6話 まぞくです。
「魔族を・・・助ける、だと?」
勇者は私の言葉に心底不思議そうに首を傾げた。
やはり人間達は魔族は悪だと、本当の姿を見ようともしない様だ。
そもそも魔族を助けるという概念が人間にはないのだから勇者が首を傾げる理由も何となく分かる。
広間の端に避難しているユウは辛そうに俯いていた。
「貴方達は魔族を『悪』だと言う。 ですが、実際魔族が何をしたというんですか?
魔族はただ平穏に過ごしたいだけだというのに・・・。」
「何を、言っている。 魔族が人を傷つけたという話や、畑を潰したという話は、いくつも、あるんだぞ! それを、魔族は悪くない、と、庇うのか!?」
既に勇者へと放っていたカマイタチは止まっており、息を荒くしながらも勇者が声をあげた。
勇者の言葉を予測してした私は特に焦ることもなく言う。
「それは本当に魔族がやったのですか? 貴方が実際に見たのですか? それがただの噂話だと思ったことはないんですか?」
ただ私は不思議に思ったことを聞くだけ。それだけで勇者が言葉に詰まり、目を泳がせる。
・・・人の心は脆い。
前世でよく思ったことだった。
「・・・だ、が実際ここ一年の間、魔族の被害にあったという話はよく聞くぞ!? それでも魔族のせいじゃないと――」
「魔族ではありません。」
勇者が対抗しようと口に出した言葉を私は遮って断定する。
勇者は今度は絶句して言葉を失くす。私はそこに更に畳み掛ける。
「私がこの世界にきてまだ数年です。 その数年の間、私はずっと魔族の皆さんを見続けていましたが、誰一人として聖大陸に行った者はいませんし、聖大陸に居る魔族の方達も人を襲ったことはないと言っていました。」
私がこの世界に来てから、その膨大な力を色んな物を『見る』為によく使っていた。
そして聖大陸に居る魔族の方達とは軽く挨拶程度の事はしていたし、以前色々な質問をしていたのだ。
人間を襲ったことはあるか。 危害を加えていないか。 人間にばれずに生きていけるか。
彼らは一つ一つ丁寧に答えてくれていた。
だからこそ断言出来たのだ。
「まあ人間のことです。 自分に都合の悪い事を魔族のせいにしているんでしょうね。
・・・さて勇者さん? まだ戦いますか?」
未だに困惑している勇者に語りかける。
結構重要な所を軽く言ってしまった気がするが、まあ気のせいだろうな。
少しして勇者が何かを決意した様に顔を上げて、震える声で言葉を繋いだ。
「僕は・・・」
そういえば勇者のくせに『僕』はないんじゃないかな。
『・・・好きにさせてやれよ・・・。』




