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【6/29書籍発売!】3才児ですが可愛い花嫁がやってきた!と溺愛されてます。しかし私は敵国の最強魔法帝です  作者: 六花きい


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【書籍発売記念SS】婚約者からの贈り物は、密入国できるフリーパスでした(後編)


「くっ、と、止まらん!?」


 叫ぶレティシアをよそに、剣の切っ先がぐんぐんと下向きに傾いていく。

 華麗に身を屈め、危機を脱したはずの魔獣の脳天に、剣は容赦なくずぶりと突き刺さった。


「……あ」


 剣柄から飛び出てきた、可愛い幼女。

 不可抗力とはいえ魔獣を一撃で仕留めたことに、周囲がシンと静まり返る。


 レティシアお手製『最高純度の魔石』は役目を終え、消し炭のように黒ずみ、剣柄からボロッと零れて地に落ちる。


「……私の、手柄だな」


 助けられた若い兵士は腰を抜かしており、その横で剣の柄にぶら下がったまま、幼女レティシアがこてんと首を傾けた。


「レティ、魔法陣を組み込んだな?」

「……」

「打ち合っている最中だったら、どうするつもりだ。危ないだろう?」

「でも手っ取り早いし……魔石は後でまた補充するし」

「そういう問題じゃない。剣ごと、魔獣に叩き落とされていたかもしれないんだぞ?」


 ロイドは剣を引き抜き、事切れた魔獣を一瞥すると、剣柄にぶら下がっていたレティシアをそっと片腕に抱え直した。


「もう二度と、ダメだ」

「むぅ……」


 叱られ慣れないレティシアが、ぷくりと頬を膨らませる。


「……誕生日だったのに」


 だから許されてしかるべきだと主張するが、ロイドが譲らないため、レティシアはきまり悪そうに目を逸らした。

 ゴソゴソと身じろぎ、ワンピースの腰のあたりをギュッと両手で握りしめる。


「誕生日だとしても、だ。お前に怪我をさせたくない」


 レティシアの背を宥めるように撫で、ロイドは小さくため息を吐く。


「誰よりも、大切に思っているんだ。無茶はしないでくれ」

「……善処する」

「分かってくれたなら、もういい。……誕生日、おめでとう」


 落ち着いた声が降ってきて、ぽふりとロイドの肩に顔を埋める。

 その心地良さに、レティシアは思わず目をつぶった。


「ちょうど討伐も終わったところだ。どこかで羽を伸ばすか?」


 抱っこされたまま尋ねられ、レティシアの頬がじわじわと嬉しさに染まっていく。


「甘いものが、食べたい」

「そうか」

「今日はのんびりできるから、ピクニックも」

「分かった。ぜんぶ、叶えてやる」


 いつになく穏やかな冷血将軍が、剣から降ってきた謎の幼女に、蕩けるような声で囁いている。

 その首に勢いよく抱き着くと、ロイドはくすぐったそうに目を細め、――そしてレティシアを抱える腕に、そっと力を込めたのだ。



 ***



「最高の休暇だった」


 ロイドの膝で菓子を食べ、ピクニック地の草原で寝転び、腕に抱かれながら昼寝する。

 幼女姿なので仕方ないが、帰り際に落とされた口付けが額だったことには、少々不満が残るが――。


『誕生日、おめでとう』


 誰もいないのをいいことに、レティシアはディーンから貰った木箱……魔道具の中央にあるボタンを、ぽちりと押した。


『誰よりも、大切に思っているんだ。無茶はしないでくれ』

「……ふふふ」


 魔法帝の執務室。

 レティシアは過ぎた日を思い返し、ほう、と満足げな息を吐く。


《なぁにをやっとるんだ、お前は?》

「うわッ!? ヴェリアル!? いるならいると言え!」

《先ほどから、そこにおったわ。……まったく、同じ言葉を、何度も何度も聞きおって》


 執務机の端で丸くなっていたヴェリアルが、呆れたように尾を揺らす。

 告げるなり、レティシアの膝に飛び乗った。


《魔法帝ともあろう者が、たかが男の一言にだらしなく頬を緩めおって》

「……黙れ。それ以上喋ったら、しばらく魚抜きだ」

《お前はまったく、そういうところだ!》


 空気を読まない聖獣を邪見に扱う一方で、見られていたのが恥ずかしく、レティシアは録音の魔道具を、大切そうに引き出しへとしまい込む。

 それから何事もなかったかのように、書類へと手を伸ばした。



 ***



「ディーン、ちょうど良かった。お前から貰った魔道具、なかなかの品だった」

「ッ!? 本当ですかレティシア様!!」

「感謝している。おかげで思わぬ収穫があった」


 珍しく素直に礼を述べられ、ディーンが感極まったように破顔する。

 その後ろに続いたクロニクルが、おや、と訝しげに首を傾げた。


「で、ではその、もしよろしければもっとお褒めの言葉を……」

「もっと?」

「はい。例えば、『お前のおかげだ』などと」


 さらなるお礼の言葉を求められ、レティシアは眉根を寄せる。

 ディーンは妙に必死な様子で腰のあたりを押さえているが、まぁ、たまには良いだろう。


「ディーン、お前のおかげだ」

「……ッ!!」


 感激に打ち震えるディーン。

 後ろで組んだ手の中から、小さくカチリと音がする。


「師団長、もしかして今、例の魔道具使いました?」

「しっ。クロニクル、口を慎め」


 ぴこぴこと点滅する魔道具を、バレないように後ろ手でしまい、ディーンは誤魔化すように言い放つ。

 目ざとく見つけたクロニクルに追及されるが、にべもなく切り捨てた。


 なお声を潜めてはいるものの、二人の声はバッチリ、レティシアにも聞こえている。

 今日も魔法国は平常運転――。

 執務室の外を通りかかった『賢明』なる魔法師達は、執務室から聞こえるやり取りに聞こえないふりを決め込み、足早に通り過ぎていった。



お読みいただきありがとうございました。

読んでくださった皆さまのおかげで、本作のコミカライズが決定しました!

本当にありがとうございました!

好きなキャラクターがたくさんいる作品なので、今からとても楽しみです。


またのんびりと、レティシア達のあれこれを投稿させていただければと思いますので、引き続きお楽しみいただけますと幸いです。

書籍(小説)もただいま好評発売中ですので、ぜひ宜しくお願いいたします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.


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― 新着の感想 ―
レティシアが幸せならそれで……ヨシ!
面白かったです!
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