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第11話:ノウレスの影



 


地表に近い崩壊都市《第十三区》。

かつては都市機能の中枢だったこの地は、今では瓦礫とゾンビの巣窟となっている。


その中に潜む、もうひとつの“知性”――


「ようこそ、《ノウレス》の領域へ」


 


現れたのは黒衣の少年。年齢は十代半ばに見える。

だがその瞳は、何千もの“記憶”を飲み込んだ深淵のようだった。


「君がクロか。ずいぶんと興味深い進化をしているな」


 


「……お前が、ノウレスか?」


クロの問いに、少年は首を横に振る。


「僕は“カナト”。ノウレスの代弁者さ。そして――

君の《兄》の記憶を受け継いでいる」


 


「……兄?」


クロの目が見開かれる。

胸の奥で、何かが軋んだ。過去の断片。失われた名。


「君の兄は、かつてZウイルスの治療に取り組んでいた科学者だった。

だが、彼は死に、僕がその“記憶”を継いだ。……彼の知識は、ノウレスの一部となった」


 


サクラが低く警戒音を鳴らす。


「……気をつけて。こいつ、“喰ってる”。他人の記憶を」


 


「そう。記憶を喰らい、統合する。それが僕ら《ノウレス》の進化の形だ」


カナトは静かに手を広げる。


「君たちは、記憶を守ろうとする。だが、なぜだ? 記憶は痛みだ。重荷だ。

進化には、不要なものだ。――僕たちは、それを切り捨てる」


 


クロのアーマーが音を立てて硬化する。

彼の血が、怒りと共に滲み、黒い鋼となって腕を覆っていく。


「お前は、兄の記憶を……!」


「そう。彼は君を助けたがっていた。だが、死んだ。

だから僕が代わりに導こう。“記憶”など捨てて、完全になれ」


 


「ふざけるな」


 


クロは叫んだ。血の装甲が爆発的に展開する。

ミナの記憶、兄の微笑み、そして仲間たちの声。


――それが彼の《進化》を、加速させた。


 


「俺たちは、記憶を捨てて進むんじゃない。記憶と一緒に、生き延びるんだ!」


次の瞬間、アーマーから翼が生える。

黒い血で編まれたそれは、旧世界の亡霊たちに告げる“反逆の羽根”。


 


カナトは目を細め、嬉しそうに笑った。


「いいね。君こそ、次代の鍵だ。……さあ、試そうか。君の“選択”を」


 


> ――戦いは、記憶の海へ

――進化の先にあるのは、過去か未来か




 


そして戦いが始まる。

記憶を守る者と、記憶を喰らう者。

人類の“次”を決める、最初の衝突が。


 



---


次回予告(第12話案)


第12話「血の翼」

クロは新たな進化形態“血翼ブラッドウィング”を得てカナトと交戦。

しかし、戦いの最中に“兄”の記憶が断片的にフラッシュバックする。

クロの選ぶ道とは――。





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