空気夫人と王家の家族計画
「ティエラ!」
「ハイハイ」
放流して半時ほどで。切羽詰まった顔で戻ってきた旦那様を抱きしめる。
夜会の真っ最中だがそれを誰も気にした様子もなく、旦那様は深くため息をついた。
「息が詰まる」
「深呼吸でもしてくださいな」
「既にしておる」
そしてしばらく弱った様子見せていた人嫌いの旦那様はその後私の手を引いて社交に戻って行った。
数組の人と話してしばらくして。
後ろから王妃様に声をかけられた
「ティエラ、元気そうね」
「……『空気化』」
「ありがとうティエラー!もう集中の限界だったの!ティエラを独占しないでよねアスター」
「俺の嫁を独占して何が悪い」
スキルを使った瞬間、淑女の仮面を投げ捨てたユーリ様に苦笑を浮かべていると旦那様に腰を引かれた。
「悪いわよ!もう嫌味のオンパレード。息子が一人で何が悪いのよ!うちの子可愛いしまだまだ産むわよ!」
「それは結構な事だが前から言ってるがうちのフィナはやらんぞ」
「諦めなさい、レオは本気でティエラの血筋を取り入れる気よ。フィナちゃんにも選択肢を上げたいから頑張ろうって言われたもの」
「……少しあけすけすぎますよ」
鬱憤が溜まってる二人は本当に容赦がない。
出会いからそろそろ5年。
殿下からはふたつの命令をされている。
曰く、子供を沢山作れ。その子の教育には多少口を挟ませろ。
無茶ぶりもいいとこだが、だからといって子供の意志を無視したことはしないと公言してくださってるあたり、まだ良心的だろう。
『空気化』を使える者を将来性を見すえて育てるおつもりらしい。もちろん、子供の意思に最終決定権を任せるらしい。
うちの子がそういう方の才能に開花して、本人がやる気を見せたら恐ろしい密偵軍団になりそう。
まあ教育方針に関しては公爵家の教育方針すらよく分からない私にはよく分かっていない。ただ身を守るための攻撃は良いけど、弱者をいたぶるものはやめて欲しいなあ、くらいだ。
それを旦那様に言ったら困ったように髪を撫でられたけど。
公爵家の闇も深そうだ。
「…まあそろそろうちの選択肢は増えますよ」
ふふふと笑ってアスターを見上げると、姉弟は同じ顔で固まった。
「帰るぞ」
「え、アスター?」
「あとは任せたユーリ」
「はいはい。っていうかティエラちゃん!妊娠初期に夜会なんて出ちゃダメよ!」
「……申し訳ありません」
即座に横抱きにされて広間から出ていく。
けれど誰も気にする様子はない。
キラキラの、ドロドロな世界は驚くほど私に優しくアスターには厳しかった。
だから。
微力ながらも彼を支えて行こうと思い優しく自分のお腹を撫でた。
私も頑張るけどあなたもお父さんを助けてあげてね。




