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転生勇者と転生魔王の未来目録  作者: Aa_おにぎり
一年生②

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46/60

#46

その日、エリカとバケツは学園都市郊外のコンテナハウスにて生活を続けていた。

元よりFSSの保護観察を受けており、入国管理局から新たに不法移民の移民ルートの解明のために一時的に住居を与えられている形であった。


近年の不法移民は社会問題ともなっており、国内に滞在している不法移民は法律によって国内に指定された抑留地に強制的に移動する事となっている。


「出来たわよ〜!」


本来であれば浮浪者や国内のホームレス用に政府から貸し与えられる格安のコンテナハウスの一つで、バケツは相変わらずメイド服に身を包んだ格好で同じ部屋にいるエリカに声をかけると、彼女は横になっていたベッドから起き上がった。


「…おはようございます」

「ふふふっ、もうとっくに夜の時間よ?」


そんな話をしながらバケツはエリカに作った夕食のシチューを食べさせる。

彼女が見つかったからと言うもの、久しぶりに子供の世話ができると最高の気分になりながら彼女はエリカの世話を務めていた。


何せ自分の生みの親でもあるレオポルトとドーラはもう高校生で大人になってしまい、自分の庇護欲が駆られなくなってしまう年齢に。カムチャルは婚期を逃した残念な人である。


「っ//」


昼から夜まで寝ていた事実に気づいて顔を赤くしてしまったエリカにバケツは初々しさと、可愛さによって笑みを浮かべる。


「大丈夫、夕食は逃げはしないですよ」


そう言いバケツはスプーン片手にシチューを食べ始めるエリカを見ると、


「こらっ」


バケツはエリカに食事のマナーを教える。


「食事前の挨拶を忘れない」

「い、いただきます…!!」


慣れない様子で手を合わせる彼女は言うと、改めてシチューを食べ始める。

東方の国の作法に感化され、地元では優れたマナー講師兼ベビーシッターとして評判の高いバケツから教え込まれているエリカはこの食事の時間は少々気怠くなっていた。


何もする事なく、ただこの家で暮らし続ける事に退屈を感じていた。

時折ジャクソン達が会いに来てくれる事はあるが、彼らはあくまでも学生。本業の勉学があるが故に頻度は少なかった。


「…ふぅ」


食事を終え、毎日三食の食事をする事にエリカはその生活に満足げに過ごしていると、満腹による眠気が襲って来た。

前まではスリで捕まったら酷い間に合い、眠ったら翌日も起きていられるか分からなかった上に、最近は色々と警察署を連れ回らせていたのでその分のストレスなども溜まっていた。


「んんっ…」

「あら、眠たくなって来た?」

「うん…」


子供であるエリカはそこでベットの方にゆっくりと歩き出すと、バケツはエリカの側に立って共に歩くと、彼女は半分寝惚けた声でバケツの脚にしがみついて呟いた。


「…ママ」

「あらあら…」


彼女は自分の言葉すらよく分かっていない様子でそのままベッドに横になると、そのまま寝息を立ててしまう。


「私の事を勘違いなされるとは…」


バケツはそう言い、微笑ましくエリカを見つめる。

エリカは既に事情聴取から連合公国の旧都に住んでいたと言うのは分かっていた。

元々は戦災孤児で、母親は既に死亡していた。獣人という特性上、あの国では生きづらかった事だろう。特に旧都は、未だに選民思想が残っているような場所だ。


「よく眠って下さい」


バケツはエリカの側に座って軽く頭を撫でると、そこで魔法を展開する。音を一切消す消音魔法であり、これで寝ているエリカが音で目覚める事はない。


精霊が宿るオートマトンという特殊な生い立ちの自分は、充電を必要とせず、眠ることも必要ない。

なのでエリカと言う護衛対象を一人で守ることが出来た。


「…やれやれ」


バケツは表に出ると、そこでメイド服のあらかじめ開けられていた服の中からガトリング銃(M134)が飛び出すと、間を置かずに銃身が回転を始めて銃弾が発射された。


ッーーーー!!


毎分六〇〇〇発の7.62mm小銃弾が発射され、光学迷彩魔法を使って接近していた数名の襲撃者達は回避し、一部は逃げ遅れてミンチにされた。


「チッ…!」


襲撃者達はその手に自動小銃(SIG 552)を持っており、引き金を弾くとミニガンで応戦するバケツと銃撃戦となる。


「ほーほほほほっ!!私を差し置いて子供を誘拐できると思うかい!?」


背中に積んだバッテリーと銃弾の山を前にバケツは叫ぶ。

もともと大変細身な体に巻き付けられた弾帯が、レールを弾薬と空薬莢が行き交い、襲撃者が隠れた車をエンジンブロックごと破壊する。

体の中に隠していたミニガンはそこで二人の人影を容赦なくズタズタにする。


「…」


破壊され、無数の穴の空いた車を見ながら襲撃者の一人がボヤく。


「くそっ、ミニガン装備したオートマトンだと!?」

「出るな!撃たれるぞ!」


直後、バケツの顔から出る強力な投光器が隠れていた土山に向けられるも、発射されなかった。


「向こうの弾薬には限りがあるのか…」

「優秀なオートマトンらしい」


無駄弾を撃たない時点で向こうの段数には限界があり、それでいた目標を見つけられない場合には射撃をしない判断ができる、頭脳の良いオートマトンであると即座に判断できた。

襲撃者の一人はそこで片手にデバイスを取り出すと片手に持って魔法を発動した。


「っ!!」


雷撃魔法を発射した襲撃者はオートマトンの反応を見ると、


「ふんっ!!」


バケツは磁場魔法を展開してその電撃を晒した。


「なっ…?!」


直後、目の前に片手に持ったミニガンが向けられると咄嗟に頭を下げた。

一瞬、弾幕が頭上を通過して行った。


「魔法が使えるオートマトンだ!?」

「聞いたことねぇぞ…!」


魔法を展開し、今も監視をしているバケツを前に驚いていた。

そして部屋の外の通路でバケツは叫んだ。


「私はただのオートマトンとは違うのだよ!オートマトンとは!!」


今でもコンテナハウスの前の広場を投光器が照射して警戒をしていた。

このコンテナハウスは取り壊し予定の古いものであり、住居人はすでに全員が居なくなっていた。

故にこれだけ暴れても人の悲鳴一つ聞こえて来ない。


「王の予想通りか…」


一人がそう呟くと、その襲撃者は片手に一発の小銃弾を取り出すと、それを一度抜いた弾倉に押し込んで再度銃に装填すると、


「…」


投光器の灯りがズレた瞬間に身体を見せた。


「「っ!!」」


お互いに過去を見合わせた時、襲撃者は引き金を弾くとその銃弾はバケツの頭部に命中した。

しかしバケツはオートマトンでも精霊の宿るオートマトン。基盤を破壊された程度では動きを止める事はない。


「なっ…しまっ…!!」


しかし、この時バケツは自分の精霊としての能力が消える感覚に襲われた。


「…すま…な、い」


そこでバケツは頽れるように床に倒れると、そのまま視界が真っ暗になった。






====






「おい、大丈夫か?」


その時、自分は声をかけられて意識を取り戻した。

視線の先では制服姿のレオポルトが覗くように見ており、他にもジャクソンやヴァージニア、アニと言ったいつもの面々が不安げに見ていた。


「…不甲斐ないばかりです」

「開口一番でそれを言えるなら、オマエさんが無事な証拠だな」


レオポルトはそう言いバケツの穴の空いた頭を見る。その手には一発の弾芯が張り裂けた銃弾が乗っていた。


「レオ、それって…」

「あぁ、対魔術師用の魔力滞留銃弾だな」


そう言い弾芯に使われた感応石を見て呟く。こればバケツの体内から摘出された弾頭だった。

これは体に撃ち込み、中で弾けた感応石によって体内の魔力を掻き乱すことで魔法を打てなくするための特殊弾頭である。これは主にゴーレムや魔力を動力源にする多くの機材を止めるために使われるものであった。


「精霊が動力源のこいつには一番効く方法だ。…襲撃者は多分、こいつの正体を知っていたな」


レオポルトはそう溢すと、精霊の構造を学んでいたアニはなるほどと納得していた。するとヴァージニアが思わず言う。


「しっかし、基盤が壊れたのによく動くわね」

「精霊が宿っているからな。あくまでも基盤は体の動きを円滑にするためであって、もし壊れてもコイツは動くさ」

「マジか…本当に最強ね」


ヴァージニアの感心した様子にそう返すと、ジャクソンはバケツが持っていた武器に苦笑していた。


「ミニガンを体内に持ってるとか、頭いかれてんのか?」

「子供を守るためであれば当然の事でしょう?」

「…」


バケツの持論に理解し難い表情でジャクソンは見ていると、


「…一応聞くとエリカちゃんは?」

「無事に攫われたよ。今小父達が探している最中だ」


レオポルトは簡単に状況の説明を終えると、工具箱を持って立ち上がった。


「はぁ…そうですか」


分かってはいたが、いざ言われるとなるとやはり心にくるものがあった。


「一応、ミンチにした奴らは回収されるとさ」

「そうですか…」


バケツはそこで身体を起こした時、レオポルトが言った。


「あまり無理すんな」

「しかし…」


身体を起こしたが、魔力を乱された直後のバケツは少しふらついてしまった。


もしバラバラに壊されていたらどうなっていただろうかと言う疑問もあったが、今は体が無事なことを感謝するしかない。


「まあ何、俺たちでなんとかしてやるよ」


レオポルトはそう言って後ろに立っていた三人に目をやると、何かしら武器を持っていた彼等は少し頷いており、バケツはそんな反応を前にレオポルトに言った。


「…良いお友達が出来たのね。レオ」

「一言余計だよ。変態精霊」


そう言いながら四人は階段を降りていき、それを眺めて座っていたバケツは一言、


「どうかお気を付けて」


今できる最大限の敬意を持って見送った。

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