表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/41

No.23 『リターン』

 ユート達は、ララの倒したゴーレムに居たたまれなさを感じつつも、ダンジョンを進むとすぐに2層のボス部屋へと到着した。よって、ボス戦の準備をしながら一旦休憩をとったユート達。


「今度のボスはどんな奴かな?」

 リペアが斧の手入れをしながら言う。


「迷宮エリアで出現するモンスターの巨大化版が多いからね。今度は迷宮ネズミとか来るんじゃないかしら?」


「それなら、もう一度巨大コウモリっていう場合もあるよね?」


「そうだな。その場合はさっきと同じ方法で行けばいいだろう。注意すべきは、1層とは違う攻撃をしてきたり、攻撃の種類が増えたりする場合があることだな。同じコウモリだとしても個体差はあるし、1層と2層では若干強さも上がるからな」


「そうやな。うちは結界を張るっちゅうやる事は変わらへんからあまり違いはあらへんけど、気を付けた方がいいやろうな。前、同じ敵を倒したからと言って、次も倒せると勘違いして全滅するパーティーの話は五万と聞くわな」


「ボスがゴーレムの場合もありますよね?」


「あーそれもあるわね……それだとかなり面倒ね」


「その場合はもう一度ララにお願いしようか。苦手なモンスター相手に訓練として戦ってもいいけど、今回の目的はあくまでパーティーの連携確認が最優先に3層到達が目的だ。苦手なモンスターの訓練は、また今度でいいだろう」


「分かったにゃ。ララ任せるのにゃ!」




「ゴッ――」


「って、案の定ゴーレムか! ララ頼むぞ!」


「分かってるのにゃ! 《サンダーボルト》にゃ!」

 黒い渦からゴーレムが出て来た直後、すぐにユートがララに指示を出した。



「ゴッ――」

 ララの手から放たれた雷は容赦なくゴーレムへと襲いかかる。


 落雷の木霊する音がボス部屋に消える前には、ゴーレムは粒子となって消えていた。


「ボスでも一撃なのね……」

「完全にオーバーキルだな」

「ララちゃんやりすぎです……」

 ララ以外のメンバー全員が遠い目をしたのは言うまでもない。

 ちなみに、ドロップ品は『ゴーレムの涙』というレアな宝石アイテムだった。どこかの黒猫以外は全員心の中で謝ったことだろう。




「おっとこれはリターンだな」

 3層へと転移してきたユート達だったが、3層へ降り立った瞬間に「リターン」……つまり、一度2層に戻り再度3層へと入り直すことが決定した。

 何故ならそこは――――。


「海中エリアね。これはリターンだわ」

 マイが言う通り、海中エリアという海の中を進まないといけないエリアだったからだ。


「初めて来ましたが、ここだけ空気があるんですね……」


「そうやな。転移オブジェがある部屋だけは、こういう不思議なシャボンで水が入らないようになっているらしいで」

 クレハが解説するようにククに言った。


「そうなんですね。それにしても綺麗ですね……」

 ククは、クレハの解説を聞きながら、この海の中にいるという不思議な体験に、周囲の景色をキョロキョロと見回す。


「お魚がいっぱいにゃ! あ、リペアそのお魚取れるにゃ?」

 同じく初めて海中エリアに来たらしいララも、シャボンの外で魚が沢山泳いでいる光景にはしゃいでいた。今は変身により人間の姿だが、中身は猫なんだと改めて感じさせる。


「ん? 捕まえるのか? 手掴みだけど、おっ! 獲れたな!」

 ララのリクエストに答え、リペアがシャボンの近くで泳いでいた魚を掴み取る。


「にゃー! リペアありがとにゃ!」

 リペアから魚を受け取ったララは、猫のように嬉しそうに飛び跳ねる。そして自身の【インベントリ】に大事そうにその魚を仕舞った。


 このシャボンは、今リペアがやったように、手を出しても壊れるといった事はない。謎の多いダンジョンの中でも解明されそうで解明されない謎の1つだ。探索者的には、転移してきた先がすぐ水の中という事態にならない有難い場所という事実だけで良いのだが、海中で息の出来る技術が欲しいという組織や人は沢山いるのだ。

 まぁ水の中で息の出来るアイテムやスキルはあるにはあるのだが、このシャボンのように人を包み込むものではなく、水の中に入らないといけないものなので、移動には泳がないといけないし、もちろん服も濡れる。もっと安全にかつ濡れないように、水の中に入れるものが欲しいということだろう。人の夢に際切りなどないのである。

 でも実際、このシャボンの技術が解明され使えるようになれば、このような海中エリアのダンジョンも攻略できるようになり、探索者も恩恵に与れることは間違いない。


 と言っても。今のユート達の現状として、この海中エリアを探索できる術はないので、ククやララが満足し終わったあと、転移オブジェで2層へと戻り、再び3層へと入り直したユート達であった。




「ここはサバンナか?」

 リターンしてやってきた先は、見渡す限りの草が生い茂るエリアだった。


「草原エリアのようにも見えるけど……」


「遠くにバッファローが見えるからサバンナエリアじゃないかい?」

 ユートの言葉に、マイやリープが場所の考察をし始める。


「てか、草原エリアとサバンナエリアって何が違うんだ?」

 その横でリペアが質問した。


「確か草原とサバンナの違いは、雨やったか? 時期によって雨季と乾季の差が激しいのがサバンナで、定期的に雨が降るのが草原だったはずや」

 リペアの質問にクレハが答える。


「だいたいクレハの言う通りだな。まぁ、ダンジョンの環境なんて当てにならない方が多いけど。探索者的には出てくるモンスターで草原かサバンナって決めてる方が多いって聞くな」


「普通の牛なら草原エリア。バッファローならサバンナエリア。って訳だね」


「じゃあ遠くに見えるのが、バッファローってことはサバンナエリアです?」


「まぁその認識でいいだろうな。俺的には、牛もバッファローも違いはないが……いや、料理した時の肉質が違うか」

 ユートはそう言った。最後の言葉はボソッと言ったつもりのユートだったが……それを聞いた男が1人。


「え? ユート! 俺、バッファローの肉が食べたい!」

 リペアがその言葉に自身の要望を言った。


「そういえば、そろそろお昼ご飯にしても良い時間ね」


「おい、ちょっと待て……お前ら食料持ってるだろ?」

 話の流れに、ユートが焦る。これは完全にお昼ご飯を作らされるパターンである。


「あ、でも僕もバッファローの肉食べたいかな?」

 すると、リープまでもがユートの言葉を無視してそう言ってきた。


「噂は聞いとるで。ユートはんの料理は、そこらへんの三ツ星レストランよりも美味しいそうやんか」


「おい。クレハ話が大きくなりすぎだ」


「ユートさん。そんなに料理が上手なんですね? 私も食べてみたいな」


「ほら。ククが誤解してるだろ? それにさっきも言ったがお前らみんな食料持ってるよな?」

 ユートはなんとかみんなを説得しようとするも……。


「ユート料理上手いにゃ? このお魚を料理してにゃ!」

 最後の最後に、ララが先程リペアに獲って貰った魚を手に持ち言った。

 これで6対1。ユートの敗北である。


「もういいよ! 分かったよ! 作ればいいんだろ。作れば! その代わりバッファローはお前らが狩ってこいよ!」


「やったぜ! 流石ユートだぜ!」

「よし。早速狩ってくるわよ!」

「そうだね。僕も狩りに参加するよ!」

「うちは、拠点用の結界を張っとくで」

「私は、お皿とか用意しておきます」

「ユート。早くこのお魚を焼いてにゃ?」


 薄情なもので、ユートが承諾するや否やすぐに行動を開始する6人。


 そそくさと作業に移る5人を見てユートはため息を1つ。そして【インベントリ】から道具を取り出しながらララに言う。


「とりあえず、準備があるからララはもう少し待っとけ」


「分かったにゃ! 早くしてにゃ!」

 なんだかんだ言って面倒見の良いユートであった。


「めぇー!」


「マルハはそこらの草でいいもんな。俺の味方は、お前だけだよ」


「めぇー!」

 何故だか、マルハに励まされたような感じがしたユートは料理の準備を始めた。




re:哀れなゴーさん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ