閑話 切人と流1 side流
流視点。遊貴が眠ってる間、切人と流のやり取りです。
読まなくても遊貴編に支障はありません。
――ピンポーンピンポンピンポンピンポーン――ドンドンドンドンッ――
突如、鳴り響くインターフォン。続けてドアを激しく叩く音。
怪しい事この上ないが、俺は躊躇することなくドアを開け放った。
いたずらだったらぶっ飛ばす!
「うっせーぞ! 誰だっ!! 西岡? ……って、遊貴!?」
外に居たのは硬い表情をした西岡だった。しかもその背には遊貴の姿が。
どうやら遊貴は意識が無いらしく、顔は青ざめその瞳はかたく閉じられている。
「――」
「話は後だ。とりあえず入って」
口を開きかけた西岡を制し、半身をずらして中へ入るよう促した。
意識がなく血の気の引いた顔を見た俺は、遊貴の状態に見当がついていた。
微かに遊貴から香る匂いと着衣の汚れで自分の予想に確信を持つ。
「先に遊貴の怪我を診たい。床に寝かせてくれ。俯せに」
「床!?」
遊貴をベッドに寝かせようとしていた西岡を制し、俺はローテーブルを移動させて床にスペースをつくっていく。
「今ベッドに上げたら、手当した後すぐに寝かせてやれないだろ」
「あ……それもそうか」
汚れを落とす前に寝かせたら、当然ベッドにも汚れがつく。
そうなれば手当を終えてもシーツを取り替える間、遊貴を床に放置する事になるからな。
救急箱を手に取り、段取りを頭の中で整理していく。
まず裸に剥いて傷の具合をチェックして。
手当する前に汚れ落とさないと。濡れタオル……いや浴室に運ぶべきか。意識無いし、シャワーだな。タオルもたくさんいるな。
「もう帰ってくれていいぞ?」
遊貴を寝かせ終えたのを視界の端で確認した俺は西岡に言った。
上から目線でしかも礼の一つもなし。無礼極まりないとは判っているが、今の俺はそんな事に構ってられない。
救急箱の中身を確認していく。
塗り薬、湿布はある。冷却シートは残り一つか。
じきに熱も出る。鎮痛薬は目を覚ましてから飲ませるとして、胃が空っぽじゃマズイよな。手当が終わったら軽く腹にいれるモノ用意しよ。
「帰れって……ふざけてんのか?」
やはり怒らせたようだ。
素直に帰れや。問答する暇があるなら、さっさと遊貴の具合を確認したいんだよ、俺は!
「スマン! 俺の言い方が悪かった。今はとにかく帰ってほしいんだ。頼むよ」
ここでごねられても困るので、内心の苛立ちを押さえ込んで下手にでた。
両手を合わせて拝むように頼み込む。
いつまで遊貴を放置させる気だ? さっさと帰れ帰れ。
「何で……手伝いがいるだろう?」
だああ! しつこいわ!!
「遊貴のプライバシーに関わる。それにあまり人の世話になりたくないだろうし」
あのな、裸にして手当やら何やらイロイロするんだぞ? 俺が遊貴の立場なら、知り合ったばかりの他人に世話されるのはごめんだ。
お前は遊貴と親しくなって間もないだろ。言わなきゃ判らんのかい。そのくらい察しろ!
はあっと西岡が溜め息をついた。
「今更だろ。ここまで運んだの誰だと思ってんだ? ……それに、何があったか判ってるから」
最後にボソリと低い声で呟かれた言葉には、抑え切れない怒りが込められていた。
判ってるから? だから何だ、と反論しかけたが西岡の圧力に俺は負けた。
これ以上の問答は無駄だと判断し、結局、西岡の手を借りる事にしたのだった。




