旅へ②
旅へ②
「ドドさん。聞こえていますよね。ドドさん」
「###、###?」
(言った! 今、僕の名前を、エイドってドドさんが言った!)
「ドドさんごめんなさい。僕はドドさんのことを見殺しにしました」
────エイドの声がする。
ここはどこだ? 俺はどうなった?
意識はある。でも何も見えねえ。真っ暗だ。俺は死んだ?
だが、エイドの声が聞こえるってことは──。
〝この世界について教えて下さい!〟
これは昔のエイドか。懐かしいな。
あの時のお前はまだ純粋な、その辺の公園にいるような普通の子供だった。
なのにお前は血を見過ぎた。
アースに適合した時にお前は、子供から兵士に変わってしまった。
いや、変えられてしまった。
すまなかったエイド。
俺は最初からお前が創られた人間だと知っていたんだ。
そん時はただ荷物を受け取る気持ちで、お前が創られる予定の場所へ向かった。
異常気象の正体も知っていたんだ。
あれはパンが力を使った証拠。
ダクとの無線の会話から何から何まで全てウソだ。
もしも誰かに見られてた場合の演技だったんだ。
だってお前がこんなにも──普通の子供だと思わないだろう。
お前を見つけた時に、見つからなかったって組織にウソを言えば良かったな。
でも隠すこともできね。だから仕方なかったんだ。
本当にごめんなエイド。エイド・レリフ。
──そういえば、そう名付けたのは俺だったな。
結局言えなかったが名前の意味はなんだったかな。
・・・スマン。本当に忘れた。でも確か──
「優しい」「守る」「勇気」「救世主」とか、その辺の言葉の意味を込めた気がする。
最初は期待していなかったけどよお前、本当にその通りになりそうだな。
後は世界を救うだけだ。
でもお前は〝だけって、そんな簡単に言わないでくださいよ!〟って怒りそうだな。
まあまあ、俺が手伝ってやるから、後は頼んだぞ──エイド・レリフ。
(──ダメだ。ドドさんは僕の名前は呼んでくれたけれどちっとも反応がない。もっと僕が飴を舐めないとドドさんとは会話が出来ないのか?)
「ドドさん。お願いです。聞こえていたら返事をしてください!」
「エイド愛してる」
「えっ?今なんて言ったんですか」
ドドさんはさっきよりもハッキリと僕の名を呼んだ。
でもその後は口を動かしていただけ。
何を言ったのか、言おうとしたのか分からない。
彼はいきなりマダー・ステダリーの方へと方向転換。
僕でも追いつけないほどの速さで走り出した。
走るというより空中を滑っているみたい。
「ドドさん!」
最初は何をするつもりか分からなかった。
だから慌てて止めようとはしなかった。
だけど、途中で僕が捨てた刀を拾っていた時に全てを察した。
「カインさん逃げて! ドドさんに狙われてる!」