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物語のはじまり

  ここは、草花が咲き誇る自然豊かな街、ファンシールの外れにある深い深い森の奥―――。


  薄気味悪い雰囲気が漂い、枯れ木には何羽ものカラスが止まり、低い声で鳴き声をあげていた。

  一本の道を進んだ先にあるのは、今にも崩れ落ちそうな古城だった。


  城の主である古の魔女は、自身の魔力が著しく低下していることに焦りを感じていた。

(このままでは魔力が底を尽きてしまう……。何か手を打たないと……)

  古びた本が何冊も並べられた、本棚の隙間に置かれた水晶玉に向かって、魔女は何やら唱え始めた。


「水晶よ水晶よ、私に教えておくれ。私がこの先も美しく強い魔女でいられるためにはどうするべきか」


  魔女の問いかけに水晶玉が答えるかのように、中に白い煙がモクモクと立ち込め、しばらくすると何かを映し出した。そこには……、1人の幼い少女が映っていた。


「この少女に何か特別な力でもあるのか……まぁよい。善は急げ、我が僕たちよ、この少女を探し出すのだ!」


  魔女の合図で、枯れ木に止まっていたカラスたちは一斉に飛び立った。


「ただ単に少女を攫う……だけだと何も変わらない気がする。まずは、幸せな家庭を壊すことから始めようか。絶望を与えて、それから……」


  ふと水晶玉の方を見ると、煙の中には別の映像が流れていた。そこに映っていたのは、先ほどまでは少女だった姿が、大人の女性へと成長した姿だった。教会で子どもたちと歌を楽しんでいる様子や、祈りを捧げる様子を見て、何やらピン、ときた魔女。

(歌……教会……もしかすると、歌声に何らかの力があるのか。そうと決まれば……)


  魔女は急いで古城の地下へと移動し、中央に置かれた大釜に様々な素材を入れかき混ぜ始めた。仕上げに呪文を唱えると、大釜から出てきた煙に包まれ、魔女の姿から1人の若い女性へと姿を変えたのだった。

  大きな鏡の前で姿を見つめる魔女。

  すらりとした体型に藍色のドレスで身を纏い、ウェーブが施された長い黒髪には艶があり、切れ長の険のある目、赤い紅を差し、満足いく姿に変わることができたことで、魔女は上機嫌だった。

(この姿なら、どんな男性でも虜にできるわ……ただ、邪魔者がいては計画が台無しになるのよね)


  魔女は古城の入り口へと移動し、両手を2度叩いた。すると、どこからともなく現れたのは、全身黒づくめの男だった。頭には黒い布を被り、男の表情はわからない。


「我が主様。ご用件は何でしょうか」


  魔女の前に跪き、低めの声で問いかけた。


「貴方にお願いしたいことがあってね」

「何なりとお申し付けください」

「ふふ、頼もしいわね……この(ひと)を消して欲しいの」


  魔女が呪文を呟き、手のひらに現したのは、水晶玉に映った少女の隣にいた、母親と思わしき女性の姿だった。


「この女を……消す」

「そうよ。できない、とわ言わないわよね」

「はっ、仰せのままに」

「それでこそ有能な僕よ、期待しているわ」


  風を切るように男は去って行った。

(カラスたちの報告を待つ間に、他の準備は念入りにしとかないと)


  古城の中へと踵を返し、魔女は再び地下へと向かった。


  ―――数日後。

  カラスたちが古城へと戻って来た。


「(あの少女を見つけました)」

「(この森を抜けた先にある街に住んでます)」

「そう、有益な情報をありがとう」

「(そういえば、この間教会で何かしてたよな)」

「(してたしてた!みんな黒い服を着てた!女の子、泣いてた)」

「ふふふ、上手くいったみたいね」

「(何のこと?)」

「あなたたちが気にすることではないわ、さ、もうお行き」


  カラスたちを追い返すように手で払った。飛んでいく様子を見て、魔女はニヤリと笑みを浮かべながら小さく呟いた。


「待っていてね、かわい子ちゃん」


  魔女は正体を隠すように変装し、古城を後にしたのだった―――。

虎娘『歌声に想いを込めて 物語のはじまり』

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