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令嬢男子と乙女王子──幼馴染と転生したら性別が逆だった件──  作者: 恋蓮
第三部 【君と狂詩曲(ラプソディ)】
66/129

◆63.八年越しの自己紹介

 


「妃沙、どういう事なの? 理事長と知り合いなの? ちゃんと僕に説明して!」



 その日の放課後、終礼のチャイムが鳴るとほぼ同時なのではないかという勢いで、切羽詰まった表情の知玲が妃沙の教室にやって来た。

 生徒会役員として紹介された、眩いばかりの美貌を誇る副会長の登場にクラスの女子の半数がキャッと声を上げている。

 残りの半数は「やっぱり」という態で生温かくその光景を見つめていた。

 言うまでもなく、前者は外部からこの高等部にやって来た女生徒であり、後者は中等部から知玲と妃沙を見守って来た生徒達である。

 あの衝撃の入学式で、知玲以上に心を持って行かれそうな美貌と大人の色気を放つ理事長が突然に叫び出した妃沙に対し、甘い声で「プペちゃん」と呼び掛けたのだ。

 ましてや知玲と妃沙の婚約が解消された直後であり、何かあったのだろうと邪推していたところに起きた出来事なのである。

 婚約こそ解消したとは言え、知玲の妃沙病は生徒達には有名であったし、あんな事があった以上、彼が血相を変えて妃沙の元を訪れることなど、誰でも予想が出来たのであった。



「ごきげんよう、知玲様。随分とお早いお迎えですのね」



 妃沙もまた、知玲の襲撃はある程度予想していたので、フゥ、と溜め息すら漏らして彼を迎え入れた。

 中等部の修学旅行で彼と出会ったこと、そこで話したことは、『能力(スキル)』の存在以外は深く説明せずにいたので、結城(ゆうき) 莉仁(りひと)という、今日初めて名を知った理事長と知り合いであるということは知玲も知らない。

 別に秘密にしていた訳ではないのだけれど、話せば色々と面倒臭い事になるだろうな、という予感があったので話さなかっただけだ。

 偶然に出会って話をしただけだし、大したことじゃねぇだろ、という妃沙の軽い気持ちの表れでもあるのだけれど……初等部の運動会のあの日から、知玲は彼に危険を感じていたのである。

 その彼が自分をも上回る理事長としての地位を以て妃沙の前に現れ、甘い囁きと微笑みを恋する相手に向けたのだ、知玲としてもたまったものではなかった。


「良いから説明して。あいつとは確か、初等部の運動会で出会っていたとは思うけど、今日の感じだとそれだけじゃないよね?」

「……ええ、まぁ……。ロワ様とはもう一度、京都でお会いした事がありますわ」

「ロワ様って何!? もうあだ名で呼び合うような仲なの!? 京都で会ったって何!? ねぇ妃沙、どうして僕に話してくれなかったの!?」

「話すような事でもございませんでしょう。二度しか会ったことのない方なのですから……それに、ロワ様はあだ名ではございませんわ。今日を限りにこの呼び名は抹消される筈ですし……」

「話が全く見えないよ、妃沙! 良いから説明して!」


 帰り仕度をしながら、それを終えて昇降口に向かいながら、靴を履き替えながら、という帰宅の為の一連の動作を淡々とこなす妃沙に纏わりついて、知玲が必死の形相で詰問している。

 その必死の様子は知玲が心底から妃沙を想っていることを良く知る葵たち、妃沙の友人ですら同情の念を禁じ得ないもので、それどころか理事長と知り合いである事を語らなかった妃沙に対して、少し……本当に少しだけ残念に思ってしまったのだ。

 確かにあの修学旅行で、白馬に乗った若様に掻っ攫われた事があるのは記憶していたけれど、その相手があの理事長であったなんて彼らも今の今まで知らなかったのだ。

 妃沙の態度を見る限り、相手が地位のある男性であることや、もしかしたら名前すら知らなかったのかもしれないと想像することは容易かったけれど、それでもやはり、妃沙の口から聞きたかったな、というのが彼らの本心なのである。

 友人である彼らですらそうなのだから、元、とは言え婚約者で、妃沙の一番近くにおり、彼女に深く心を寄せている知玲の絶望は……本当に少しだけ、理解が出来てしまうのだ。

 同じく妃沙大好き病を患う同志として、そして妃沙を想う気持ちの深さを良く知る者として、やはり知玲と妃沙には二人で幸せになって欲しいなと、年々思うようになってしまっていたから。



「わたくしもあの方の地位や名前を知ったのはつい先程ですのよ? そんな相手と……知玲様、貴方が同じ土俵に立てる筈もないでしょう。

 隠していたのではありませんわ、話すまでもない相手だということです。知玲様、何をそんなに焦っておいでかは存じ上げませんけれど、落ち着いて下さいな。天下の副会長がみっともない」



 片眉をピクリと上げて知玲に対してそう言い放つ妃沙の様は格好良さすら感じる程だ。

 付き合いは長いとは言え知玲ほどではなく、ましてや前世から恋をしている知玲ほど観察眼が鋭くない、ただの高校生である妃沙の友人達はその男前ともいえる清々しさにヒュウ、と声を上げる程であるのだけれど。

 知玲には見えてしまったのだ……今、妃沙の感情が確かに動いているのだと、その片眉の動きが物語っていたから。


「……妃沙、今日は家に泊ろうか。ゆっくり話をしよう……良いよね?」

「なんでそうなりますの!? あの方の事など、わたくしもよく知らないのだと申し上げているではありませんか!」


 ギャーギャーとそんな事を言い合いながら妃沙と知玲が昇降口を出、これから迎えの車に乗り込もうとした時である。



「待ってたよ、プペちゃん。三度目の約束……果たしてもらいに来た」



 真っ赤な外国車──この世界で言う所のポルシェ並みの高級車である──に身を預け、片手には大きな薔薇の花束すら持ってサングラスをチャキッと外した、長身のその青年。



「ちょっと待って下さいまし、ロワ様貴方、何処でそんな高等技術を学んでらっしゃいますのーー!!??」



 あまりに漫画染みた気障っぷりに妃沙が盛大に笑っている。

 当たり前だ、今時、少女漫画でもこんなベタな出待ちをするヒーローなんてお目にかかれない。

 だがしかし、男性に殆ど興味のない妃沙をして「絶世の美男子」と言わしめたその人物──結城 莉仁は、彼女のそんな爆笑ですら想定の範囲内だ、とでも言いたげな余裕の表情で、

 下校する生徒の注目を大いに集めながらニコリとその秀麗な顔に楽しそうな笑みを浮かべたのであった。



 ───◇──◆──◆──◇───



「理事長、でしたね。妃沙にどんな御用があるのかは存じ上げませんが、彼女はこれから、僕と大切な話があるのです。

 言っておきますけど、彼女にはそんな気障な演出は通用しませんよ? 何しろ鈍さではかのハチ公と同じくらい有名なんですから」



 妃沙が何かを言うよりも速く、知玲がスッと莉仁から妃沙を隠すようにして立ち塞がる。

 ちょっと待て、この世界の人間にハチ公なんて通じねーだろ、という妃沙のツッコミは莉仁を爆笑させるだけで知玲には何の効果も齎していないようだ。

 知玲は今、この世界に生まれてから、恐らくは一番に怖い表情をしており、その剣幕は魔力すら伴って周囲に怒気という『気』の魔法を無意識に垂れ流してしまっている程である。

 当然、その気配は魔力を持つ妃沙も、その感情を一身に受けている莉仁もビシビシと感じており、このままじゃ災害が起きてしまうな、というのは図らずも二人共に感じていたのであった。


 フ、と溜め息を吐き、視線を交わし、「ごめん」「いやいや」という会話を交わす妃沙と莉仁。

 そして二人は、取り急ぎ災厄(知玲)を宥めることにしようと一致団結したのであった。



「知玲様」



 パン、と良い音を立てて知玲の両頬を両手で挟み、グッと自分の方へ顔を向けさせる妃沙。

 知玲にとっての精神安定剤は自分なのだということは、さすがの妃沙でも理解していたようである。



「何をしておいでですの。無造作に魔力を放出するなど貴方らしくもない。ねぇ、わたくしの知る『完璧で格好良い知玲様』は何処でお留守番をなさっているのです?

 申し上げたでしょう、わたくしは貴方を見つめ直す為に(・・・・・・・・・・)婚約を解消したのですのよ? そのわたくしに……そんな姿を晒しておしまいになるのですか?」



 もう止めろという妃沙の必死の訴えは、涙となってその瞳に浮かんできた。

 今ではもうだいぶ身長差のある二人だ、絶世の美少女が大きな瞳に涙を浮かべて上目遣いで見つめており……ましてや相手は知玲が心から愛する存在なのだ、動揺しない筈もない。

 一方の莉仁はそんな二人のやり取りから目を反らし、口を手で覆ってて肩を震わせている。どうやら笑いを堪えているようだ。まったく、こんな場面でもアイツの笑い上戸は健在なんだな、と妃沙が呆れを伴った瞳を莉仁に向けていると、頬を挟まれたままの純粋無垢な青少年──知玲が早くも復活し、キュッ、と妃沙の白い手を掴んだのである。



「……僕が格好悪いって? 当たり前だね、君の前で取り繕う事は止めたんだ。真の僕の姿を知ってもらって、君の意思で僕を選んでもらうんだと決めた。

 だから本音を言うし、格好悪い事も言うよ。でも、妃沙……それは君の前でだけだ。それにどういう意味があるのか……さすがの君でも察する事くらい出来るでしょう……?」



 キュ、と妃沙の細い身体を宝物を扱うような慎重さで抱き締める知玲。

 婚約者という立場にあった頃にもこうしたスキンシップは多かったけれど……今受けているそれには、以前より力が籠もっておらず、それでいて大事にされているのが深く伝わってくるような抱擁(ハグ)であった。

 美しいその光景を前に、未だに爆笑している新理事長サマは残念だと言わざるを得ない。



「……知玲様」



 前世からですら受けたことのない、大切に、大切にされているという実感と、そんな光景を友人に見られているようなバツの悪さに妃沙が思わず腕を振りほどく。

 以前より力の入っていなかった知玲の腕からは簡単に逃れる事が出来たのだけれど……何故だか少しだけ、それを残念に思う自分がいたことに、この時の妃沙は気付かない事にしたようであった。


「理事長のお名前を知ったのは今日が初めて。それは嘘ではないのですけれど、彼とは確かに『約束』もありますのよ。

 知玲様にそれをお伝えしなかったのは申し訳ないとは思いますけれど、でも、二人の間で交わされたものを他人に容易く言い触らすなんて、わたくしがそんな無粋な事をしない人間だということは貴方が一番良くご存知なのではありませんか?」


 そして妃沙は、知玲の腕に嵌められている腕時計を無意識に撫でながら、片手ではその頬をスイッと撫で、言った。



「わたくしの気持ちなど関係ないのです。理事長とは約束がある。そして、彼はそれを果たしに来て下さっただけの事ですわ。深い意味はないのですから……今日はこれで失礼しますわね」



 そうして背伸びをし、チュ、と知玲の頬に唇を当てた妃沙。

 派手な集団のやり取りに注目していた周囲から、ヒュ、と息を飲む音が聞こえる。

 水無瀬 妃沙はその婚約に対して深い意味を感じていない、というのが通説であったから、妃沙のその行動に驚きを隠せないのは当たり前である。

 そしてそれを受けた当事者──東條 知玲もまた、初めて頬に受けた柔らかな感触に驚き、その場に固まってしまっていた。



「明日の朝、また一緒に登校しましょうね、知玲様! 皆様、ごきげんよう!」



 笑顔で手を振る妃沙は、さっさとその気障ったらしい赤い高級車に身体を滑らせてしまう。

 そして、運転手たる莉仁もまた、肩を震わせながら運転席に廻ってそのスレンダーな身体を小さな運転席に仕舞うと、再びサングラスを賭けてブォン、と大きな発進音を立てて言った。


「……ホント面白すぎるよ、プペちゃん。こんなの、まともに直視出来る人間なんかいると思う?」

「良いから早く行け! 知玲が復活しちまったらまた厄介だろっ!」


 それもそうか、と、運転席の彼が、助手席に乗せた彼女が律義にシートベルトをしたのを確認し、目立ち過ぎるその車を校門前から発進させた。

 そうして、爆音を残してその場を去った派手な車を、周囲の生徒はただ見送るしかなかったのだけれど……



「おい知玲! しっかりしろ!」



 放心状態の知玲のその頭を、バシッと良い音をさせながら彼の親友・真乃(まの) 銀平(ぎんぺい)が引っ叩いている。

 だがしかし、いつもならそんな攻撃を受ければ一発で覚醒する知玲が、初めて妃沙から受けたキス、という衝撃に未だ放心しており、カカシのようにその場に立ち尽くしていた。


「ちあきーー!! ほら、しっかりしろー!!」


 息を切らしながら、銀平がその身柄を運転手に引き渡したのはおよそ三十分後のこと。

 慣れ親しんだ車に乗っても尚、知玲が覚醒する様子はなかったのだけれど……まぁ、妃沙ちゃんの顔を見れば大丈夫だろ、なんて甘い考えで知玲の乗る車を見送った銀平。


 ──知玲の取り扱い方法を熟知している、という意味では、銀平は妃沙以上であるかもしれなかった。



 ───◇──◆──◆──◇───



「何なの、君の婚約者様!? 今時、あんな純情な少年がいるんだな。いやぁ、この国は安泰だよまったく」


 肩を震わせながら車を運転する青年を横目で見ながら、妃沙は心配と……そして少しだけ、知玲を馬鹿にされているんじゃないかという不満感を感じたのである。

 婚約を解消したとは言え、知玲はいつでも妃沙の一番近くにいてくれる大切な存在なのだ、そんな彼を馬鹿にされたとあっては、元ヤンの彼女が黙っていよう筈もない。



「……ヲイ、ロワさんよ。少し調子に乗ってるんじゃねぇのか? 他人を乗せて運転するならまず精神を落ち着けろよ。んで、年端もいかない青少年をバカにすんのは止めやがれ。

 俺と違ってアイツは綺麗な世界で生きて来たんだ。出来ればこれからもずっと、裏社会の汚さなんか知って欲しくねぇんだよ」



 可憐な美少女から放たれる男前な台詞の破壊力と言ったらない。

 ましてや莉仁には、妃沙の言葉は『龍之介』の言葉そのままで伝わっているのである、笑うな、という方が無理な話だ。

 さすがに安全管理に自信がなくなったのか、路肩に車を止め、そのままプ、とかクク、とか時折息を漏らして莉仁は肩を揺らしている。

 この完璧なまでの男が笑い上戸だというのは、前回の京都での邂逅で思い知ったのか、妃沙も呆れたような表情で彼を眺めていたのだけれど、あまりに笑い続けているので、さすがに心配になり、そっとその肩に手を乗せる。


「おい、ロワ」


 ところが、莉仁は、突然に笑いを収めると妃沙に引っ込める隙すら与えずにその手を握り、真面目な表情で言った。



「ロワ様呼びはおしまい。改めて自己紹介するよ。俺は結城 莉仁、三十歳独身、五月二十六日生まれ、双子座のAB型、職業は鳳上学園の理事長。

 ねぇプペちゃん、君が鳳上学園の生徒であることは立場上知ってたけど、名前とかその事情を調べるのは我慢してたんだ」



 突然に車を路肩に止め、自己紹介をし出した莉仁に対し、妃沙は面喰って何も言う事が出来ない。



「君のことを教えてよ。約束だろ? とりあえずは『今世(いま)』の君の事で良い。名前も……実は知ってるけどな。君の口から……聞きたい」



 囁くように耳元で告げられる声。

 美形で地位もある彼のような男性にこんなに間近で囁かれてドキドキしない女性などいないのではないかという程にそれはこなれたものだったが、あいにくと妃沙はいわゆる『普通』の女子ではなかったのである。


「知ってるのに何でわざわざ俺に言わせる? 言っとくけどな、俺は自分の正体を晒すのは苦手なんだよ。良く知りもしないお前に何もかも明かすなんて有り得ない。

 元々、三度目に出会ったら自己紹介しようなんて『約束』は、同意も得ずにお前が勝手に進めたものだろ? 何を盛り上がってるかは知らねェけど、俺はお前をそこまで信頼してないぜ。

 用があるならさっさと済ませろよ。早く戻って知玲のフォローしないと大変なことになるんだから」


 妃沙は今、キュン、と項垂れる知玲、自分の行動に石化してしまった知玲、そして、こうして彼の側を離れてしまったことで、時間が経てば経つ程にフォローが大変になりそうな元・婚約者様の事で頭がいっぱいだったのだ。

 莉仁との約束は守るべきだと思ったからこの派手な車に乗ってはしまったけれど、本当は知玲が心配で仕方がなかったのである。

 だが、妃沙のその言葉を聞いた莉仁は、一瞬だけカチリと身体の動きを止め……だが次の瞬間には再び爆笑しながら、通常営業を開始したのであった。



「青春かぁー! 俺は学生時代からどうすれば結城家が序列を引っ繰り返せるかってことに夢中でなぁ……本気の恋愛なんかしたことがないんだよ。

 さすがに童貞だとは言わないけど、初恋はまだだって、君になら言っても良いかな。別に恥ずかしい事だと思ってないし」



 だから君達が眩しいと、何処か寂しげに微笑む莉仁。

 妃沙としても、彼には知玲とは違った親しみを感じてしまっているだけに、これ以上の彼の過去を知ってしまって肩入れしてしまうのが怖くて、自分の事を掻い摘んで語る事でその独白を止めようと試みる。


「水無瀬 妃沙、十五歳もちろん独身、一月二十七日生まれ、水瓶座のB型、職業は……今は学生だけど、将来は世の為人の為に働こうと誓っている、今日高等部に入学したばかりの一般人だぜ」


 そんな妃沙の言葉を受けて、莉仁がブハハ、とやや下品な笑いを漏らす。

 ただ自己紹介をしただけなのに、ホントにコイツは笑い上戸だな、と苦笑を漏らしながら、こんな風に自分の言葉にウケてくれるのは彼が『素の言葉』を聞いてくれているからなんだろうな、と思う妃沙。

 それはそうだろう、あまり鏡を見る習慣はないけれど、たまにチラ見をすればびっくりするほど、自分は確かに美少女なのだ。

 そんな少女が……莉仁にしか解らないとは言え、ヤンキーな男言葉を発したら面白いに違いない。

 テレビでそんな芸人が出て来たら自分だってきっとハマってしまうに違いないという自虐的な想いを抱いている妃沙。

 この時すでに、分不相応ながらも理事長という立場にあるこの青年に対し、お笑い芸人の相方染みた愛着を感じていた妃沙であった。



「妃沙たん。やっと名前で呼ぶ事が出来て、ボクちんとっても嬉しいお!」

「いい加減それ止めろ! やり過ぎると飽きられんぞ!」



 アハハ、とお互いに声も高らかに笑う莉仁と知玲。

 お互いに抱える事情は違えども、こうして腹の底から笑える時間は……特に莉仁にとっては大切な時間なのであった。


◆今日の龍之介さん◆


莉「あー! やっと名乗れたー! 八年か……。長かったなぁ……」

龍「俺にはなんでそんなに勿体ぶってたのか意味がわかんねぇよ」

莉「謎の美形って興味をそそられるだろ?」

龍「イヤ、別に」

莉「(´;ω;`)」

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