エピローグ
なんだかんだ言いながらも、その後は颯太の家に入り浸る俺ではあったが、来ると毎回ついベッド下を覗いてしまう。
幸いあれ以降ベッド下には包丁を持った女も男もいない。多分次回また同じ事があれば、普通に強盗か颯太のストーカーだ。
後に就職時期に不動産屋を数軒回ることになったが、たまにある「ほぼ新築なのに家賃激安物件」だけは避けて通る癖がついた。颯太は平然とそれを勧めてきて俺に殴られている。お前のような強靱な精神(褒めていない)を持っていなければ無理だ、それは。
俺は隣に座っている幼なじみを睨み付けた。
「お前、まさかまたメリーさんに会いたいのか?」
人外に惚れるとかそれだけはやめてくれ。お前の友達ゼロになるぞ。俺が逃げるから。
「……」
そっと視線を逸らす颯太だったが、少し肩が震えている。ああ、単に俺をからかっただけか、この野郎。
拳を握りしめる俺に颯太はついに笑って宥めてきた。
「悪い悪い。お前の反応が面白くてつい」
全然フォローになってないので、もう一度殴っておいた。
「……あの」
眼鏡をかけていない不動産屋さんが心配そうに声をかけてきた。俺ははっとその方向へ向き合うと頼んだ。
「とりあえずベッドがなくて、布団で寝られる家でお願いします」
それからメリーさんに会うことはなかったが、眼鏡鈴木がニヤニヤとお得物件情報を持ってきたりするため、塩をまいて追い払うという一幕があったことを追記しておく。
包丁を持った女の人がベッド下にいたら怖いよね!
というだけの話でしたが何故かこんなに長くなりました。
無事完結してよかったです。読んで頂きありがとうございました。