19.
オルフェーノとマカモウスが結ばれた後のこと。とある夜中に、二人の身に悪意が迫っていた。
「あの親不孝者……親に恥をかかせるなんて……!」
「オルフェーノめ……マカモウス殿下に取り入りおって!」
「お姉様だけ……ずるいわ!」
「絶対に許さんぞ! オルフェーノもマカモウスも……!」
憎悪を込めて屋敷を睨む四人組。アデントとエルドーロ、ファンカイアとムーワ、オルフェーノの両親と妹、元婚約者だ。以前のような整った服装ではなくボロボロの身なり、顔色も肌艶も見るからに悪く見える。
オルフェーノとマカモウスによって断罪された馬鹿四人組は、貴族籍を失って平民となった後、残された財産だけで生活していた。最初のうちは処罰に納得できずに王宮や裁判所に訴えに行っても門前払いになるだけ。渋々ながら働こうとしても貴族のプライドのせいで長続きしない。それ以前に散財することを止められなかったことで借金までする始末……救いようがない。
更に救いようのないことに、それらを全てオルフェーノとマカモウスのせいだと思い込み、二人にに復讐する事ばかり考えるようになった。そして、遂に実行することにしたのだ。
「オルフェーノは俺という婚約者がいながらマカモウスと浮気していた……裏切り者は絶対に許さん!」
「お姉様なんかが王族と結婚なんておこがましいわ! そこは私のものになるはずだったのに!」
「我らだけが苦しい生活をするなど認めん……!」
「私達よりも痛い目に遭うべきだわ!」
彼らは手にナイフや斧等の刃物を持って屋敷に近づいていく。今の屋敷の主であるオルフェーノを襲うつもりなのだ。クロンギ家の屋敷であるため、元家族の三人は内部のことは把握している、オルフェーノの部屋も分かっていた。
しかし、彼らの復讐は上手くいかなかった。
「そこまでだ。馬鹿ども」
「「「「ッ!?」」」」
四人の背後から侮蔑のこもった声がかかった。四人が振り返ると、後ろに多くの兵士を率いた大柄な男が立っていた。その男の素性は貴族なら誰でも知っている。
「「「王太子殿下ッ!?」」」
「兄上ぇっ!? 何故ここにっ!?」
ムーワとマカモウスの顔の良いところを足して割って逞しくしたような顔つきの大柄な男、この男こそ第一王子にして王太子イマジン・ミラモースタだった。
「何故? それは貴様らの愚行を止めることだ。実を言うと貴様らはずっと『陰』に見張りをさせていたのだ。反省して心を入れ替えて平民として生きていくのかどうかをな」
「そ、それって、私達が貴族にもど、」
「戻ることはない。貴様らは反省なんかしていなかっただろう?」
ファンカイアが都合の良いことを口に出してもバッサリ否定するイマジン。そして、更に軽蔑したという顔で睨みながら言う。
「それどころか、クロンギ家の屋敷にいるオルフェーノ嬢に復讐だと? 彼女は虐げられた事実を皆に知ってもらっただけ、貴様らの愚行を周知のものにしただけだ。それを恨むなど言語道断!」
「「「そんな!」」」
「兄上! 俺は、」
「黙れ! 貴様の持っているナイフが愚行の象徴ではないか!」
イマジンの言う通り、ムーワはナイフを持っていた。実の兄に指摘されたムーワは逆ギレを始める。
「な、何だよ! あの女は俺というものがありながら弟と浮気していやがったんだ! それを咎めて何が悪いんだ!」
「あの二人が恋仲になったのは貴様らを断罪したあとだ。それ以前にお前との婚約は解消されているだろう。浮気などとは言いがかりだ!」
「ああああああっ!! うるせえっ!」
ムーワはナイフを持ったままイマジンに向かって走り出した。まさにナイフを突きつけようというつもりのようだが、イマジンは上手くナイフを避けてムーワを地に伏してしまった。
「あ、あぐ……」
「ふん、貴様ごときが私にかなうはずがないだろう。王族の恥さらしが!」
「ムーワ様!」
ムーワはイマジンに叩きのめされた後で兵士に縄をかけられる。勿論、それで終わりではない。
「貴様らもお縄についてもらおう。罪状は言わなくても分かるな?」
「ご、御慈悲を!」
「助けてください!」
「い、嫌よ! 来ないで!」
元クロンギの親子も兵士達に連行されていく。こうして彼らの復讐作戦へ失敗に終わった。
この件は国王の耳にも入り、カンカンに怒った国王の指示で四人は強制就労所に送られてそのまま一生を終えるのだった。
真・終わり




