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読みきかせの会

 屋敷に叔母様と叔父様がいる為、舞踏会以降も図書館長の屋敷でお世話になっている。


 もろもろの問題の解決の目途が立ったら、わたしは王宮に行って王太子妃になる為の作法やしきたりなどを学ばなければならない。


 図書館の司書としての仕事は、来月の読みきかせの会のあたりで休職することになった。


 婚儀は三か月後を予定している。


 王太子殿下もわたしも、婚儀自体は王宮内でこじんまりとしたかった。だけど、王太子としては、やはり国民みんなに知らせ、祝ってもらわねばならない。


 王都でパレードを行い、その後王宮内で最低限のパーティーを行う。


 国境を接する二国との協議も同時期に予定されている。その為、ついでといってはなんだけど二国の要人も招くことになった。


 本来なら、もっともっと時間をかけて準備するものである。


 だけど、王太子殿下もわたしも一日でもはやい方がいい。

 焦る必要などないはずなのに、二人ともなぜか焦っている。


 準備をしてくれる多くの人たちには申し訳ないけれど、わがままを通してしまった。


 王宮での勉強がはじまるまでは、通常通り図書館ですごす。


 あれ以降、火傷の跡は白粉を塗るくらいでなるべく隠さないようにした。


 どのような反応をされるか、気になった。とくに子どもたちやお年寄りの方に。


 人々の中には、火傷や傷の跡を怖がったり受け付けないという人もいる。もちろん、そういう人に対しては、髪で隠すつもりだった。


 だけど、意外にもそういう人はいなかった。子どもたちは、怖がったり物珍しがったりということもなく、逆に「大丈夫?」とか「痛くない?」とか心配してくれた。しかもそれも最初のときだけで、つぎに会ったときにはとくに気にもしていない子がほとんどだった。


 大人の多くは、大人らしく触れず見過ごすふりをしてくれている。


 心から安心をした。これまで、過剰に気にしていた自分がバカみたいに思えた。



 今月の読みきかせの会も無事に終わった。


 例のごとく、終わってからスイーツをいただいている。


 今日は、お天気がいいので図書館の裏に敷物を敷いて食べることにした。


 メニューがクッキーだったからである。


 プレーン、チョコレート、ナッツ入り、ジャム入り、お砂糖をまぶしたもの、などなど種類がたくさんある。しかも、大人向けには茶葉入りやジンジャー入りが準備されている。


 飲み物は、定番だけど子どもたちにはホットミルクを、大人には紅茶を準備した。


 今回の読みきかせの会で、館長からはじめて知らされた。


 会の終了後のスイーツは、じつは王太子殿下が自腹で支払っていてくれている、ということをである。


 それを知らされて驚いたのは言うまでもない。同時に、申し訳なさでいっぱいになった。


 いつも能天気に味わっていたのである。堪能してしまったのである。


 舞踏会の前に、王太子殿下がスイーツを持って図書館に来てくれた。結局、叔父様の凶行ともいうべき暴力で食べることが出来なかったけど。


 もともと王太子殿下は、このお店のスイーツのことをよくご存知だったのである。


 みんなでワイワイとクッキーを食べていると、その王太子殿下がやって来た。


 いつものように、近衛隊の人たちも来てくれている。


 当然、アマートとディーノも付き添っている。


 ディーノとカーラも、わたしたちと同時期に結婚をすることになった。


 カーラは、一足先に王宮でわたし付きのメイドとして教育を受けている。そして、プレスティ侯爵家の七男の花嫁としても、侯爵夫人から手ほどきを受けている。


 彼女も大忙しの毎日を送っているのである。


「お兄さんはだれ?」


 女の子が王太子殿下に尋ねた。


 子どもたちの母親たちは、王太子殿下ということに気がついたらしい。


 騒然としはじめた。とくに先程の女の子の母親は、慌てている。


 王太子殿下は、無言で首を振った。


 彼はいつもそうである。身分を振りかざしたりしない。


 それを察した先程の母親を含むすべての母親は、王太子殿下の美形をぼーっと眺めはじめた。


「ぼく、知っているよ。この人、王子様関係の人なんだ」


 そのとき、ニコラスが甲高い声で叫んだ。


 そうだった。以前、彼は図書館の外に出てしまい、王太子殿下に連れてきてもらったんだった。


 そういえば、彼はその際に王子様のことを「弱くてつまんない」というようなことを言っていたっけ。


 そのときのショックを受けた王太子殿下、可愛かったわ。


 ニコラスの母親が、仰天して彼を叱ろうとした。


 王太子殿下は、それもまた笑っておしとどめた。


 それから、彼は最初に質問をした女の子の前で両膝を折って彼女と目線を合わせた。



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