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第7話 視察 後編

前回のあらすじ

視察に繰り出した

 

 雑貨屋を出た後、視察を再開する。

 そして今度は元々訪れる予定だった場所へと向かう。

 その場所とは――騎士団の駐屯地だった。


 駐屯地は敷地の半分近くが訓練場となっており、もう半分には庁舎と所属する騎士達のほとんどが生活する宿舎がそれぞれあった。


 庁舎の入口でシグルドが用件を伝え、騎士の案内で訓練場の方へと向かう。

 訓練場では三〇人近くの騎士が訓練をしており、その中にはアーサーとケイの姿があった。


 その二人に加えてトリスタンとイゾルデは時折、騎士団の方々に混じって訓練をしているらしい。

 最近シグルド達も加わるようになっている。

 従騎士として、何時でも戦える準備を怠らないようにとのことだった。


 閑話休題。

 騎士団の訓練っていうから武器を使った訓練を想像していたけど、どうやら魔術による訓練を行っているらしい。


 魔術というのは、魔法がその人にしか使えない異能なのに対して、魔力さえあれば詠唱するだけで色んなことが出来る異能だった。


 すると、他の騎士達に指導していた一人の男性騎士がわたし達の方に近付いてきた。

 男性騎士はカストールの前までやって来ると、その場で跪く。


「ご足労お掛けします、領主様」

「楽にして大丈夫ですよ」

「では」


 カストールの言葉に従い、男性騎士は立ち上がる。

 男性騎士は精悍な顔立ちをしていて、身体は引き締まっている。

 きっと女性にモテモテに違いない。わたしにはカストールがいるからこれっぽっちも興味無いけど……。


 そんなことを思っていると、その男性騎士がわたしに対してお辞儀をしてきた。


「お初にお目に掛かります、領主夫人。私はジェミニ騎士団団長の、ランスロット・アロンダイトと申します。以後お見知り置きを」

「カストールの妻のポルクスです。……騎士団の訓練場だと伺っていたのですが、魔術の訓練もなさっているんですね?」


 領主夫人に相応しい口調でそう尋ねると、ランスロット団長は頷く。


「ええ。これは私の持論なのですが、騎士だからこそ何時如何なる時でも戦える手段を持っているべきだと考えているのです」

「それは何故ですか?」

「一般常識として、騎士は剣や槍などの武器を手にして戦います。ですが逆に言えば、武器が無ければただの一般人とそう変わりません。手元に武器が無かったから戦えませんでした、という状況は避けるべきです。私達の一番の使命は、この地に生きる人々の安心と安全を守ることですから。なので武器が無くとも戦える手段として、当騎士団では魔術の修練も行っているのです」

「へぇ〜」


 あまりピンとは来てないけど、その志の高さは理解出来るし、評価出来る。

 こういう人がいると、きっと住人の皆も安心出来るのだろう。

 それにいざという時に頼りになる。


 ランスロット団長から視線を外し、訓練をしている騎士達の方へと目を向ける。

 素人目から見て、二人ほど魔術の扱いに長けた騎士がいた。


 魔術は基本的に四節の詠唱からなっている。

 例えば、「【雷撃よ、矢の姿となりて、敵を討ち滅ぼせ】、《サンダーアロー》」って唱えれば、雷の矢が敵に向かって飛んでいく。


 この詠唱は鍛練で短縮することも出来て、凄い人だと《サンダーアロー》みたいに発動する魔術の名前だけで魔術を発動することも出来る。


 ちなみに魔法は《クリエイト》みたいに、一節の詠唱を唱えれば発動出来る。これは短縮のしようもない完成された詠唱だった。

 だから魔法の詠唱は絶対詠唱と呼ばれ、魔術の詠唱は相対詠唱と呼ばれている。


 閑話休題。

 その騎士二人はどちらも女の子で、男の人がいるにも関わらず彼等を圧倒していた。

 それと気付いたけど、二人共一節か二節で魔術を発動させていた。


「あの二人、魔術の扱いが凄いですね」

「ええ。我が騎士団期待の新人達です。入団してまだ三ヶ月ほどですが、魔術の腕は既にトップクラスの腕前ですね。剣の腕の方はまだまだですが……」

「名前は何て言うんですか?」

「白髪の方がマーリン、黒髪の方がモルガンです」

「剣の腕では誰が有望株何ですか?」


 今度はカストールがランスロット団長に尋ねる。

 団長は訓練中の騎士達の中で、魔術を剣で捌いている騎士を指差す。


「彼ですね。名はガウェイン。まだまだ粗削りではありますが、これから鍛練を重ねれば善き騎士になりますよ。彼等の他にも期待する騎士達はいますが、その三人が突出して能力が高いですね」

「僕達の従騎士はどうですか? 率直な感想で構わないですよ」

「我が騎士団の騎士達に劣らない実力をお持ちです。叶うことならスカウトしたいくらいです」

「それは良かった。……ここの騎士団の練度は高いみたいですし、いざという時に頼りになりそうですね」

「恐縮です」


 ランスロット団長はそう言い、恭しく頭を下げる。

 それからいくつか質問をした後、騎士団の視察を終えて帰路に着いた―――。






ランスロットの持論は「騎士は徒手にて死せず」ってヤツです。




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