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No.17 『戦闘確認と事務所探し』


――――SKILL 【ジャグリング】


「《サプライズ・スローイング》!」

 いつものスキルと技のコンボでユートは、ナイフとフォークを大量に投擲する。


「うおっ! 危ねぇな! 《まき割りラッシュ》!」

 それを投げられたリペアが1つ1つ打ち落とすように、技を決める。


――――SKILL 【アピールポイント】

――――SKILL 【フラフラダンス】


 投擲後のユートの一瞬の隙をついたマイがスキルを2連続で発動した。


「おっと!」

 その【アピールポイント】のスキル効果により、諸に【フラフラダンス】を見てしまったユートは、バランス感覚が保てなくなる。


「流石マイだぜ!」

 その間にリペアがユートとの距離を詰める。


「僕を忘れてないかい? 《ジャイアニックボイス》」

 すると、リープが技を発動させた。


 突如、訓練場内に響く大音量の声。


「うぉ!」

「きゃっ!」

「っつ!」


 これには訓練場内にいる全員が耳を塞ぐしかない。


 最後に立っていたのは、《技》を発動させたリープのみであった。味方のユートすらも戦闘不能にしてしまっていたが。




 クレハとククの加入により、クラン設立人数の条件は満たしたユート達。

今日は朝から広めの訓練場を貸し切りにして、訓練も兼ねて各自の戦闘方法の確認を行っていた。今の試合は、ユートとリープ対リペアとマイであったが、見ての通りリープだけが勝利した。


「いや、ごめんごめん。あまり使うことのない技だからさ。加減を間違えたよ」

 リープはそう言って倒れているユートに手を差し伸べる。


「その技……次から禁止な」

 リープの手を取ってユートは起き上がると、まだ痛い頭を押さえてそう言った。まぁユートなりの軽い冗談ではあるが。


「ホントそうよ。強力な技だけど見方にも喰らうなら意味がないわ」

 だがリペアに支えられながら近づいてきたマイもそう言った。


「いや、本当にごめんよ。3人がとてもいい動きをするもんだからさ。つい僕も熱くなっちゃってね。それにこれじゃなきゃリペアを止めらそうになかったからさ」

 リープはそう言って謝罪した。


「マジで頭痛いぜ。はははっ!」

 リペアが本当に頭痛いのかは謎だったが。


「いや、音楽界の貴公子もなかなか激しいバトルすんねんな」

 そこにバトルに参加せずに見ていたクレハが近寄ってきた。その後ろにククとララ、マルハもいる。


「クレハさんのおかげで助かりました……」

 クレハとクク達は、クレハの咄嗟に張った結界によりリープの音の攻撃を防いでいたのだ。


「でもクレハが加入したことで、リープの音波攻撃を最大限に活用できることは分かるけど、ユートはクレハが加入しない前からこれの活用方法が分かっていたわよね?」

 それを教えて貰えるかしらとマイがユートに質問した。


「まぁそうだな。音波魔法や音派攻撃の対処方法はいくつかあるんだが……一番簡単な対処法として「聞かない」っていうのが一番効果のある事っていうのは分かるな?」

「そうね。だから耳を押さえるもの」

「まぁそれはそうやんな」

 ユートの言葉にマイとクレハが頷く。


「その具体的な例としてさっきクレハの使った【消音結界】があるだろう?」


「そうやな。熟練の結界師なら【無音結界】っちゅうスキルもあるな。音系の攻撃はそれで大体防げるで」


「これはそもそも「音を聞かない」に対処した対応方法だと言える。まぁそれが一般的だが……俺の対処方法は反対に「音を聞く」対処方法だ。マイは知っていると思うが、俺の【天邪鬼】のスキルは、自分に掛かっている全ての状態変化・状態異常の効果を反転させるスキルだ」


「へぇ。そんなんがあるんやなって、それで音波の攻撃を反転できるんか?」

 察しの良いクレハがユートの言葉を聞いてそう言った。


「だけど、【天邪鬼】は状態変化・状態異常の効果の反転でしょ? 攻撃技の音派も反転するの?」

 マイはそれに対して疑問を浮かべる。


「結論から言って反転可能なんだ。俺もリープとパーティーを組むまで知らなかったが、どうやら音による攻撃は、攻撃技でもあるが状態異常を引き起こす技でもあるらしいんだ。状態異常の無音があるだろう? それの反対のような扱いだ」


「つまり、ユートがその【天邪鬼】っちゅうスキルを使っている間は、ユートにとって音の攻撃は音量が上がれば上がる程、静かになるっちゅことか」

 クレハが理解してまとめてくれた。


「なんていうか、相変わらず反則よね……」

 マイも理解したのか呆れた表情でユートを見ながらそう言った。


「そうだぜ。ユート反則だぜ!」

 リペアは絶対にいまいち理解してないが、マイの言葉に乗っかっただけだ。


「私も反則だと思います……」

「にゃあ!」

「めぇー!」

 しかし、今日はククもそれに乗っかるように言い、ララもマルハも反則だというように鳴いた。


「まぁ『道化師』であるユートにしかできないよね。まぁ僕としても戦いたくない相手だよ」

 リープがユートのフォローをするように言ったが、最後の言葉で台無しとなった。


「うるせぇー。俺は俺で出来る事を日夜探してるんだよ!」

 そんな叫んだユートとは反対に、他のメンバーは笑いだすのだった。




 午前中で訓練を終え、ダンジョン大学校にある食堂で、ご飯を済ませたユート達6人と2匹は、午後はダンジョン大学校の外へと繰り出し、買い物をする予定となっていた。


 買い物と言ってもただの買い物ではない。クランを設立するにあたり、そのクランの事務所が必要なので、ユート達はその事務所の選定のため不動産クランへとやってきていた。


 しかし、クランの事務所を選ぶにあたって、各自の要望が多く選ぶのに困難を極めていた。


 ユートの要望としては、広めの調理場と食料保管庫に投擲が出来る程の庭。

 リペアの要望は、採取した木を加工するための庭とちょっとした作業場。

 マイは薬の材料の保管庫に、薬を作るための機材をおく広めの作業場。

 リープは、近隣に迷惑をかけないで楽器を弾くことができる防音室。

 ククは、マルハのエサである草の保管庫。

 クレハは、クラン事務所を兼店舗としての役割を持たせたいらしい。

 それに加え、事務所に住む・住まないにせよ、各々のプライベートルームや会議室、客間など必要なものは多かった。


「えっと、この物件を探すよりもご自身たちで建てたほうが早いと思われます。はい」

 小太りのベテランっぽい中年男性の店員も額の汗を拭きながら、困ったようにそう言った。


「そうやな。流石に用途が多すぎんねんな。誰か要らない部屋はないんか?」

 店員の言葉を聞いて、クレハがそう言った。


「あら。そう言うクレハの兼用店舗は要らないんじゃない? ほら販売なら他に委託も出来るし?」

 マイがクレハの言葉にいたずらっ子っぽくそう言った。


「それやったら、薬を作る機材の部屋ももうちょっと削れるやろ。こんなん大きすぎるわ。何に使うねん! それに旦那の木を切る庭っていうのもなんやねん!」

 マイの言葉に反応してクレハも負けじと言葉を返す。


「俺は木こり戦士だからなー。ダンジョンの木を切って加工するので必要だな。てか、リープの防音室はいるのか?」


「そりゃあ必要さ。音漏れでもしたらご近所さんに迷惑だろう? それは置いといて、マルハのエサ置き場はどうにかならないのかい?」


「マルハちゃんは沢山食べるのでエサ置き場は必須です。それよりもユートさんの大きなキッチンの意味は……」


「そうだな……俺としては小さくてもいいかも――「「「それは必要!!!」」


 そんなこんなあって結局のところ、仮の事務所という事でキッチンと会議のできる広めのリビングに、お客さん用の応接室だけがある物件を借りた。仮の事務所にキッチンは要らないんじゃないか? とユートは進言したが、リペアにマイ、それにリープまでもが絶対に必要だと言って聞かなかった。


 でもまぁどちらにせよ。ユート達はまだダンジョン大学校に通う学生である。全員が最終学年ではあるものの、もう少しだけ学校の寮に住むことも出来るし元々寮に住んでいないリープやリペアとマイにはもう既に住んでいる場所がある。申請だけの事務所を作って、お金に余裕が出来た時に、各自の要望がすべて満たされる事務所を作ればいいという結論に至ったのだった。



~技図鑑~

《ジャイアニックボイス》

 その音を聞いたものは耳を塞ぎ身動きが取れなくなる。ボエボエボエー。

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