閑話 切人と流3 side流
西岡が知る事の経緯はこうだ。
彼は公園のトイレでドア越しに男と相対した。
西岡が外に出た後、程なくトイレから出て来た男は彼に気付くと逃げるようにその場を走り去った。
それに不審さを強く感じた彼がもう一度トイレに入ってみると、そこに遊貴が居たそうだ。
「ここへは遊貴に頼まれて?」
「ああ。くそっ! 何でもっと早く……あの男だってみすみす逃がして……目の前に居たのに!」
よほど腹立たしいのだろう。西岡はぎりぎりと音がしそうなほどに歯を食いしばり、拳を握りしめる。
遊貴のためにこんなに怒ってくれるなんて、西岡って本当にいい男だな。そんな場合じゃないけどちょっと嬉しい。
ぽんぽんと宥めるように西岡の背を叩いた。
タラレバを言い出したらきりが無い。何よりお前は紛れも無く遊貴の恩人だ。
だからあまり自分を責めるな。
「西岡が声をかけたから男はトイレから出てったんだ。それって男から遊貴を救い出したって事だろ。……俺は西岡に感謝してるよ」
感謝されても何の慰めにもならないだろうけど。
俺の言い分に微妙な顔をする西岡。
「それで、どんなやつだった? 顔は見たか?」
一人ならアイツかな、と心当たりを思い浮かべながら聞いた。
西岡はしっかり思い出そうとしているのか、少し考えてから話し出す。
「……短髪眼鏡にスーツ姿。身長はたぶん俺くらいで、ひょろっとしてた。顔はよく見えなかったけど、若く感じたから……20代くらいだと思う」
「短髪眼鏡の若いリーマンね。判った。心に留めておく」
やっぱりアイツか! 例によって例の如く、恋人に尽くしたんだろう。まったく。DVな彼氏なんざ、逆に殴り倒せよな。遊貴のバカたれ!
内心で悪態をついていると、ハタリと肝心なことを聞き忘れていた事に気付いた。
隣を見ると西岡もなにやら難しい顔で考え込んでいる。
遊貴の事か、はたまた全く別の事か。
「西岡、他に確認したい事があるんだ」
「あ、ああ。何だ?」
「お前、一人だったか? 誰か連れが居たんじゃ?」
コレだけはしっかり聞いておかないと。この様子なら西岡自身は吹聴する事はないだろうけど、連れはどうだか判らんからな。
俺が聞いたとたん、あからさまに動揺しだす西岡。
「あ……いや、一人だ」
はい、嘘きましたー!
「なら何故目が泳ぐ。誰と居た?」
「誰とも居なかった。俺一人だ」
うろたえ過ぎですよ、西岡君? そんなんで言い逃れ出来ると思うな。
遊貴の恩人といえどこればかりは看過できない。
「何故隠す? やましい事でもしてたか?」
確か今日の午後は部活だったはず。部の連中か、それとも……浮気、か? 浮気相手とでも居たのか? 冗談じゃないぞ。コイツにベタベタする女は、なぜか揃って口が軽いのばかりなんだ。
そんな奴に知られてたら面白おかしくばらすのが関の山。最悪、今頃ネットに流してるかも……。
次々と頭によぎる己の考えに、焦りと怒りがないまぜになる。
俺は内心で落ち着け冷静なれと自分に言い聞かせていた。
「……この際、浮気でも目をつむる。正直に言え。誰と一緒だったんだ!」
気が付けば西岡の胸倉を掴んで怒鳴っていた。
すでに遊貴を晒しものにしているかもしれない、そう思えば誰とも知れぬ人物にふつふつと怒りが沸き上がる。
その相手を隠す西岡に対しても同様に。
西岡を掴んだ俺の手はいつの間にか震えだしていた。
~補足と謝罪~
作中で流が女性蔑視ととれる思考してますが、これは、とある【極一部の女子生徒】に対するものであって、女性全般に対するものではありません。
理由についても、岩石の力不足により作中に出せませんでした。
誠に申し訳ございません。
2013.11
~追記~
本文、流のセリフが一つ抜けていたので追加しました。
2013.12




