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メボとメラ


「シンと一緒だったんだから、いいじゃん? 」


「えー、そういうのアリですか?」


ヒナタが口を尖らす。


「じゃあ、シンさんと一緒なら外泊OKですか?! 夜中に遊びに行ってもいいんですか!!」


「そ、それは東京都条例のなんだらかんだらで駄目だよ」


「あ、奏さん、おかえりなさい。シンさん?! お久しぶりですっ」


お掃除ワイパーを床に滑らせながら、トモキもやってくる。


普通にお掃除ワイパー滑らせてるだけで、やけにカッコいいのなんだろう。

このままCMに出られそうだけど。


「元気? どう、もう慣れた?」


シンがにこやかに尋ねた。


「はい、いたれりつくせり快適すぎて……あっスリッパをどうぞ」


トモキ、さっとスリッパをシンの足元へおく。


「さぁ、ちょっとお茶でも飲んでってよ」


姫ちゃんが手招きをする。


「姫ちゃん、もう遅いからいいよ?」


「やだ、何言ってるの? 私だってシンくんと一緒にお茶、飲みたいわよ?」


姫ちゃんが、シンをリビングへ連れていく。


「ありがとう」


私はお掃除ワイパーをエントランスの床に滑らせているトモキへ言った。


すると、トモキがきょとんと私を見ているので「綺麗にしてくれて」と付け加えた。


「そんなお礼なんておかしいですよ。自分らが使わせてもらっているんで、あたりまえのことじゃないですか」


え、なんかすごい良い子だな、良い子過ぎて、嘘じゃん? とか思っちゃう。


「だからぁ、門限……」


ヒナタがまだ口を尖らせている。


「わかったよ、今度から守ります、門限」


「心配したんですよ、僕たち。連絡しても出てくれないし」


「えっ、そうなの? 」


スマホの着歴を確認すると、姫ちゃん、トモキ、ヒナタ、各々から何回も連絡が来ていた。


「ほんとだ、ごめん」


もしかして、みんな私のことを心配して、待っていてくれたのか。


「それは?! どうしたんですか?!」


腕の傷を見てヒナタが眉間に皺を寄せる。


「痛そうですね」


トモキも私の顔と傷を心配そうに見た。


「なんでもない。ちょっと引っかけちゃっただけ」


「傷、残りそうですけど……そういうの意外と消えないんですよ」


「あっ、ほんとに大丈夫です」


こんなにたくさんの人から心配されるのなんて、慣れてない。というかほぼ初めてだから、なんか気恥ずかしいではないか。


私は二人の間を抜けてそそくさとリビングに向かった。


☆☆☆☆☆


リビングのソファに5人座ってお茶を飲む。


お茶と言っても、各々の好みで


ヒナタはカフェインレスの緑茶、トモキは甘いミルクティ、私はソイラテで、シンは普通のラテ、で姫ちゃんはストレートの紅茶。


「で、今のところメンバーはまだ、3人ですか?」


ヒナタは隣に寝そべっているハニタロウの背中を撫でながら私に聞いた。


「そうなんだ、ちょっと予定より難航してて、ごめん。もし、知ってる人で紹介出来る人いたら教えてくれる? 学校とか、地元とかで」


「うーん」


ヒナタは天井を仰いで考えている。


「いません」


ヒナタがきっぱりドヤッて答えた。


「俺のまわりにも、いないですよ」


「そっか……案外難しいなぁー、キャスティングって」


「あっ、はい!」


トモキが何故か手を挙げる。


「はい、トモキどうぞ」


「原宿とかに行って、スカウトしたらどうですか?」


トモキは大きな瞳をキラッキラさせながら答えた。


「原宿か……僕行ったことない、行ってみたい……」


ヒナタがボソッと呟く。


「そんなの時間の無駄だよ。ビジュアルだけ良くてもしょうがないし」


私がそう答えると、トモキは「ああ」と頷いた。


「例えば、今はメインボーカルのヒナタ、サブボーカルのシン、メインラッパーのトモキ。あと必要なのはメインダンサー、センターで踊れる人と、それともう一人ラッパーかサブボーカルだな」


「メインボーカル……僕、メインボーカルなんですかっ!?」


「うん、そう。そのつもりで頑張らないとね。グループの中で1番歌が上手い人、他にヒナタより歌える人はいないっていう意味だから、いつシンに奪われるかわかんないよ」


「うわぁーーー。ヤバいよ、ハニたん。僕、メインボーカルだって……」


ヒナタはくしゃっと破顔し、ハニタロウを抱き上げた。


「楽しみだわ、どんなグループが出来るのか」


そんなヒナタを姫ちゃんが微笑ましく見つめる。


「ボーカルラインが安定していれば、6割は出来上がっているも同然。残りのメンバーも妥協せずに探しましょう」


シンの言葉に私は頷く。


「メインダンサーか……ダンスが上手い人ならたくさんいそうですけどね」


「それだけじゃね、バックダンサーとは違うから」


トモキの言葉に私が返すと、彼は頭の上に疑問符を掲げこちらを見る。


「私が求めているのは、ダンスの技術だけじゃないの。チームの『動』の部分を担当するわけだから、圧倒的なカリスマ性と集視力……」


そこまで言って気付いてしまう。


私のなかで、ユウト以外にそのポジションに値する人物がいなくて、今後も出会わないだろうってことに。



+++*+++*+++



※メボ (メインボーカル)

※メラ (メインラッパー)

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