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ダークナイト・アナザーライフ  作者: 代谷 シユキ
第1章 魂を喰らう悪魔
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第1話 少女との出会い

よろしくお願いします!


 レクスは一人、草原を歩いていた。

 荷物などは持っていない。

 ただひたすら草原を歩く。

 靴は既にボロボロに崩れて、着ていた服もボロ切れのように糸が散らばっている。


「……エルティア……俺は…………」


 レクスは何かを呟きかけた。

 その時……。

 レクスの耳元に懐かしい金属の打つかる音が響いてきた。

 特徴的な鈍い音。


「剣で戦い合っているのか?」


 レクスは音を聞いてそう判断した。

 近くに行くと一人の少女が見えた。

 金髪の美しい髪を靡かせ、青い瞳で強い殺気を見せて剣を構えている。真っ直ぐな顔は幼い容姿も可憐に見えた。少女が地面を蹴り、舞うたびに金木犀が揺らいだような輝きと美しさを感じさせた。

 レクスは少女の姿に目を奪われていた。

 しかし、しばらく経つとレクスは少女が何と戦っているのか気になり始めた。


「アレは…………オークか」


 鬼人と呼ばれるツノの生えた魔獣。

 少女よりも数倍の身長を有している。

 両手に握られた剣が少女を襲う。


「ドウシタニンゲン? コンナモンカ?」

「この魔獣風情が……」


 少女の着ていた軽装の鎧がギンッ! と金属音を奏でて辺りに飛び散った。鎧が剥がれた少女を見てオークは楽しげに笑みを浮かべる。

 少女は鎧が剥がれた事を気にせず、オークに剣を向けるが、オークは強気な少女の姿勢に少しだけ表情を強張らせて、両手に持っていた二本の剣を容赦なく振り下ろした。


「……っ!」


 少女が痛みに苦しむ声が聞こえた。

 レクスは少女の方を見ると、少女は片手に持っていた剣で一本の剣を防ぐが、もう片方の剣は肩の肉を抉っていた。傷口から夥しい程の血が地面に流れ落ちる。


「あ……ぁぁぁぁッ!?」


 それを見てオークは面白げに少女の肩に食い込んでいる剣に力を入れ込んだ。

 少女の呻き声が響き渡る。


「オイオイ……シンジャウゾ? サッキノイセイハドウシタ? ホラ……ホラホラ!」


 死にたくない……そう言いたげな表情で目から涙を流し、痛みを我慢するように奥歯で噛み締めている。だが、少女の肩に見る見るうちに剣が沈み込み、少女の右腕は簡単に宙を待ってしまった。


「ハーイ……ウデガフキトビマシタ!」

「……ッ! う、腕が……」


 少女は肩を抑えるようにうずくまる。

 地面に致死量に近いほどの血が溢れていた。

 そんな少女を見てオークは満足そうな表情を浮かべた後に少女の腹部に剣を突き刺した。

 少女の叫び声と共に血潮が吹き出す。


「ニンゲンヲイジメルノハタノシイ!」


 何度もオークは少女の腹部に剣を刺す。

 肉を裂き骨を断ち切り血が溢れて出る。

 何度も……何度も……何度も何度も。

 少女は既に虫の息だった。

 視界も朧げになり、焦点が合わないのか、辺りを見渡して恐怖で身を含ませていた。

 だが、それでも少女は諦めなかった。

 レクスの耳元に微かに声が聞こえる。


「………………まだ死にたくない」


 弱々しい声。

 しかし、ハッキリと気持ちは伝わってくる。

 死にたくない。

 死ねないと言う気持ちが……。


「タノシカッタヨ……ニンゲン!」


 オークは少女の首に剣を構えて振り下ろす。

 大量の血が辺り一面を赤く染めた。

 少女の顔に返り血が流れ落ちる。


「アァ? ナ、ナンデ……オレノウデガ!?」


 オークは手を抑えて呻き声をあげた。

 よく見ると、オークの腕は近くに無残に落ちている。それも綺麗に切られたように……。

 オークは辺りを警戒し見渡した。

 誰の気配も感じなかった。

 しかし、誰か居ることは明白だった。


「ダレダ! スガタヲミセロ!」

「叫ぶな……お前の後ろにいるだろ?」

「……ッ!?」


 後ろには剣を構えたレクスが立っていた。

 オークが振り返る瞬間に風が揺らいだ。

 バランスを崩しオークが地面に倒れ込む。痛みよりも先にオークは何が起きたのか理解出来なかった。オークがゆっくりと自分の足元に視線を送る。そして……叫び声を上げた。

 あるはずのモノがその場所にない。

 正確に言えば先程まであったモノがない。


「ア、アァァァァ!?」


 オークは横に視線を送ると、そこには緑色の皮の肉が落ちていた。脳内がそれを理解する前に痛みが襲いかかる。オークは目の前にある二本の肉を見て嗚咽の混じった声を出す。

 先程まで少女を狩る側だったオークが、途端に狩られる側となってしまう。本能が逃げ出す……逃げろとオークに命令してくる。

 だが、オークは逃げる事が出来なかった。

 オークは空を飛ぶ生物ではない。もちろん、海を優雅に泳げるわけでもない。地上にいる生物の殆どが、自らの足を動かし、移動する生物だ。しかし、レクスの目の前にいるオークの足は膝の関節から切断されている。

 幾ら本能が「逃げろ」と命令を下しても、足が生えてくることはない。オークに残されている選択肢は『死』かあり得なかった。


「ヤメロ……ヤメテクレニンゲン!」

「すまん。俺……人間じゃないから」

「エッ?」


 無様な声をオークが上げる。

 次の瞬間にレクスの剣撃が炸裂した。

 オークの首が宙を舞う。

 クルクルと回転してオークの首は地面に落ちた。

 制御するモノが無くなったように、オークの身体は地響きを立てて倒れこんだ。オークの首筋から大量の血が溢れでる。脈打ちしていた心臓が次第に心音を弱まらさせた。

 レクスは剣を鞘にしまい少女に駆け寄る。


「……息はあるな」


 微かに……微かにだが息はあった。

 あと数分も放置すれば必ず死ぬだろう。

 レクスは自らの口を歯で切り裂き血を流す。

 そのまま口から血を流したまま、倒れている少女の口に自らの口を合わせた。レクスの口から徐々に血が少女の口に入り込む。

 レクスは少女が自分の血を飲んだ事を確認した後に、少女の胸に手を当てた。


「我は闇の眷属。化のものに生を与え、再びこの世に目を覚まさせろ。原子は万象を呼び戻させ、我の血を糧にしろ……神大級魔法【リザレクション】!」


 レクスの周りに魔力の粒子が集まる。

 光り輝く魔力がレクスの腕を通り、少女の身体を包み込む。次第に光の輝きは強くなり、少女の腹部の傷が再生を始める。切れていた腕も何もなかったかのように生えていた。

 少女の鼓動が正常に脈打ちを始めた。


「ふぅ……何とか間に合ったか」


 レクスはため息をつき少女から手を離した。

 スヤスヤと寝息を立てる少女。

 レクスはこの少女に何の接点も何の縁もない。だが、何故か無視出来なかった。


「起きるまで見守るか……」


 レクスは少女の側に寄り添うように座った。

 赤い夕暮れがレクス達を包み込んでいた。


不定期更新です。

中間考査があるので、更新が少し遅れます。

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