第15わん 葉山家の両親
スライディング土下座orz
遅くなりました。
僕の両親について話す前に今は亡き家族のアトラスと、現在目の前で・・・いや、僕の背中で人型をとってしな垂れかかっているリリーさん。
彼等がどのように葉山家の一員となったのかを話そうと思う。
葉山家の父方の祖父母の家は、岐阜県下呂市にある。
大垣市からは片道車で約二時間、距離にして約百キロ程にある、温泉で有名な場所だ。
祖父ちゃんの家には、毎年お盆の墓参りに行くのが通例で、地獄の様な肌に粘り着くような暑さの平野部とは違うあちらの気候は、僕等にとって天国の様な快適さに感じられる場所である。
僕が幼い頃に、祖父ちゃんの家で飼っていたシベリアン・ハスキーに子供が生まれた。
その知らせを受け、家族で見に赴いた先で僕が目にしたのは、まだ目も開いていない仔犬達が、横になった母犬のお腹に折り重なってうごうごしているという超絶愛くるしい光景。
そんな庇護欲全開な光景を目にした僕と凛姉は、その瞬間にシンクロ率400%越えをたたき出し、互いに目配せすると即、両親に一匹欲しいと懇願した。
二人がかりの説得で両親から許可をもらい、どの子を貰いうけるか選ぶためにすぐ傍まで近付いてしゃがみ込むと、気配に気付いたのか団子状態から離れてよちよちと僕に近付いてくる一匹の子がいた。
額に特徴的な白い逆三角形の模様の毛並みをもつその子を、即決で貰いうける事に決めた僕と凛姉は、その後に親離れできる状態に成長するまで少しの時間を置き、新しく葉山家の家族として迎えいれたのがアトラスだった。
アトラスがすくすくと逞しく成長した三年後のある日に、海外の仕事先から父さんと一緒に帰ってきた母さんが、
「アトラスちゃんのお嫁さんを連れてきたのよー」
と、開口一番に嬉々としていった。
母さんの手には小さな動物用のケージがあり、その中には新たに家族として加わることになる幼いリリーさんがいたのだった。
その時に、一体どういう経緯でこの子がここにいるのかと問うた僕に返ってきた母さんの返答は次のようなものだった。
「うーんとねー。母さんいつも通りに亮くん(注:父の名前)の仕事にシベリアのとある森の生態調査についていったんだけどねー。ベースキャンプで夕食つくってる時に地元の方から森の中にいい食材があるって聞いたから母さん取りに向かったのよー。そうしたらねー、森の中をかわいいお尻をフリフリしてとことこ歩いてるこの子の後ろ姿を見かけてねー。とりあえず抱き上げてしちゃったのよー。それでー、周りに家族や仲間がいないか探して見たんだけどー、文字通り一匹狼みたいだったからー。この子に家族にならないか聞いてみたらー、いいよーって言ってくれたからーじゃあリリーさんねって名前をつけて一緒に帰ってきたのー」
のんびりと間延びした独特の喋り方で、にへらと微笑を浮かべて話す、母さんのツッコミ所のありすぎる説明を僕と凛姉は額に手をやって聞いていた。
以上回想終了。
舞台はリビングに、嗄月に両親について聞かれたところへと戻る。
「母さんは人助けが『趣味』というか『行動理念』みたいになってる人でね。若い頃からいろいろなところでボランティア活動をしてて、人助けの役に立つからという理由で医師免許をとっちゃったりするような行動力を持つ人間なんだよ」
母さんの名前は葉山百合子。かなりの童顔で、のんびりした口調とぽやぽやした雰囲気も相まって年齢相応に見られる事がまずない外見をしている。
父さんの名前は葉山亮。大学で教授職についているが動物学者としての顔を持ち、そちらにばかり邁進しているので教壇に立つと学生が珍しがるという珍獣の様な扱いをされている。
「母さんは某お持ち帰りーの台詞の少女よろしく可愛いいものには目がないのだけれど、本当にお持ち帰りしてきたのがリリーさんというわけね」
「よく怪我をした動物を治療のために持ち帰ってくることはあったんだけど、治ったらまた自然に帰してたから、家族にするからと連れてきたのはリリーさんだけで最初は驚いたのをよく覚えてるよ」
凛姉と僕が母さんについての説明をすると、
「お優しい方なのはわかりましたが・・・」
「神様を可愛いいからと持ち帰るなんて凄い方なの・・・」
変に感心している宥月と嗄月の反応が返ってきて苦笑する。
「お持ち帰りされた本人としては、実際どんな感じだったのリリーさん?」
背中にもたれ掛かるリリーさんに詳細を尋ねる僕。
「百合子に会った日か・・・そうじゃのうよい機会じゃし話しておこうかのう」
こうして僕達はリリーさんから、母さんとの出会いの真相を聞くことになったのだった。
両親の設定が・・・修正入るかもですが進めます。次こそは早めに届けたいです。
読んでいただきありがとうございます。