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ハズレ勇者の気まま暮らし  作者: 桜惡夢
~Another World Life~
40/40

飛ぶもの


 これまでの流れ──タイミング的に、そろそろだとは思っていたので驚きはしません。

 はい。スィン、ジステラ、パフィアさんが妊娠。

 また、モーラ族とミルキシア族の妻達も半数が妊娠。一気に来ましたが、遣る事は遣っていますからね~。

 能力による妊娠はさせていませんから自然な形です。ただまあ、自分でも絶倫だとは思いますけどね。


 そんな皆の妊娠ですが、今回の場合、予想よりも早くパフィアさん達が入っている事には驚いています。

 ただ、ミルキシア族は女性だけの種族ですから、種の保存──存続の為の本能なのかもしれません。

 確証が有る訳では有りませんから俺の推測ですけど。決して、的外れな考えだとも思えませんから。

 何より、妊娠を泣いて喜ぶパフィアさん達を見たら、不粋な事なんて言えませんから。



「こうして地図(・・)にして見ると判り易いのぉ」


「まあ、その為の地図(もの)だからな」



 新たに領地を得た事も有り、現在の領地と周辺地域を地域に起こしてみた。

 まあ、領地程、周辺地域は詳細ではないんだけどね。それは仕方が無いので無視です。


 ──で、その地図なんですが。

 現在、俺の領地は人口に対しては広大です。はっきり言って孫の代まで人口が増え続けても大丈夫でしょう。それ位には十分な領地だと言えます。



「ふむ……やはり、此処は早めに獲りたいのぉ……」


「やっぱり、そうだよなぁ……」



 その綺麗な指先でアルビナスが指した場所は、最初の領地の北東部で、三つ目の領地の南部。

 其処が空いている為、南北に移動がし辛い。

 出来無い訳ではないのだけれど、安全ではないから。安全を最優先すれば二つ目の領地を経由した西回りでの迂回ルートとなる。

 俺自身、或いは俺や妻達が一緒なら、一瞬で移動する事は出来ますけど……妻達は妊婦が多いので。

 無いとは思いますけど、万が一の可能性も有る以上、楽観的な考えや安易な行動は避けます。


 ──となると、迂回ルートによる移動となる訳です。急ぎの場合等は別ですけどね。



「ケポカ山の周辺には無かったんだよな?」


「うむ。現状で獲りたい(埋めたい)所には無いのぉ」


「……以前には無かったけど、三つ目の領地を得た事で新たに出現したって可能性は?」


「それは…………無いとは言い切れんのぉ……」



 俺の一言にアルビナスは眉根を顰める。

 ダンジョンの出現条件というのは研究されてもいない手付かずのジャンルらしいし、無理も無いか。

 判っている事とは、勇者が召喚されるとダンジョンが出現する事と、勇者が全滅すると消失する事。

 その為、新たに勇者が召喚されるとダンジョン探しが各国のサポートの一つだったりするそうだ。

 勇者とダンジョンの関係性の深さが窺えるな。


 しかし、エメの側に有ったダンジョンは、その場所にずっと存在し続けていた。

 この事から、ダンジョンには二種類有る事が判る。


 恐らくだが、勇者を召喚出来るのはヒュームのみ。

 だから、現存する国は全てヒュームの国。

 そして、勇者の召喚が出来る国に出現するダンジョンというのは勇者の存在──有無と連動している。


 一方で、エメの側に有ったダンジョンは国の中に有る訳ではなかった。

 つまり、未領地(・・・)に存在するダンジョン。

 だから、攻略した俺が領地として獲られた。

 そう考えると一応は説明が出来る。


 だから、この辺り──俺の領地の周辺、特に東部域は手付かずの場所の可能性が高い。


 仮に、過去に領地となっていても国として滅んでいるのであれば領地権は喪失している。

 少なくとも、この世界の──今の俺の立場からすると何と言おうとも領地ではない。

 権利を主張したければ、世界に認められるしかない。そう言い切れるのだから。


 そういう訳で、四つ目のダンジョンの探索へ。

 まあ、中途半端な状態よりも判り易い形にしたいとは個人的にも思いますからね。異論は有りません。




 可能性を否定は出来無い為、先ずは探索済みの場所を再調査します。判っている分、早いので。


 それと同時に、次の領地候補を空から調査して貰い、鳥型のモンスターを探して貰っています。

 リィリスが居たキュイスバン島に行けば確実ですが、近場で確保出来る可能性も有りますからね。

 羽毛は無理でも、食用に出来るのなら、価値は十分。食用肉に困ってはいませんが、種類が欲しいので。

 リィリスとフェリスさん達には3人一組で安全第一で動いて貰っていますから問題は無いでしょう。

 何かあれば、領地に逃げ込めばいいので。



「そう言えば、村長。ミイム様って、スライムだったんですよね?」


「そうだよ」


「スライムって確か、分裂増殖(・・・・)で雌雄は無い筈ですが、ミイム様は女性ですよね?」


「あー……その事ねぇ……」



 休憩中、探索隊のモーラ族の男性から、そう訊かれ、以前に皆──妻達とした会話を思い出す。

 俺に殺されて人化した最初の存在であるアルビナスが元々雌だった事も有り、そういう物だと思っていた。

 しかし、ミイムの存在により改めて考えさせられた。考えて──気付いた。

 「抑、エメって木だったんだよなぁ……」と。

 うん、まあ、俺の中で勝手にドライアド(女性像)と結び付けて納得していたのが原因でした。

 何気無くミイムに「スライムって雌雄が有るの?」と訊いたら、皆から教えられた。

 教えられて、色々と気付いた訳です。



「どうやら、俺が男だから女性になるみたいなんだ」


「……それでは、雄のモンスターも女性に?」


「理屈としてはね。ただ、今の所は女性──雌か無性の相手ばっかりだったら、定かじゃないけどね」


「…………何と言うか、複雑な話ですね」


「俺達の感覚からするとねぇ……」



 転生物で性別が変わったら、転生後の性別──肉体に精神が引っ張られる、という設定が多い。

 一応、理屈としては理解は出来る。

 しかし、肉体と精神の不一致というのは、一種の病と考えられていたのが俺の居た世界の考えの一つ。

 そういう意味では、多分、明確な正解は無いのかも。各々が、様々な要因により、異なる。

 だから、結局の所は本人次第なんだろうな。



「……因みに、村長は受け入れられるんですか?」


「んー……何とも言えないかな」


「まあ、そうですよね」


「ただ、俺が殺して女性になる訳だから、向こうが俺の妻になる事を望むのなら、かな。俺からしたら女性な訳だから拒絶する理由は無いから」


「あー……確かに、そうかもしれませんね」



 そう、相手が望むのであれば、俺に否は無い。

 元は雄のモンスターでも、人としては女性だから。


 ただ、ちょっとした懸念は有る。

 まあ、これは雌雄に関係の無い事なんだけど。


 もしも、人化した相手に伴侶や子供がいた場合には、どういう状況になるのか、と。

 アルビナス達は皆、モンスターの時から独身だった。だから、今の所は問題にはならなかった。

 しかし、その可能性は無い訳ではない。

 無い訳ではないけど──低いというのが、皆の意見。

 始祖となる存在は、それだけ個として抜けた存在。

 それ故に、普通に繁殖したり、群れを成す程度ならば始祖に至る資格は得られない、と。

 そう言われてみれば、納得は出来る。


 だから、元が雄だろうと、独身の可能性が高い。

 元が独身──童貞なら、人化して女性に成れば感覚は雄の時よりも女性に引っ張られるだろう、と。

 そういう見立てを皆はしている。

 まあ、俺としては殺した責任を取るだけだけど。






「アイク様! 遣りましたよーっ!」



 帰ってきたフェルメが抱き付いて、そう笑顔で言う。それを叱ろうとするフェリスさんに「いいから」と手で合図しながら、その理由である獲物(成果)を見る。

 その見た目は一言で言えば、四つ足の大鶏。

 大型犬と同じ位の胴体で、脚は鳥類。胴体の横に翼を持ち、鶏の頭と尾を有する“クドゥッグ”。

 身体を被う羽根は三毛の様に白・黒・茶色が不規則に入り混じっていて鶏と思うと違和感が凄い。

 頭は胴体と比較するとアンバランスな程に小さいが、とても獰猛らしく、特に縄張り争いや侵入者に対しての雄の反応は苛烈だという事。

 誰も怪我はしていないけど、気を付けて欲しい。

 有する翼は飛翔する為というよりも、滑空する為で、内側は羽毛ではなく皮膜。

 まあ、これはこれで丈夫で柔軟な為、色々と使い道が有るでしょう。ジステラが狙っていますから。


 食用になる事は判ったので、早速味見をしますか。






「──っ美味ぁっ!?」



 一口食べて、思わず、そう声が出てしまった。

 塩を振っただけの串焼き──焼き鳥ですが、美味い。肉自体の旨味が凄いので、味付けは塩で十分。

 普段食べているのが牛や豚や熊や爬虫類系だからか、肉質や旨味の種類が全く違います。

 今回の狩りは試食用でしたが──採用です。

 まあ、そう言う必要は無いでしょうけど。

 既にクドゥッグ捕獲計画の為の聞き取りでフェルメが囲まれていますからね。

 発見したのがフェルメの組──と言うかフェルメだけだったので、情報源は限られています。

 その上、狩れたのは見付けた僅か5羽だけ。

 周辺にも他のクドゥッグの姿は無し。

 フェルメって運が良いのか悪いのか……



「良いのだろうな。本人や周囲は面倒事や厄介事の様に思うのかもしれないが、結果としては良いのだから」


「確かにね」



 試食を終えたローザさんが、そう言う。

 ……読心? いいえ、夫婦の理解力です。



「それにしても、空を飛べる方は身が少ないな」


「身体が重いと、それだけ飛ぶ為に力を必要とするから軽い方が楽に飛べますからね」


「ああ……それはそうか」



 人の翼とは違い、飛行型のモンスターが飛ぶには翼や翅を動かす筋力が必要な為、大型でも軽量でなければ、飛行能力は低くなります。

 その辺りの事は、リィリスから聞いていますので。


 ──で、調査の成果はクドゥッグ以外にも。

 体長50センチ程の黒燕の“スクーロワーダ”。

 首を落とすと、其処から皮と一緒に羽毛が綺麗に剥く事が出来る為、とても処理は楽。ただ、可食部が少なく美味しいとは言えない。


 翼長は3メートル近い“フテブテプテド”。

 ただ、巨大な翼に羽毛は無く、皮膜と筋力で飛ぶ為、胴体や頭は小さい。その頭も大きさの九割が嘴。

 味はまあまあ。ただ、量を安定供給する事は難しい。何故なら、繁殖期が三年に一度で、産卵する卵は一度に最大で三つまで。更に繁殖可能な成体になるのに5年。ええ、食用としては効率が悪過ぎますから。


 最後に鳥では有りませんが、巨大蛾“ウロヴロ”。

 飛行型のモンスターという事で狩ってきた訳ですが、食用では有りません。

 しかし、その翅の鱗粉が加工すると調味料を作る材料になる事が判明したので吃驚。

 狩ってきた組の面々も驚いていました。

 しかも、鱗粉なので殺す必要は無く、飼育しなくても領内に居さえすれば提供(採集)が可能。

 はい、このウロヴロも確保する予定です。



「少し離れただけだが、こうして見知らぬ存在が居る。そう思うと如何に自分達が狭い世界で生きていたのかを思い知らされるな」


「それはローザさん達だけじゃないですし、俺もです」


「まあ、アイクの場合は世界規模で違う訳だしな」


「でも、未知だから楽しくも有りますよ?」


「……そうだな。そういう考え方も有るな」



 自分の常識が局所的だったと知った時、自分の世界の小ささに無力感にも似た思いを懐く。

 それは個人の能力や知識という範疇を超えた事だから仕方の無い事だとも言える。

 ただ、そうと判っていても、つい、考えてしまう。

 そういう時、切り換え易いのが楽しむ事。

 どんな些細な切っ掛けでも構わない。

 その切っ掛けから、前向きに変えて行けるのなら。



「クドゥッグを家畜化すれば、料理の幅も広がります。肉質が違うから出来無かった料理も有りますからね」


「成る程。それは楽しみだな」



 そんな中でも、食は特に身近な切っ掛け。

 まあ、馴染みが無いとは躊躇するでしょうけど。

 少なくとも、今の俺達にとっては楽しみですからね。未知のモンスターや植物等は生きる糧です。

 ……肉体的にも精神的にもですね。


 ああ、そういう意味では新しく領地になった海の方も調査しないといけませんね。

 ダンジョンを探索する際に一通りは調査しましたが、思っていた以上に領海が北に広かったので。

 新しい海産物が増えると嬉しいですね。


 最初は不安しかなかった異世界での生活にも慣れて、楽しむ余裕も出来ました。

 皆の存在、自分の成長と理由は有りますけど……

 単純に今、俺は幸せなんでしょうね。

 大変な事や面倒な事も楽しめている訳ですから。

 俺は“ハズレ勇者”で良かったと思います。



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