No.24 『探索者の繋がり』
「いやー兄ちゃんたちすまねぇな。ご馳走になっちまって」
6人パーティーのリーダーであるらしい、その男タイラーがユート達に向かって言った。その無精ひげについたスープを見て分かるように、30代であってもどこか子供染みた人懐っこい笑顔を浮かべる男だ。
現在ユート達は、クレハの作り出した結界の中で、お昼ご飯としてバッファローの肉でバーベキューをしていた。ユート達パーティーとタイラー率いる6人パーティーの合計12人でのランチタイムだ。
「いえ。まぁ対価は頂きましたしね。それに大勢で食べたほうがご飯もより美味しくなるというものです」
ユートは、タイラーに答える。
「そうだぜ。タイラーのおっさん! あまり気にすることはないぜ!」
なんでもリペア達が言うにはバッファローを狩りに行った際に、このタイラーのパーティーが先にバッファローと戦っていたらしい。
他のダンジョン探索者が戦っているモンスターに攻撃するのは、暗黙の了解として禁止されているので、他のバッファローを探そうとその場をあとにしようとしたリペア達であったが。タイラー達の戦うバッファローが仲間を呼ぶスキル(群れを為すモンスターが稀に使用する)で、バッファローが増えてしまったため、近くにいたリペア達に助太刀を頼んだとのことだ。
そして、その流れでリペアがお昼ご飯にタイラー達を誘い、現在に至るという訳だ。
一般的に、ダンジョン探索者同士がダンジョンで出会った際には、お互いに必要以上の干渉はしない。ダンジョンに潜る探索者の多くはパーティーを組んでおり、パーティー単位での活動が基本となっているからだ。また、一攫千金を狙う探索者も多く、自分達以外の探索者はライバルであるという認識もあるためである。
しかし、今回のように、他の探索者が助けを求めるケースや、ダンジョン内で一夜を過ごすなどといったケースも多い。それこそ危険なダンジョン内で夜を明かすには、見張りも必要で人が多いほうがいいに越したことはないからである。
ユートの対価は頂いたからという発言も、食事を共にする上でタイラーはキチンと食事の対価を支払っている。こうした探索者パーティー同士の金銭での物のやり取りもダンジョン内では多々あることである。
「それにしても3人、いや実質1人で、バッファローを3体相手取るとは、兄ちゃんすげえ腕前だな」
タイラーが肉を頬張りながら、先程のバッファロー戦を振り返るようにリペアを褒めた。
「いや。仲間の支援もあったからな。あれくらいは余裕だぜ? それにタイラーのおっさんもバッファローの突進を剣一本で受け止めてたじゃねぇか。あれはなかなか難しいぜ?」
リペアも負けじと肉に齧りつきながらタイラーに言葉を返す。
「へぇ。バッファローの突進を剣一本でか……それは凄いな」
今日のダンジョンに入る際にリターンですれ違ったあの大剣のおっさんならば、バッファローの突進くらい簡単に受けきれそうだが、タイラーは鍛えてはいるものの体格はそれほどでもない。どちらかと言えば細い体型である。突進の威力だけは3層のレベルを超えていると言われるバッファロー。それを受け止めたのなら、かなりの腕前であるとユートは感心した。
「タイラーの剣の腕は、昔から凄かったんだぜ!」
そう言うのは、タイラーのパーティーの『獣使い』という男。傍らにいる黒い大型犬にバッファローの肉を与えながら食事をしている。
「俺たちの育った村でバトルベアー2匹が暴れた事件があってな。タイラーは俺たち村人を守りながらそのバトルベアーを2匹とも倒したんだ」
『獣使い』の男に続くように、『魔法使い』の男も当時の興奮を思い出すかのように語りだした。
「その時、タイラー何歳だと思う? 12歳だぜ? 12歳。村の男達全員かかっても倒せないようなバトルベアーをタイラーが1人で倒したんだぜ」
「おいお前ら。昔の話は辞めろよ。恥ずかしいだろ!?」
タイラーは、自身の武勇を語る仲間たちを止めようとするが、その仲間たちは話すのを辞めない。その後もユート達が聞くところによると、どうやらタイラー達6人は、みんな同じ村の出身で小さい頃から一緒に過ごして来たという。
タイラー自身は嫌がっていたがタイラーの事を楽しそうに語る仲間たちに、パーティーを組んだばかりのユート達は10年後の自分たちもこんな仲のいいパーティーになれるといいなと思ったのだった。
「《スラッシュ》!」
リペアが水平に斧を凪ぐ。
斜め斬りが基本の型である技を水平で発動するちょっとした高等テクニックだ。
「WOOON!!!」
斬られたジャッカルは、最後に声をあげてそのまま倒れた。
あれからタイラー達と分かれたユート達パーティーは、サバンナエリアのボスを探すべく歩き回っていた。
迷宮エリアとは異なり、サバンナエリアにボス部屋は存在しない。何故なら、迷宮エリアのように道などそもそも存在しないサバンナエリアは見渡す限りの広野である。こうしたエリアの探索は、次の転移オブジェを探すか徘徊型のボスモンスターを探すしかない。ボスモンスターを倒すことで一定時間のあいだ、転移オブジェが出現するからだ。
よって、ユート達はこのサバンナエリアを歩き回っているであろうボスモンスターを探していた。
「ジャッカルは何が素材になるんだ?」
倒したジャッカルを見ながらリペアが尋ねる。
「ジャッカルもそうやけど。基本的に、獣型のモンスターは毛皮に骨、牙、肉などは大抵は売れるで。まぁ希少性はないから買い叩かれるのが常やけどな」
リペアの質問にクレハが答える。ジョブが『商人』であるクレハは、こういった時に有難い。市場の相場が分かっているので、ダンジョンで得た戦利品をその場で売買の判別できるのだ。
「じゃあどうする? 倒しちまって悪いけど、素材は取らないでおくか?」
クレハの言葉を聞き、リペアが他のメンバーに確認するように言った。
「うーん。確かに私たちの中に、必要としている人もいない訳だしね。でもモンスターで襲ってきたとはいえ、捨てるのもねぇ……?」
マイが言う。
一応、モンスターとは、ダンジョンの中でも外でも人を襲う生き物の総称であるため、人に仇為す存在である。それは、動物型であってもゴーレムやヨヨヨのように非生物型であってモンスターはモンスターである事実は変わらない。
マイの言いたい事は、例えモンスターであり襲ってきた相手だとしても、命を奪ってしまった以上罪悪感があるという事だ。そのため自分たちが使わないから捨てる。というのは、勿体無いというか命を粗末に扱っている気分になるのだ。
これがゴーレムやヨヨヨのように倒すと粒子となってすぐに消えていくモンスターならこの感情も起きにくいが、こういった一定時間経過しないと死体が消えないモンスターの場合は余計に感情が起きやすい。獣型なら尚更だ。
「まぁ気になるというなら持っていくのもアリと僕は思うよ。今回はどっちにしてもこの階層までだし、それくらいの余裕はあるんじゃないかい?」
リープが言う。
「私もどちらかと言うと持っていきたい派です……。例え買い叩かれたとしても、誰かの役には立つでしょうから……」
どうやらククも素材を持っていきたい派のようだ。
「俺もどっちかというと持っていきたい派ではあるんだよな」
この前のバトルベアーの肉をユートが回収したのもそう言った理由があったためだ。
という訳で、話し合いの結果。ジャッカルの素材は持っていくことにした。毛皮は服になって誰かが着るかもしれない。肉もペットや使役動物のエサとなる。骨や牙も装飾品となったり、最低でも骨粉として畑に撒かれるだろう。そうなる事で次の世代へとバトンが渡るのだ。
そうなると信じてユート達はジャッカルの素材を回収した。
~スキル図鑑~
【インベントリ】
ダンジョンのジョブを解放した全ての人が持つスキル。自らのジョブに関するアイテムや道具を収納できて、即座に取り出すことが出来る。収納数はジョブやジョブレベル、熟練度によって異なる。




