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トリコロール  作者: そらみみ
【くろ】
17/20

深く捩じれた緇の人形師たち


あの奇妙な出来事を語るには、まずあの方のことから始めるのが良いでしょう。


あの方は好事家の間では有名な人形師でありました。

あの方の作品は、どれもとても人々に愛されております。

あの方が人形師として大成する前。

学生だった時に作った作品に、"色彩の少女たち"と呼ばれる三部作がありました。

それは、魂が宿っていると言われるほど、美しい娘達でありました。

純粋に透き通る硝子細工。

緻密に焼き上げられた陶磁器。

精巧に彫り上げられた石膏。

あの方はその三人の娘を、卒業で別れ別れになるクラスメイトに贈りました。

硝子職人には青の少女を。

陶芸家には赤の少女を。

彫刻家には白の少女を。

そうして四人の男達はばらばらになったのでありました。

けれどもお互いに、少しずつは交流があったのです。

実際に、その奇妙な出来事が起こったのですから。

きっかけは、やはりその"色彩の少女たち"でありました。

何の拍子か、その人形の話題がぽろりと人々の口に上ったのです。

それからはまるであっという間だったと記憶しています。

躍起になって人々は人形を捜し、その所在を探り当てました。

そしてとうとう、硝子職人の家にある男が訪れたのです。

その男は、年齢が両手に足りない頃の硝子職人の学友でありました。

そうしてあの悲劇の幕は、上がってしまったのです。

後の事は、皆さんご存知でしょう。

ある池から発見された、硝子と陶磁と石膏で作られた等身大の人形。

地域の博物館に展示されていたそれから、物言わぬ死蝋が転がり出たのは。

あの少女達があの方の元に引き取られてきたのは、池から人形のあがる、少し前のことでした。

少女達は皆一様に、主の不在を不思議がっていました。

勿論、私も、そうしてあの方も。

私はあの方の為に駆けずり回って、そうして漸く、すべての事を知ったのです。

もう二度と、彼らが戻って来ないことを。

私は少女達にもあの方にも、未だにこの話を伝えられてはいません。

あの方の元に戻っても憂い沈む少女達を見れば、どれだけ大切にされていたかは、解ります。

勿論、綺麗に手入れされた装いからも。

それは同時に、彼らがあの方をどれだけ大切な友人と思われていたのかも。

それゆえに私は、こうして口を噤んでいるのです。

それが良いことなのかも解らないままに。

どうか、どなたかそっと私に教えてください。

私がどうするべきなのか。

いつか帰ってくる彼らを待ち続ける少女達とあの方の為にも。



「そんなところで、どうした? おいで」

人形師が呼び掛けると、じっと外を眺めていた黒猫はくるりと振り返って、迷いを振り切るようになあんと鳴いた。


カラクリカラクリ

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