64
「これだ 上から二列目の右から三番目が俺の写真だ」
借りてきたアルバムは流石に古く、写真の一部は少し茶色に変色していた。
卒業写真は前列に女子が座ってその後ろに男子が立って全員が映っていた。
「これか?少し違っている気がするが・・」
皆がアルバムの本人だと言う写真と今ここにいる男を何度も見比べながら、呟いていた。
「いや 本人だ。違う感じがするのは目つきが変わっているのが原因だ。よく見ろ、この顔の輪郭そして顎の形は今いる人物と同じだ」
社長が本人に間違えないと語っていた、目つきがかなり変わって印象がズレていると判断した。
・・人のことが言えるのか?
目付はここにいる者は全て田川本人と同じ共通点があると 呟いていた。
「「「・・成る程、確かに目の印象によってこうも違うか・・」」」
何故か田川は無性に暴れたい心境に襲われていた。
「確かに本人と思われる、だが年齢から考えるとこの写真の子供とも考えられるのでは?」
専務が尚も疑問が残ると慎重だ。
少しづつ田川はもうどうでも良いような気分に襲われていた。
こいつ等を全員叩きのめし、金だけ奪っていくか?
一瞬とんでもない考えに襲われたのは内緒だ。
「では 次の確認に移る、、大場お前昔話は仕入れてきたのか?」
「はい 只彼女が言うのにはもしかしたら田川本人が知らない事も考えられると・・」
「・・まぁいい、どんな内容だ?」
一つ目に関しては確かに田川は記憶にないことであった。
クラスでの文化祭においての田川に関して女子の間で噂話が出た事があったらしい、なかなかその内容には興味深いものではあったが、結果的には判断材料には困る物であった。
「少し待て、その女子たちが噂に出た事案は、もしかしてフォークダンスに関した事ではなかったのか?」
何かを思い出したのか田川は遠い目をして思いだそうとしている。
「そ そうです・・」
フォークダンスが学校にて強制的に教えられていたが、当時恥ずかしがり屋であった田川はあまり積極的に女子と手を組みたくなくて、軽くチョコンと手を添えるだけの行動で誤魔化そうとして女子たちから後日に散々陰口を言われた事を思い出したのだ。
「まさしく その通りの事を言っていました、かなり女子からの人気が悪かったと・・」
あれを今だに覚えて文句を言うのか・・田川は顔が暗くなっていく。
「ほほう・・・」
社長が面白そうに田川の顔を見つめていた。
「つ 次だ、 次の話に移ってくれ」
そんな雰囲気を変えようと田川は話題を変えていく。
もう一つは恋愛?に関した事で、中二の頃田川が休み時間に廊下を歩いて隣のクラスの前に来た時にいきなり廊下側の窓ガラスが勢いよく男子生徒により開かれた、思わず開かれた窓から見えたのは中1の時に同クラスであった女子の顔があった。そして彼女も驚いたような顔で窓ガラスが開かれた方向を見ると、廊下を通過する田川と互いに顔が合う。
そしてその窓ガラスを開けた男子生徒がにやにやして田川を見ていた。
瞬間的にその男子生徒の悪戯と判断した、一年の頃この女子と隣の机で何故か互いに気が合いよくお喋りをしていた記憶がある。
その当時のクラス仲間に今悪戯した男子生徒がいたのだ。
少しこの二人が話題になっていた事を思い出して、突発的に起こした悪戯だろうと考えたのである。
その女子の名を覚えているか? が質問内容である。
・・森田 京子 だと思う。
田川はあまりの質問内容に頭を抱えた。
それこそ 今の今まで本人も忘れていた事件であった。
正解です! 何故か若い衆が嬉しそうに答える。
よくぞ こんな内容の思い出話などを・・・田川は更に暗くなる。
「うーむ 以上から判断すると正に本人と認定しなければならない」
社長や専務がニヤニヤしながら認定してくれる。
どうでもいい気分になっていく田川はあまり嬉しさが伝わらなかった。
「ならば 聞こう。どんな事があの日にあったのかを・・」
ようやく本題に入れそうだと田川は先ほどまでとは違う雰囲気で尋ねる社長に向かい合う。
「・・まず最初に言っておく、俺の見かけに誤魔化されるな。何故なら俺は社長、この世界ではあんたより年上になる。1944年生まれの戦中派だ」
突然の田川の言葉にここにいる全員が暫し固まってしまう。
「・・それを信じろと?」
振り出しに戻ったなと田川は感じていた。
「そうだ この世界ではの注釈付きだ」
「・・何が言いたい?」
「俺はこの世界ではない場所へとあの日運ばれたんだ。そしてその世界で10年間暮らして俺はあの世界では36歳になっていた。だがこの世界に戻って来てみれば70過ぎの爺になる事が判明したと言う事だ」
そこまで一気に話すとここにいる全員の顔を見つめ、反応を伺った。
「・・つまり最初に言っていた 浦島伝説に匹敵する事が起きたと?」
そうだ、ようやくその点に触れても違和感が少なくなってきたかな?
「あのおとぎ話は本当にあった話だとなるが・・・」
「本当にあったのかまでは俺も知らん、なれどそれと類似した体験をしてきたのは事実だ」
社長を始め専務 及び社長の取り巻き達が一斉に黙り込む。
頭の中で理解しようとはしても、現実的に受け入れられないと言う所だな と判断する。
長い沈黙の後に社長が静かに語りだした。
「・・信じられん話だ、なれど先程からの本人しか知らぬ事や、話の辻褄に嘘はなさそうだ。専務お前はどう考える?」
「おゃっさん・・これは信じるしかないでしょう、嘘だと俺達に証明できますか?」
混乱しているのか、つい言いなれた言葉で返答する若頭だ。
「うむ 完全ではないが俺もかなりの確率で嘘ではないと感じている。そうか、、俺より年上なのか」
「だが、田川さん、何故戻る事が出来たのか?それと向こうの暮らしを少し聞きたいのだが・・」
もっともな質問だ、話は長くなりそうなのである程度縮めて語ろう。
「まず 向こうでの暮らしだが、当初は苦労したがある功績により俺達は貴族として採用されてこの世界では味わえぬ権利と富を手に入れて暮らしていた。だがある人物によりその極楽生活は破壊され、最終的にその世界から追われるように逃げ出して元の世界へと帰って来た」
・・貴族に? そうか最初に言っていた事にもどったのか ようようその点に合点した専務だ。
「向こうでの10年の暮らしが、帰ってきたら何十年にも値していたと、、」
「うむ、此方に帰って来た俺の疎外感が分かるか?見るもの全てが10年の経過によるものではない事にかなりの混乱が生じた、何とか気を取り直してまず考えたのはこの世界は今現在何年の世界なのかと確認する事から始めようとな」
「・・その最初の相手が 俺達だったと?」 田川はにやりと笑いそれに頷く。
「よりによって俺達に近寄るとは・・よほど腕には自信が?武術のかなり心得が?」
いや と再び田川はにやりとする。
「・・だが 若い者達を一瞬に倒す腕前 それも4名もほぼ同時に・・」
「それについては一部秘密だ、まぁ言っても理解できないだろう。兎に角別の世界で身に着けた特技と思って欲しい」
「・・あの それってラノベによく出てくる話に類似してま・・」
突然 若い者が口を挟み慌ててその口を閉じようとしていた。
・・ラノベ??? ある年代以上には聞きなれぬ言葉である。
「何だと? 俺以外にも いや一人いるか・・兎に角かなり公けの話なのか?」
田川がそんな発言をした護衛役の男を睨んだ。
「いや そのSFと言いますか、そんな類の小説での話で結構人気が・・・」
なんだと 田川や年長組は少しがっかりする。
「・・だが そんな話を仕入れて演技しているとも取れますね、無論今までの話を疑っているのではなくて、出来ればもう少し彼方にいた証拠を見せてもらえれば・・」
専務が言葉を選びながら田川にお願いする口調だが、その言葉の端端には少し棘がある。
此処に来てまた一から説明は面倒だ、ならばと田川は頷いて立ち上がる。
本来得意の魔法系が使えれば一番説得力があるけれど、残念ながらこの世界では無理だ。
なれどそれに匹敵する身体能力の高さがある、それを見せる事にする。
田川が立ち上がった事で、軽い緊張感が生まれ始めた。
「安心しろ 暴れたりはしない。これから始まる事をよく見ておけ」
全員が田川に刮目して一挙手を見逃さないようにしていた。
・・始める そう言った田川の姿がわずかにブレるといつの間にか姿が消えていた。
何事だ!! 全員が田川が消えた場所や横をキョロキョロと忙しなく探していた。
「まぁ こんな所だ」
突然の田川の声が社長の後ろから聞こえ、その田川の手が社長の肩を軽く叩く。
その行為に警備役の者達が真っ青になり社長を守ろうと動き出す。
だか 田川はそれ以上の行為には進まずにゆっくりと元いた場所へと動き出す。
「驚いた・・それはつまりその気があれば社長に対して、、、」
流石に言葉を濁して語る専務であった。




