再誕
微睡みの中…暖かなものを感じる。生きとし生けるものが最初に受け、感じるもの。安心感とは生命の安寧において最も重要なものである。
「…ん」
幼子は目覚める。目に入るのは僅かばかりの光、そしてそれに照らされ水面に写る月光の如く輝く銀の糸
「起きたか」
…なるほど、自分はどうやら死ななかったようだ。
そこで''少女''は自分が巨狼の体毛によって包まれているのに気づいた。
「…''私''はなぜ生きている、食われたはずだが」
彼女最初に疑問を問うた。
「ああ、食った。確かに食ったとも、血肉ひとつ残さずな。我が娘よ。」
巨狼は答えた。更なる疑問を彼女に与えて、
「なるほど、わたしをうみなおしたのか。」
彼女は瞬時に悟る。彼女の脳は正常に冷
静に役目を果たす。…言葉はたどたどしいが。
「話が早いな、だがまだ貴様は幼子、故しばし眠れ」
ーまだ私は…。
彼女の意識は闇に落ちた。
次に目が覚めた時、彼女は空腹に襲われた。
「…腹が減った。あの狼は…いないのか。」
彼女が立ち上がった時、背中に気配を感じる。とっさに警戒するも、
「っ!……尻尾?」
そうしっぽ、巨狼と同じく銀色の毛。ならばもう一つ
「…耳も、か。まさか自分が獣耳っ娘とはな。事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。」
ーさてどうしたものか、…それにしても寒い。洞窟のせいか?
「いや、服か。」
裸、そうすっぽんポン。紛うことなき…だ。ならば服をないなら布でも…。そう考えた時。
「帰った、」
洞窟に差し込む光が消える。出入口を塞ぐほどの巨体の持ち主など1人、いや1匹か。
「母様!おかえりな…さ、い…。」
自分の口から出た言葉に戸惑うことなどあっただろうか。ないなら今この瞬間がそうだ。
「ああ、記憶が戻ったか…、まあ頃合よな。じき馴染む、暫く大人しくしておけ。」
「な、まさか!?」
「子育てには邪魔でな、しばしの間記憶を閉じさせてもらった。」
…思い出した。いや、母様の言葉を借りるなら馴染んだということか。
途端に顔が熱くなる。自分の恥ずかしい幼少期を見せられているようなもの。
「フハハハハ!愛いやつよ!ついこの間まで私の後ろをぴったり離れなかったのだがな!」
「ゆ、言わないで下さい母様!」
「いやな、お前が可愛いのが悪いのだ。どうだ馴染んだか?体は、」
「問題ないです…ふん!」
「そう拗ねるでない、腹が減っているだろう。飯にする。」
そう言って巨狼は大きな鳥のような動物を取り出した。
「今日は鳥肉ですか?」
「お前の好きな、な。」
「えへへ、」
そこには狼の親子の姿があった。
ちなみに2年ほど経過しております。