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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第百八章:中原の諸侯たちは次々に劉備へ帰順した

曹操軍の敗北は、北の諸侯へ瞬く間に伝わった。

ある城は門を閉じ、ある城は使者を出し、またある城は劉備の真意を確かめようとした。

孔明は城ごとに違う返答を用意する。

捕虜の中に、以前こちらへ逃れてきた少年の父がいた。

少年は父を見つけると駆け寄ったが、途中で足を止めた。

父の軍服は、昨日まで自分が恐れていた曹操軍のものだった。

父も手を伸ばせずにいた。

俺は二人の間に置かれた武器を拾って脇へ運んだ。

それだけで少年が走り出した。

父は膝をつき、何度も「遅くなった」と繰り返した。

勝ったという実感は、敵旗が倒れたときより、その抱擁を見たときに来た。

城門前の市場で、豆売りの娘が俺の手を払いのけた。

「軍が来れば、父さんの豆も全部持っていくんでしょう」

俺は買い付けを止め、兵の袋をその場で開かせた。

昨夜、配給係が代金を払わず麦を運び込んでいたのだ。

俺の監督不足だった。

兵を叱るだけでは済まない。

俺は娘と一緒に家を回り、取り上げた品を返し、足りない分は軍の備蓄から補った。

日が暮れ、娘は黙って小さな豆袋を俺に渡した。

「これだけは売り物じゃない。明日、兵にも食べさせて」

俺はようやく礼を言えた。

龐統は帰順を急がせない策を選んだ。

食料と治安を守れるなら、地方の役人をすぐに入れ替える必要はない。

劉備はそれを認め、乱暴な徴税を禁じる布告を出した。

炊事場では土地の豆料理を試すことになった。

料理人は俺の説明を聞いて眉をひそめた。

「言うのは簡単だが、千人分となれば別だぞ」

その通りだった。

少人数でうまくいっても、大鍋では火が均一に回らず、器が足りず、運ぶ途中で冷める。

俺は作り方を押し付けるのをやめ、料理人の手順を横で見た。

鍋を動かす順番、薪を足す時刻、出来上がったものを先に誰へ届けるか。

そこには長年の経験があった。

試作の一回目は失敗し、二回目は塩気が強すぎた。

三回目でようやく兵が笑顔を見せた。

「これなら毎日でも食える」

俺はその言葉を信じすぎず、翌日の残り具合も記録した。

食の改善とは一度うまい物を出すことではなく、続けられる仕組みを作ることだ。

帰順した町では、兵が市場で高値の麦を買い占めかけた。

俺は配給担当を呼び、軍の購入量を制限した。

商人は初め不満げだったが、次の日の朝には値が落ち着いた。

「兵が来ると物が消えると思っていた」と店主が言った。

俺は「そうならない軍にしたいんです」と答えた。

俺は中原の市場を調べ、兵の食事に使う豆や菜の種類が荊州と違うことを知った。

土地の食文化を無視して同じ配給を押し付ければ、農家にも兵にも負担がかかる。

そこで現地の料理人に教わり、軍用の献立を作り直した。

諸侯の使者が次々に到着すると、劉備の本営は戦場とは別の混乱に包まれた。

帰順の証として兵糧を差し出す者、領地の保証を求める者、昨日まで敵だった隣人を罰せよと訴える者。

龐統は笑顔を崩さなかったが、筆を置いたとき指先が赤くなっていた。

俺は使者の宿所で、兵と従者の食事を別にする案を退けた。

「同じ鍋でよい。ただし病人には別の柔らかい粥を」

身分より体調を優先するだけで、炊事係の仕事は少し簡単になる。

黄忠は旧敵の兵が持つ弓を点検し、魏延は各地の城門の鍵を預かった。

馬超は西方から来た使者に、馬を徴発しないと約束した。

趙雲は避難民の名簿を整理し、帰る村のない家族を見つけてきた。

地図の上では帰順の色が広がる。

しかし俺の記録台帳、まだ帰る場所のない名前が増えていた。

孔明はその記録帳を見て、「統一とは、色を塗り終えることではありませんね」と静かに言った。

敵陣では旧守備隊の不安が問題になっていた。

曹操の将も無能ではない。

こちらが変われば向こうも学ぶし、昨日通じた策が明日も通じるとは限らない。

だから龐統は相手の失敗を笑わなかった。

「人は負ければ考える。考える相手には、同じ答えを見せてはなりません」

孔明も同意した。

二人は意見が一致しているようで、考え始める場所が違う。

孔明は地形と兵の配置から考え、龐統は敵将が何を信じたいかから考える。

俺は二人の議論を聞きながら、必要な物資と運べる時刻だけを答えた。

できないことはできないと言う。

それが軍師の策を現実にする、俺の役目だった。

ある城では旧曹操軍の残党が門を占拠した。

孔明は火薬を使った威嚇を許可したが、城壁を壊さず、龐統が城内の商人と交渉した。

夜が明けると、門は内側から開き、関羽の隊が規律正しく入城した。

帰順を申し出た城の門前で、俺たちは思わぬ拒絶に遭った。

城兵は降伏するつもりでも、市場の商人たちは軍を入れたくないという。

以前の支配者も最初は税を軽くすると約束したからだ。

俺は劉備の印を押した免税の布告を示したが、誰も動かない。

そこで先に軍の荷車を城外へ下げ、買い物の代金をその場で支払った。

三日目、ようやく市場の門が開いた。

龐統は新しい役人たちを集め、「記録上の数字は人の暮らしから生まれる」と語った。

孔明は税の取り立てを収穫後に限る案を示す。

俺は土地ごとの作柄を記録する方法を説明した。

三人の仕事は違っていても、目指す場所は同じだった。

帰順した城から届いた米には砂が混じっていた。

徴発を恐れた倉番が、重さを増すために入れたのだという。

張飛は怒ったが、俺は先に米を洗う場所を作った。

「罰はあとで決められる。今夜の飯は待てない」

孔明は倉番を呼び、なぜそこまで追い詰められたか尋ねた。

倉番は兵に家族の食料を奪われたと答えた。

劉備は返還を命じた。

天下が広がるほど、命令は末端で別の形に変わる。

俺たちは勝った城にも監督が必要だと知った。

帰順した町の子供が俺に「明日も市場は開くの」と尋ねた。

俺は頷いた。

「開けるようにする」

その約束の重さは、どんな勝利の報告よりも胸に残った。

初めて市場に入った張飛は、干した果物の値段を聞いて声を上げた。

「こんなに高いのか!」

店主は怯えたが、張飛は財布を探って小銭を数え、「なら一つだけだ」と真剣な顔で買った。

龐統が「将軍が値切らぬとは」と笑うと、「兄者に叱られたのだ」と張飛は耳を赤くした。

店主は小さな一粒をおまけした。

商人の一人が、昨日まで曹操軍へ品を納めていたことを告白した。

兵は顔をしかめたが、劉備は「それで家族を養ったのだろう」と答えた。

俺は売買の記録を破棄せず、今後の取引を公正にするため残した。

過去を責めるだけでは市場に明日の客は戻らない。

店主は釣り銭を一枚ずつ俺の手に載せた。

商いが戻るには、勝利の知らせより小さな信用の積み重ねが必要だった。

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