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黒衣の奇術師、メロ・フローその1


「っと、言うわけで本日皆さんに集まって貰ったわけだ!」



 ある辺境の村、ギルド内の会議室、十数名の冒険者を集め初老の職員ことギルド支部長はボードを叩き、説明している。



“緊急殲滅クエスト、火蜥蜴殲滅・中央、辺境冒険者、合同作戦について”



「犠牲となった冒険者の為にも我々、地元民がたち上がり、団結する時なのだ!」



 おー、激に呼応し雄たけびを上げる冒険者たち。その中に一人、周囲の者たちを見やりしらけた雰囲気の者がいた。その者は思う。



 以前から問題視されていた南西の山を越えた先の洞窟にて火蜥蜴が大量発生していた件、先日ぶらりとギルドを立ち寄ったという旅の冒険者に、採集クエストと偽り発注し見殺しにしたくせに、何が犠牲者か、ばからしい。あんたが殺したんだろ、偽善者が。



 その者の名は、メロ・フロー。“黒衣の奇術師”その二つ名がつけられている冒険者だ。二つ名とは、階級に関係なくギルド内で“特異な能力者”と認められると押し付けられるはた迷惑な呼称である。



「作戦決行は中央の冒険者様方一行が到着し、次第とする。同郷の者がやられたときっと奮起してくださるはずだ、皆もサポートをよろしく頼むぞ」



 蓄えたあごひげを撫で職員は黒い笑みを浮かべる。いや、メロがそう見えただけかもしれないが。



「質問よろしいでしょうか、支部長」

「発言を許可する。なんだね、何か分かり辛い点でもあったかね」



 駆け出しだろうか、若い男が挙手し、発言する。



「この場に“黒衣の奇術師”様もおいでになられているということは本作戦に参加してくださるという認識で間違いないでしょうか?」

「もちろん、村の守護神“黒衣の奇術師”にも参加してもらう!」



 おー、さらにボルテージが上がる室内。「めんどくさ」小声でつぶやくメロ。



 “黒衣の奇術師”ことメロ、彼女の階級は12階級中、上から7つ目、上二つが勇者と従者専用の為、実質、中級冒険者だ。地方ギルドとはいえ、彼女より上位の冒険者は常駐している。しかし、その冒険者でさえ彼女には一目置いている。なぜか?それは二つ名“黒衣の奇術師”この名がつけられる要因になった彼女の“天職”ゆえである。


 “天職”とは、天が人に与えた才能、生まれながらに人は才能を持って生まれてくる。本人の趣味嗜好に影響されず、好むと好まざるによらずだ。この世界ではあたりまえなことだがこの“天職”がその人の能力に影響を与えてしまう。生まれつき魔法が扱えるもの、使えないもの。強固な肉体を持つことを約束されたもの、そうでないもの。


 やはり、人は怠惰なもので最初から自身にその才能があることがわかるなら、その分野に力を入れてしまうのは仕方がない、努力は尊いものだが見返りもほしいと思うもの。そのため生き方にまで影響を与えてしまう、ゆえに“天職”なのかもしれない。メロもその一人だ。



 “道具生成合成アイテムメーカー”という“天職”を持ち生を受けたメロ、幼少の頃よりその才能をいかんなく振るった。



 おままごとで泥団子を作成、ごはんと見立て微笑ましい光景になるはずが、素材の土、水が“道具生成合成”を持つメロの魔力に触れることで性質が変化、本人も意図しないマジックアイテムを作成してしまう、こんな出来事がしばしばだった。


 子供とは無邪気なもので好奇心の塊、村中の珍しいもの、目新しいもの、とにかく興味を引く物がメロの玩具、同年代の子相手にマウントをとるガキ大将の方がよっぽど可愛げがあると感じさせてしまう大活躍をした。


 そのかいもあり、“回復薬ポーション”、“解毒薬アンチドーテ”など薬学を修めた者が正規の手順、工程で作成するものを、メロは興味のある玩具感覚で作ってしまう。その異様な光景に“神童”“奇才”と村内でもてはやされた。が、“天職”のコントロールを身に着けるのには至らなかった、今でも意図したものが必ず作れるとは限らない、結局はトライ&エラー、経験で作成しているのが実情だ。


 幼少時、かけた迷惑に報いるためメロはこの村の為に力を振るっていた。本意ではない、いたずらにより発生した損失をギルドが肩代わりしていた。つまりメロにはギルドに借金という借りがある。これを返済するためこの村に常駐し、自身の才能を振るっているのだった。



「…、メロ君、聞いとるのかね?この場の冒険者を代表して音頭を取ってくれんかね?」



 支部長がメロに指図する、「わかりました~」あまり乗り気ではないが従うほかない。この支部長こそが幼少期、メロを庇った張本人であるからだ。しかし、美談ではない、単純な話だ。金の匂いがした、それが理由だからである。生かさず殺さず、好待遇とはいえないまでもひどい扱いをされたわけでもない、まあ、借金のかたに身売りされるよりはましだったので感謝はしているが、それだけだ。正直、恩には報いたと思っている、それだけ村には貢献した。


 ああ~、この村、滅ばないかな、そしたら気にせず出ていけるんだけどな~。そんな思考をしつつ、腕組みし顎鬚を撫でる支部長の横に並ぶ、なに話せばいいかな、ローテンションさらして士気下げてもあれだしな~。


 冒険者たちはメロに熱いまなざしを向けている。激励の言葉でも期待しているのだろうか、キャラじゃないし勘弁してほしい、だんまりを通せる場面じゃないし、本当にめんどくさい~。メロは村の為にとこき使われ続け、極度のめんどくさがりに成長してしまっていたのだった。


 その熱量に差がある空間に侵入者が現れた。


村ではナナ達は死んだと思い込み次なる作戦会議をしています。

その場面から始まったわけですが、三人はいつ登場するんですかね。

(あからさまなひきで終わったのでお察しですが)


ここでお知らせを一つ。


次回投稿日は年明け、2日、3日あたりからになります。

仕事納めならぬ筆休め機関に作者はいります。


投稿はお休みしますが執筆はちょこちょこ続けますので

次話も文章量多めの投稿ができると思いますのでお待ちください。


それでは少し早いですが皆さま、良いお年を

ではでは~

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