってるかもしれないんだ」
連れは居なかったと言い張る西岡に、沸いた怒りそのままに言葉にする。
口を割らせる為にも俺の本気の怒りを感じてもらわなきゃ困る。俺には誘導尋問なんて高度な真似は出来ないから。
「お前、遊貴を晒しものにする気か? ……これで最後だ、誰がいた?」
これでも言わないなら俺はコイツを見限る。恋人としてだけじゃない。人としても、だ。
「やましい事はある! あるが、一人だった。本当だ!!」
「……」
そんなに必死に隠したい程の相手なのか?
それとも……事実か。
「本当だ。誰とも一緒じゃ無かった」
「やましい事って?」
「……言えない」
必死な様子にとりあえず信じる事にして手を離した。
嘘だったら連れ共々ただじゃおかん。
まあ実際に口の軽いやつと居たのなら、口止めくらいしてるだろう。それに後で遊貴に確認すればいいだけだし。
「そうか。まあ、連れが居なかったんならいいや……居なかったよな?」
「居なかった」
流石にしつこいか? でもコイツ、何か怪しいんだよなぁ。ま、やましい事あるらしいし突っ込まずにいてやるか。
「なら他に人影は? お前みたいに遊貴の事に気付いていそうな奴だ」
「居なかったと思う。少なくとも俺は誰も見てない」
「そっか」
俺はホッとしてベッドに頭を突っ伏した。
目撃者は無し……か。よかった〜。
「なあ……警察には届けないのか? てかさ、洗い流すのまずかったんじゃ……」
俺は突っ伏してた顔を上げた。
今頃それ聞くか? 平気そうにしてるけど、やっぱり平常心失ってるんだな。
当たり前か。カウンセリング系、後で調べとこ。
「届けるかは、それは遊貴に聞かなきゃ分からないよ。ただ、遊貴の事だ。警察沙汰にするつもりなら、最初から病院に駆け込んでるさ。俺の所じゃなくて。だから奇麗にしてよかったんだ」
てか、相手がアイツなら遊貴は絶対に警察沙汰にはしないだろうし。
はあっと四度目の溜め息をつく西岡。
「お前な、遊貴は襲われた直後なんだぞ。ショック受けてる人間が病院とか自発的に行けるわけが無いだろ」
一度言葉を切ってギロリとこちらを睨む西岡。
「もう少し遊貴の気持ち考えろよ」
「お前の方こそ遊貴を誤解してるよ」
襲われたんじゃない。合意の上だろう、と言いたいがとりあえず黙っておく。アイツとの関係を遊貴に断りもなく勝手に暴露するわけにはいかない。
なにより遊貴に確認するまで、本当に相手がアイツだったのか確証が得られないから。
「可憐で儚げなのは見た目だけだ。遊貴は泣き寝入りしたりしない。誰かの後ろで守られて、それを良しとするような奴じゃない。先頭に立って戦う漢だ」
いくら恋人に尽くすっていっても、遊貴にだって譲れないラインはあるからな。流石に今回の有様は酷過ぎる。このままにはしないだろう。
何をするにしても真っ向から対決するはずだ。絶対。
俺の予想が外れていて、アイツとは別の誰かに襲われたのだとしてもそれは変わらない。
だからオレは考え得るだけの準備を整えるんだ。
どんな事態になっても対処出来るように。




