第13話 滅亡するらしい
「国が……滅亡……? なぜ?」
どんな出来事を経れば、そんな悍ましいルートに行き着くのだろうか。え、業深すぎない? 国民は悪役令嬢さんに何をやったの??
「はい。実の家族から冷遇され、乙女ゲーム内のヒロインに陥れられ、愛する婚約者───には裏切られたうえに濡れ衣を着せられ、その上誤った情報から暴徒化した国民から石やゴミを投げられる始末。そうして絞首台に立たされた瞬間に、彼女を愛するドラゴンの王が現れるんです。ドラゴンの怒りを買ったストレリチア王国はドラゴンの手によって、天候不順による不作、天災に続く天災……滅亡の一途を辿るわけです。」
うわ、裏切るのウチの実弟か……。ポジショニングとしては……舞台の国の第一王子だもんね、まあありそう。これは巻き込まれ被害が尋常じゃなさそうだ。
「その間、ドラゴンと悪役令嬢は?」
「どっかでイチャイチャラブラブしてます」
「悲しすぎる……」
確かに悪役令嬢さんの身の上には同情するし、我々に何の非も無かったと言えば当然嘘になるけれど、流石にこれは酷すぎる。
人の心がないのか?
……ああ、ドラゴンだからないのか、人の心。
「原作中、私は?」
「……わからないんですよね、それが。作中ではどこかの国に留学しているらしくて……国王陛下も王妃殿下もご健在ですし。でも、死んでるってことはないと思います。」
どこで何をしているかはわからないけど、生きてはいるみたい? 下手に原作に記載されてなくてよかった……。
けれど目の前の危機は変わらない。
なんの関わりもない場所──実弟が関わってるのはそうだけど──の色恋沙汰で、国が滅ぶ?国民みんなまとめて餓死したり天災で死ぬの? そりゃあないでしょ。
話によればドラゴンは悪役令嬢さんの“清い心”を気に入ったとか何とからしいけど、復讐とは言え国民みんな皆殺しとか気でも狂ってるのだろうか。
そもそも、そんな凄まじい復讐劇を繰り広げる悪役令嬢さんの清い心って何さ。
石を投げられた? けれど国民全員が投げたわけじゃあないだろう。
苦しかったのも、辛かったのも、絶望したのも、痛いほどわかる。
所詮他人事だ、そんなものは綺麗事だと言われても仕方がないかもしれない。
けれど、“国家諸共皆殺し”は違うんじゃないだろうか。
そこまでの結論に辿り着いて、はっと気がつく。これだけは今すぐ確認しておかなければならない。私は居住まいを正し、アリス様にしっかりと向き直った。
「その……悪役令嬢ってのは、まさかアリス様じゃ……」
「それは違います! 別人です!」
アリス様がやや喰い気味に否定した。
まあ、そうだよね、うん。
私が見たのは上っ面だけだけど、ヴィオレット辺境伯家の家族仲は悪くはなさそう。むしろ、良い方なんじゃないかと思う。
悪役令嬢さんはご家族に冷遇されていたらしいから、たぶん違うだろうとは思ったけれども。
「悪役令嬢──この世界のヒロインは、シャルロット様…タゲテス公爵家三女のシャルロット・タゲテス様です。」
我が国には公爵家が2つある。1つは十数年前に王家から分裂した、お父様の弟──私から見たら叔父さまに位置する、チェイス様が当主となっているアイリス家。
もう1つは初代国王陛下の弟君の血筋であり建国当時から続く名家、タゲテス公爵家。
アイリス公爵家は、公爵本人の柔軟な発想と公共事業、および元フリージア王国王女でいらっしゃる公爵夫人──エリザ・アイリス様の実家からの支援も相まって目覚ましい進展を遂げている。
一方のタゲテス公爵家は最近目立った動きも功績もなく、身を潜めているような印象だ。数代前は栄華を誇っていたが、今は見る影もない。もちろん貧乏だとかそう言うわけでは無いが。緩やかに滅びの道を辿っているのか、それとも何か腹に一物抱えているのか。
悪役令嬢さんの実家だと聞いた今では、十中八九後者だと思っているが。
とにもかくにも! アリス様が悪役令嬢さんではないって事は、ひとまず安心だ。そう、胸をなで下ろした次の瞬間だった。
「私は悪役令嬢なんかじゃなくて、むしろその逆で。乙女ゲーム内のヒロイン……悪役ヒロインなんです。」
何故、何一つ解決していないというのに、次から次へと面倒事が舞い込んでくるのだろうか。
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