第49話 新学期
前回のあらすじ
ティアが婚約した
新学期が始まる一週間前に学園の寮へと戻り、色々と準備をする。
当然と言えば当然だけど、寮は男子寮と女子寮に分かれており、部屋もそれぞれ二人一部屋という部屋割りになっている。
僕と同室なのはオリバーで、ティアの方はアルマと言う、彼女の従騎士(仮)と同室だった。
そして新学期当日。
寮内にある食堂で朝ご飯を食べた後、学園指定のブレザーの制服に腕を通し、講堂へと向かう。
学園内での服装は基本的に制服着用だけど、寮内であれば服装は自由だった。
学園内での武器の所持は認められていて、事実オリバーの他にも武器を所持している学園生は見受けられる。
その代わり、学園生同士での私闘は固く禁じられていて、もし破ったらどんな理由であっても一発で退学処分となる。
講堂に向かう途中、ティアとアルマと合流する。
ティアは普段は青色の長い髪はそのままにしているけど、制服を着る時だけは襟足辺りで一つ結びにしている。
アルマは僕達と同い年だけど、ティアより頭一つ分身長が低く、アッシュブロンドの髪はセミロングに伸ばしている。
そして身長に不釣り合いなほどに大きな大剣を背中に背負っていた。
「おはよう、ジュリウス、オリバー」
「ああ。おはよう、ティア、アルマ」
「おはようッス、ジュリウスくん、オリバーくん」
「おはよう、ティア、アルマ」
「今日から新学期だね」
「僕達ももう二年生か」
「どんな後輩ちゃん達が来るんだろうね?」
「さあ?」
ティア達と何て事は無い雑談をしていると、講堂の入口前に辿り着いた。
そこの前にある掲示板にクラス表が貼り出されており、僕は……A組か。
見ると、ティア達も同じクラスらしい。
クラスの確認をし終えた僕達はそのまま講堂の中に入り、各クラスに割り振られている席に座る。
席自体は自由席みたいで、僕達は横並びに座る。
それから十五分後。
壇上にこの学園の学園長が登壇する。
「皆の衆、ごきげんよう。改めて名乗る必要は無いと思うが、私はロビンフッド・ロキ・ラグナロクだ。学園長の話は長くなると相場が決まっているので、手短に言おう。……日々の精進を怠るなよ、若人達よ。以上だ。是非有意義な学園生活を送れる事を切に願う」
そう締めて、学園長は颯爽と壇上から降りていく。
それから各学年主任の話とかがあった後、校舎の方へと向かい新しいクラスに向かう。
新しいクラスの構造も一年生の時に使っていた教室と殆ど変わらず、座席も自由なので一番左奥の席に座る。
僕の横にはオリバーが、前の座席にはティアとアルマがそれぞれ座る。
しばらくすると、このクラスの担任教師が入ってきた。
「はぁ〜い、皆さん、初めましてぇ〜。このクラスの担任を務める、マリーですぅ〜。どうぞよろしくぅ〜」
間延びする言葉遣いやウェーブ掛かった髪型、それとほわほわとした雰囲気から、少なくとも厳しそうな人じゃないと判断しても良いだろう。
「早速ですけどぉ〜、今日からこのクラスに編入する事になった学生を呼びますねぇ〜。……どうぞぉ〜、中に入って下さい〜」
マリー先生がそう呼び掛けると、教室のドアを開けて一人の少女が入ってくる。
腰まである長い髪は氷のように薄い青色で、同色の瞳はややつり目で勝ち気な印象を与える。
だけどその所作は気品に満ち溢れていて、クラスメイト全員の視線を釘付けにしていた。……僕も例外じゃない。
少女は先生の横に立つと、深々とお辞儀をする。
「初めまして、皆様方。本日からこの学園に通わせて頂く事になった、アナスタシア・ヘル・ニブルヘイムと申します。気軽にアーニャ、とお呼び下さい」
そう名乗って頭を上げ、ニコッと微笑む。
その笑顔にハートを撃ち抜かれた大半の男子学生と少数の女子学生は、頬を赤らめる。
オリバーはと言うと……コイツ、新学期早々から居眠りしてやがる。
図太いと言うか、肝が据わっていると言うか……。
何て思っていると、何かがオリバーの額を撃ち抜き、その勢いに押されたオリバーは背中から床に倒れ込む。
オリバーが心配だけど、攻撃の出所に目を向けると……何かを投げた後っぽいポーズで止まっているマリー先生の姿があった。
笑顔なのはそのままなのに、何でか得も言われぬ恐ろしい迫力があった。
「……新学期初日から居眠りとは、良い度胸してますねぇ〜。後でわたしの所に来るように言っておいて下さいねぇ〜」
……普通の叱責の言葉なのに、こんなに恐ろしく感じる事ってあるんだ……。
そう思っていたのは僕だけじゃないらしく、クラスメイトやアーニャさんもドン引きした表情を浮かべていた―――。
普段温厚な人が怒ると怖い。
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