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お招き当日

 ソフィアとアマート、それからディーノとカーラの結婚式は、もう少し先である。だけど、親兄弟やわずかなゲストだけを招いて、パーティーをするらしい。


 そのパーティーに、王太子殿下とともに招いてもらった。


 ソフィアのお兄さんのクリスティアーノは、ティーカネン侯爵家の領地からこの王都に出て来ている。それから、アマートとディーノの五人のお兄さんたちも、それぞれの任地から戻って来ている。


 クリスティアーノに会うのは、もう何年振りかしら。彼は、メガネのちょっと小太りの少年だった。そんな彼が、いったいどんなふうになっているのかしら?


 一方、プレスティ侯爵家の五人のお兄さんたち、揃って優秀な軍人らしい。もしかして、強面の人たちなのかしら?


 当日、ちょっと緊張しながらティーカネン侯爵家へと向かった。


 と言っても、実家のすぐ隣なのだけれど。


 わたしってば、図書館長のお屋敷にすっかりいついてしまっている。しかも、まるでそこがわたしの家みたいにふるまっている。


 すごく厚かましいわよね。


 そう思いいたると、館長に対して申し訳なくなるとともに、恥ずかしくなってしまう。



 当日、館長の屋敷に王太子殿下が迎えに来てくれた。


 あの例の舞踏会で着用していた薄いピンクのドレスと靴を着用し、装飾品を身につけバックを持つことにした。


 ガブリエルの乱暴な行為で、ドレスは破れてしまった。だけれども、館長が快く手直しをしてくれた。彼女は、裁縫に関して玄人以上の腕を持っているのである。


 王太子殿下は「あたらしいドレスを」と言ってくれた。だけど、あのピンク色のドレスはまだ一度しか着用していない。なにより、すごく気に入っている。だから、そのドレスを着用したのである。


 この日は、カーラも王宮での研修が休みで館長の屋敷に戻って来ていた。


 館長に手伝ってもらって身支度を整えた。もちろん、顔には白粉を塗りたくっている。


 それから、館長も自分の身支度を整えた。


 カーラは、ディーノがプレゼントしてくれたというドレスを着用した。


 菫色の控えめなデザインのドレスである。それは貴族御用達のドレス店ではなく、図書館の常連さんの服屋さんで作ってもらったものらしい。その服屋さんは、プレスティ侯爵夫人の実家のご近所さんらしい。その為、侯爵夫人といっしょにあつらえに行ったとか。


 カーラの素敵なドレス姿を見た瞬間、涙が出そうになった。


 彼女は、子どものときからずっと一緒である。彼女は、わたしのことをずっと守ってきてくれた。


 彼女は、わたしにとってお姉さん以上の存在なのである。


 王太子殿下は、ディーノと一緒にプレスティ侯爵家所有の馬車でやって来た。その馬車のうしろを、何の飾り気のない馬車がついて来ている。


 その馬車の馭者台に、シャツにズボン姿の近衛隊の隊員が二人乗っている。馬車の中には、四名の隊員がやはりシャツとズボン姿で座っている。


 ディーノはカーラのドレス姿を見た瞬間、感動しすぎてかたまってしまった。


 彼は、近衛隊の隊員たちに散々からかわれていた。そんな中、彼は目に涙まで浮かべていた。


 わかるわ。わかるわよ、ディーノ。とってもよくわかるわ。


 そんな彼を見ながら、心の中で共感してしまった。


 そして、王太子殿下はそんなわたしを見ていたみたい。


 近づいて来て、そっと肩を抱いてくれた。


「きみも美しいが、カーラも美しい。以前、きみとカーラのどちらが美しいかということを、ディーノと二人で話をしたことがあったんだ。もちろん、きみの方が美しいというわたしの主張は正しいけどね。だけど、彼の主張も嘘っぱちではなさそうだ」


 王太子殿下は、わずかにわたしを見下ろしてやさしい笑みを浮かべた。


「美しい。素敵だよ、アリサ。はやく王子様と王女様を守る小さな勇者に見せびらかしたいな」

「ありがとうございます。殿下もすごく素敵です。わたしにはもったいないほど素敵な白馬の王子様です。そうですね。小さな勇者だけでなく、白馬の王子様に憧れる小さなレディたちにも見せびらかしたいですわ」


 わたしってばすごいわ。こんなことを言えるようになっている。

 でも、小さなレディたちにみせびらかしたいって、やきもちを焼いていることがバレたんじゃないかしら?


 イヤな女だって思われなかったかしら?


 そう言ってしまってから、自分の言ったことを後悔する、なんてこともいままではなかった。だから、ただただ驚きである。


「やはり、きみを他人に見せたくはないな。子どもたちならまだしも、大人たちにはね」


 王太子殿下のとろけるような笑顔、それから眼差し。


 ほんとうにわたしに向けられているのかしら?ほんとうに愛されているの?ほんとうにこんなわたしでいいのかしら?


 それらは、もう何百回も思い浮かんでいる疑問である。


 そういうときは、同時に不安にも襲われてしまう。



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