第48話 初対面
前回のあらすじ
オーロラの街に戻ってきた
「「あぁ〜あ。はぁ〜……」」
ジュリウス達がオーロラの街へと戻って行った後、リビングのソファーでジェシカとジェニカは揃って深い溜め息を吐く。
向かいのソファーに座るわたしは、そんな二人に聞き返す。
「どうしたの?」
「だって、お兄ちゃん達もう行っちゃったんだもん」
「ティアお姉ちゃんとももっと遊びたかったなぁ〜」
「でも、ティアちゃんからリボン貰ってなかったっけ?」
「「勿体無さ過ぎて使えないよ」」
双子特有のシンクロで、二人はそう答える。
「でも、使ってもらった方がティアちゃんも喜ぶんじゃないかな?」
「じゃあ、私の髪結んで、ママ?」
「ママ。ジェシカの次はあたしの髪もお願い」
「うん、良いよ」
そう答え、二人の背後に回り順番に髪を結んであげた。
ご機嫌な様子の娘達を見て、やっぱり可愛いなぁ……と心の底から思う。
親バカだと言われようと、異論は認めない―――。
◇◇◇◇◇
ティアの実家であるレメゲトン家に滞在してから二週間。
僕に宛がわれた客室の窓際で読書をしていると、屋敷の正門に見慣れない馬車が停まったのが目に入った。
何だ? と思いながらジッと目を凝らしていると、馬車の中から見るからに高貴な身分だと思われる少年が降りてきた。
その少年を、ソロモンさんと無駄に着飾ったティアが出迎えている。
ティアがドレスを着ている所なんて数えるほどしか見た事無いから、ちょっと不思議な気持ちだった。
ティアに後で詳しく尋ねよう、と思い、僕は読書を再開した―――。
◇◇◇◇◇
「では改めまして。我が名はブラギ。ブラギ・グリームニルです」
「初めまして。ソロモンの娘のティア・レメゲトンです」
「初めまして。ティア殿はお母上に似て、美しくあられる」
「いえ、それほどでも」
綺麗だ何だと言われたのは家族を除いてジェシカちゃん達とポルクスおば様くらいしかいないから、少し嬉しい。
応接室で改めて対面するブラギさんはわたしと同い年らしいけど、年不相応な落ち着いた雰囲気を纏っている。
もしかしたら皇族の親族っていうのは、だいたいこういう雰囲気なのかもしれない。
ウチに仕えるメイドが淹れてくれた紅茶に口を付け、喉を潤す。
お母さんがルージュの街―当時は村―の領主だった時は使用人をあまり雇わなかったらしいけど、この街の領主を務めるにあたり、家事が出来る時間は取れないだろうと考えて雇うようになったらしい。
閑話休題。
ブラギさんも口を付け、薄く微笑む。
「美味いですね。特別な茶葉でも使われているのですか?」
「いえ。私の父の代からお世話になっている商会から購入している物です」
お母さんは公の場とかでは一人称が「私」になるっていうのは小さい時から知っていたけど……未だに慣れない。
これもたぶん、「僕」っていう一人称に慣れ親しんでいるからだろう。
「なるほど……ちなみに、懇意にしている商会は何という名で?」
「ゴリアテ商会という名です」
「……アースガルド帝国で一、二を争うほどの大商会ではないですか。いったいどう言ったご縁で?」
「父が言うには、初代会頭が商会を立ち上げ始めた時に盗賊団から助けた事がきっかけのようです。それから良くしてもらっていますね」
ちなみにわたしが今着ているドレスも、その商会からオーダーメイドで購入した物だったりする。
「なるほど。それはまた……」
「ところで……ブラギ殿。私の身内話よりも、娘と話して下さいませ。お互いに言葉を交わさなければ分からない事もあるでしょう?」
「ソロモン殿の仰る通りですね。……ティア殿。ご趣味は?」
「そうですね……」
それからわたしは、ブラギさんと色んな事を語り合った―――。
◇◇◇◇◇
ブラギさんが帰るのを見送った後、屋敷の中に戻る最中にお母さんが話し掛けてくる。
「ティア。実際に会ってみてどうだった?」
「良い人そうっていうのが一番の印象かな?」
「それは僕も思うよ。……じゃあ」
「うん。婚約の話を進めても良いよ」
「分かったよ」
それから二週間後。
わたしはブラギさんと正式に婚約した―――。
章タイトルにもなっている新ヒロインは次回登場予定です……たぶん(小声)。
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