江戸時代にタイムスリップ 「夕方:風呂・髪結床・夕食――身繕いと家族の時間」
(夕刻。江戸の町にオレンジ色の光が差し込む。仕事が終わった男たちが帰ってきて、長屋の戸口に笑い声が戻った。)
シュペルク「あっ、みんな桶を置いて出てぞ! ……どこ行った?」
フィビアス「銭湯です。裏長屋には風呂はありません。薪代が高い、火事の危険も大きいから」
フローレン「だから『町の湯』に通っています。湯屋は社交場でもあるんだよ」
(のれんをくぐると、板張りの脱衣場、湯気の立ちこめる浴室。浴槽には熱い湯。)
シュペルク「おぉっ! 熱っ! ……でも気持ちいい! あー、生き返る……」
フィビアス「湯に浸かって体を温めたあと、上がって湯で体を洗います。ぬか袋を使って。忘れたら貸したこともできました」
フローレン「毎日のお風呂は『誇りを流す』以上に、気分を整える会見だ。……熱湯だけど」
(湯から上がると、男たちは二階の休憩所へ。将棋盤を囲み、煙管をくゆらせ、笑い声が広がる。)
シュペルク「ここ、すっごいコメディだな! ……もう“風呂酒場”みたいな雰囲気だ」
フィビアス「そうですね。情報交換や交渉の場でもあります。銭湯は、町人社会のハブでした」
(帰り道髪。結床に寄る男の姿。)
シュペルク「あれ、床屋?それでも髷結ってる?」
フィビアス「髪結床。頭頂部の『月代』を剃り、残りを髷に結う。自分ではできないので、定期的に通う必要がありました」
フローレン「ここもまた“社交場”。一時で将棋や草双紙を読んで客もいる。身嗜みと娯楽が広がっている」
シュペルク「……髪結い、それなり高いけどね」
フィビアス「二十四文、今の数百円程度。庶民でも通える範囲です」
(長屋に戻って、女将が夕餉の支度をしている。香ばしい味噌汁の匂い、茶碗によそう冷飯。)
フローレン「夕飯は粗食。冷飯に漬物、茶漬け程度。外食屋台に寄る男も多かった」
フィビアス「一人暮らしなら、そば屋や惣菜屋で除くのが普通。居酒屋も有名でしたから」
シュペルク「でも……こうやってみんなで食べるの、いいな。質素でもあったかい」
フローレン「質素でも“共有”がある。ここで今日を締める。……そして夜の娯楽へ」
(外からは、寄席小屋の太鼓の始まり、江戸の宵を呼んでいた。)