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004 回復チートの王道

 ニャンコがニャンニャン♪して本当に俺は観戦していただけで終わってしまった。

 戦闘時間30秒無かった気がする。

 手足がおかしな方向に曲がったり血反吐はいたりしてはいるものの、一応全員が生きているからこれでもかなり加減しているのだろうか?

 ニャンコは息も切れていないし汗もかいていない。

 失敗キメラは目を目を見開き口をパクパクさせている。


 「全く番狂わせもない自明の結果になったね」

 「バカな……ありえん……いくら白虎族とは言え、完全武装の50人以上が素手の女1人に1分足らずで全滅?」

 「それもあからさまに死なない様に加減されてだね。加減に加減を重ねて手抜きまでされてる感じ」


 使った飛斬が全力なのか、全力の何割なのかは分からないけれど、最低限に見積もっても首狙いで使ってれば間違いなく1発で十数人の首がポーンってなるはずなのにやってないし。

 

 主に鎧や盾の上から攻撃してたけど、どちらかと言えば鎧や盾越しに押していたと表現する方が正しい気がする。

 まぁ、鎧も盾も引き裂かれたりへしゃげたりしてるけど。


 「世の中には武器や防具を装備した方が弱くなっちゃう者もいるからねー。重くて動きを制限するだけの重りじゃねーかみたいな」


 気と金属の相性は良くない。

 あまり強い気を使えないなら手足に金属の小手やら脛当てを付けるくらいならありだけれど、硬気功がある程度まで使えるようになると自分の体の方が頑丈になりあまり意味がなくなるらしい。

 なら良い防具は無いのかと言うとそうでもなく、1つだけ高位の気功使いにとっても有用な素材はある。

 それが絹だ。

 植物性の素材なら気との相性は悪くないので普通の布でも良いのだが、絹は高品質になればなるほど気の浸透率が高くなり、最高品質のものとなれば気をほぼ100%通す様になり、服に硬気功を自分の体と同じくらい使えるようになる。


 同じ理由で根とかヌンチャクなどの木材の棒系武器はアリだが、ある程度以上になると素手の方が強いので武器としての意味がなくなる。

 本来格闘家にありがちな間合いの問題も操気技に気弾、気槍、気刀などの遠距離攻撃手段があるのであまり問題にならない。 


 つまり!

 伊達や酔狂や趣味ってだけで性的なアピールの激しい最高級エロメイド服を着せている訳ではないのだよ!


 「知らなかったの?数の暴力は大抵の場合において優位に立つけど、数の暴力が在れば当然、質の暴力だってあるよ?」 


 ここまで理不尽な無双をする存在は滅多に居ないとは思うけどね。

 しかもニャンコは見た目が美麗過ぎて強そうとかどうとか以前に美貌に注目してしまうし。

 

 「さぁ負け犬……いや、負けブタの失敗キメラよ。900万出せや、おう?」 


 この失敗キメラ相手に容赦する必要は全く感じない。


 「グヌヌ……貴様、ただで済むと思うなよ」


 失敗キメラがグヌヌとか言うと本当に魔物みたいなんですけど。


 「思いっきり痛い目を見ているのはそっちだと思うけどねー。傷口が浅いうちに引いた方が良いんじゃないの?」

 

 引く気はないだろうね。

 引く気が無くなる様に挑発しまくってる訳だし。


 「そんな事より900万寄こせよ。本来必要ないけど転がってる連中の怪我治してやるから」


 失敗キメラがしかめっ面のまま懐に手を入れ9枚の白金貨を取り出し、こちらに投げてきた。

 散らばって飛んでるじゃねーか。

 散って落ちた金を拾わせる気か?

 だが甘い!

 先生に空中で回収して貰うわ!


 「な!?」

 「まいどありー。ついでに治療っと」


 先生が転がってる連中に取り付き、回復用の体液を分泌し、減った血や体力は回復させず外傷だけ治療。

 爪で引き裂かれた鎧が内部に尖って曲がり胸を引っかいている所とかも外側に押し出したり、曲がった鎧に挟まれたままでは腕とか治らないので、壊れた鎧は曲がった腕を治すのに必要な分だけ壊している。


 「触りもせずにこの人数を1度に治療?」

 「こんな高等魔法見たことないぞ!」

 「エリアヒールってやつか?」

 

 治療された者や周囲からどよめきや驚きの声が上がる。


 「空間魔法に回復魔法か」


 失敗キメラがうめく様につぶやく。

 

 「さぁーどうだろうね?」


 言ってる間にニャンコが戻ってきて俺の後ろに控えた。

 

 「ふん。貴様の態度が大きい理由は分かった」


 それは認めるけど、失敗キメラには言われたくないわ。


 「そう?意外と謙虚だと思うんだけどね」

 

 「ワシが雇ってやろう」


 え?

 えーっと……雇われる気はないか?とかじゃなくて上から目線で雇ってやる?


 「俺の品性が残念な事になってしまうので死んでもお断り。ビックリするほど全く自重しない自由人だと言われる事はあるけど、分別はあるの」


 記憶が無いから知らんけど。


 「と言うか、どこで雇えると思ったの?」


 「ふん。強がりもそれくらいにしておけ。回復魔法と空間魔法は認めてやろう。だがどちらも攻撃はできん」

 

 めっちゃできますが?

 先生がね。

 俺?言わせんなよ。


 「ペットの猫が割と強い方だよ?」

 「む……」


 え?忘れてたの?

 

 「ふっふん。それでも所詮は個人よ。ワシに雇われた方が賢明だぞ?ワシを敵に回さずに済むからな」

  

 これは失敗キメラなりの引き抜き交渉なのか?

 

 「ほー……敵に回すと具体的にどうなるの?」


 なんとなく察しはつくけどね。


 「そんな事も分からんのか?」


 失敗キメラが見下した視線を送ってくる。

 イラッと来るわー。


 「ワシの商会はこの街のほとんどの武器、防具を扱う店と取引がある。冒険者に必要な道具屋もだ。この意味は分かるな?」

 「分からない」

 「バカめ!それらの店と取引していると言う事は貴様に売らない様に圧力をかける事が出来ると言う事だ!」 

 「それは代理まで阻止できるの?適当な奴を捕まえて手間賃でも払えば解決するじゃん?ちょっとしたお使いでボロ儲けできて代理はおいしい。売る方も商品が売れて嬉しい」


 欲を出して持ち逃げとかする奴もいるだろうけど、その問題も解決する方法がある。


 「それこそ冒険者に依頼でも出してやれば終わりじゃん?」

 「ならば貴様の依頼を受ける奴にも売らん!」

 「依頼を出すのも代理を使えばよくない?どうやって識別するのよ」

 「グッ……そっそんな事をすれば貴様には経費がかかるはずだ!」


 こいつ、マジでバカだ。


 「俺がそんな小銭を気にする様な金銭感覚の持ち主に見えるの?たかって来る奴はムカつくからとりあえずシバくけど、正当な対価なら普通に払うよ」


 俺の金銭感覚が一般的なものから致命的なほど乖離している理由はお金持ちだからじゃなく、桁間違ってない?って勢いで働かなくても稼げるエリートニートだからだ。


 「湯水の如く稼げる奴が使わないと経済が回らないじゃん。経済学は失敗キメラには難しかった?ブタは鳴き声以外は無駄なく使えるとまで言われる素晴らしい経済動物なのに矛盾じゃね?」


 オークは人型生物に対して有害極まりないが。


 オークは結構な種類の上位種も存在するが、底辺のオークですら平均体長2m前後のブタを二足歩行にした様な存在でオスしかおらず、若い人型の女なら種族を問わず捕獲して手足を切り落とし、傷口を焼いて止血し、歯を抜かれ死ねなくして繁殖の苗床にする。

 孕ませる比率も異常に高く、オークに孕まされた者は3ヶ月で臨月になり出産する上に5匹ほど小型のブタもどきを生むことになり、高回転で出産させられ続ける。

 その上捕まった女の主食はブタの種な感じの白い白濁した大量の液体らしい。

 若い女性以外もかなり悲惨で割となんでも食べる悪食の癖に血も滴る生肉を好み、獲物を生きたまま踊り食いで食する事が多い。


 そして質の悪い事にオークの成長速度も理不尽なほど早く、食事さえ十分なら3ヶ月で生体になるとされ、凄まじい繁殖速度を誇る。


 そのためオークに捕まりそうな女性は自害を推奨されている。 


 繁殖力はファンタジー定番のゴブリン並みで底辺のオークですら体が大きく分厚い脂肪の下には分厚い筋肉に覆われており、痛覚も鈍く力も強い上に種族的に群れる事による優位性を理解しているので単体で居る事はまずないので、一般人が遭遇するとほぼアウト。

 底辺のオークですら十分に厄介なのに更に上位種まで存在し、上位種になると厄介さは更に上がる。


 この世界には定番モンスターと言えるゴブリン様がいらっしゃらない。

 ゴブリンの上位存在的なオーガも。

 その代りにオークにゴブリンの繁殖力とオーガの強さを足してみました~みたいな鬼畜なエリートオークが標準でゴロゴロ居る。


 肉が非常に美味な事で有名でもあるので、オーク肉は食用肉需要のエースだったりもするが。

 

 ……お互いに食い合っとるがな。


 「良かろう。ワシを敵に回した事を必ず後悔させてやる」

 「それは宣戦布告と言う認識で良いのかな?否定しないなら宣戦布告と認識するよ?」

 「ふん。勝ってにしろ!帰るぞ!役立たずども!」

 

 失敗キメラは踵を返し取り巻きを引き連れノッシノッシと言う効果音が出そうな歩き方で立ち去る。


 俺はブタ系って結構好きなんだよね。

 美味しいから。


 捕食対象ロックオン♪


 「じゃ、セリア。行くよ」

 「はい。ご主人様」


 臨時収入イベントがあったが、そのまま予定通りオークション会場を後にし、奴隷屋へと直行する。

 この国の奴隷販売は国営だ。

 法的には奴隷とは例外なく国が売る商品であり、免許を持つ国に認められた奴隷商人でなくては売買できない事になっている。

 譲渡も奴隷の登録手続きをしなくてはならないので奴隷屋を中継しなくてはならない。

 奴隷店も客のニーズに応じて4つに別れ肉体労働力を求める客用の若くて体格の良いオスの奴隷だけ扱う店とそれ以外のオスだけ扱う店、女だけを扱う店と若く見た目の良いメス奴隷だけを扱う店がある。

 俺がオークションで2体買わず、奴隷屋へと来ている理由は事前に目を付けている奴隷が居るからだ。

 一般的に見て質の良くない奴隷と、俺にとって良い奴隷は必ずしも一致するとは限らない。


 そんな訳で2体目の奴隷を購入するべくメス奴隷だけを専門に扱う奴隷屋へと到着。


 さすがに国営店と言うべきか、安い方のメス奴隷店なのだが、かなりしっかりとした作りの奴隷屋の店内へと入る。


 「いらっしゃいませ。お客様。どの様な奴隷をお求めでしょうか?」


 来店とほぼ同時にニャンコを見て数秒硬直していた中年のおっさん店員が何事もなかったかの如く話しかけてきた。

 俺はお子様なのだが、女神のごとき美貌を持つ存在感のあり過ぎる奴隷を連れているからかいきなり丁寧な対応だ。

 金を持っていると思われたのだろう。

 しっかりと店員の教育が行き届いていて、どの様な来店者に対しても同じ対応をする様にマニュアル化されているだけかもしれないが。


 「黒髪黒目で獣人の奴隷が欲しい。手足が欠損していたり、多少壊れていても構わないから安い奴隷が良い」

 「該当する奴隷は1体在庫がありますが犯罪奴隷ですし、右腕と右脚を欠損し、左半身が酷い火傷で焼けただれ、顔も左半分は火傷で酷い事になっておりますが、宜しいでしょうか?」

 「それで良いよ。幾ら?」

 「その前にお客様は犯罪奴隷の扱いについてご存じでございますか?」

 「所有者が勝手に犯罪奴隷を解放してはならない。犯罪奴隷の無断開放は罪に問われ、良くても多額の罰金が発生し、対象が重犯罪者の場合は自分が犯罪奴隷となる事もある」


 この世界には刑務所と言う物はない。

 その代りに犯罪奴隷がある。

 軽めの犯罪は罰金で済む場合が殆どだが、重犯罪は犯罪奴隷となる。

 もっとも、罰金の場合も払えず奴隷落ちする事が多々あるらしいが。


 「解放する場合は免責料と正式な手続きが必要であり、免責料は罪科に応じて増減する。ま、普通は要らなくなったら廃棄処分するらしいけど」

 「説明が不要な程良くご理解して頂けておられるご様子ですね。販売価格は500リルとなります」


 やっすぅっ!!!

 安いな、おい。

 500リルって5万円程度だよね?

 安いであろうとは思っていたが予想以上だ。

 何か裏でもあるのか?


 「安すぎない?」

 「そうでもございません。犯罪奴隷は値が落ちますし、壊れ方が激しいので比較的高値で売れるメスでも買い手が付きません。奴隷を扱う1月は在庫として持たなくてはならないと言う規定に基づき残っておりますが、正直に言わせて頂きますと売れる事は全く期待しておりませんでした」

 「1月過ぎたら廃棄処分?」

 「はい。4日後には廃棄処分の予定でした」


 おっおう。

 結構ギリギリだったのね。


 「4日後には廃棄処分する予定だった生ゴミが売れるだけありがたいって事ね」


 酷い言い方だが、そう言う事であろう。


 「そうなります。元々犯罪奴隷で仕入れ値も掛かっておりませんし、維持費以上で売れればこちらとしましては有難い話となります」

 

 維持費で微赤だった品が微黒になるなら商売的にはアリって事ね。

 

 「なるほどねー……ところで奴隷用の服はある?高級な奴だけど」

 「はい。稀にそう言うお客様もおられますので奴隷用の衣服在庫は高級メス奴隷店と兼用となっております」

 「その奴隷用の物は用意できる?」

 「問題ございません。女体を見るだけで合わせる事の可能なプロがおりますので」


 どう言うプロだ。

 いや、手間が省けて助かるが。


 「ただ、直ぐにとなりますと標準の品しかご用意できませんが、宜しいでしょうか?」


 そりゃそうだ。

 普通は四肢の欠損に合わせた服など売ってはいないだろう。


 「それで良いよ」

 「ソックス、ガーターベルト、下着、ネグリジェの色は複数ありますが、いかがいたしましょうか?」

 「全部黒で」

 「承知致しました。服のお代と合わせて4万500リルとなりますが、よろしいでしょうか?」


 服の値段の方が圧倒的にお高いな。

 5セットで4万リルって、事は1セット8,000リル。

 80万の服か。

 ちょっとしたブランド品レベルの値段だね。


 「良いよー」

 「お求めの品をお持ち致しますのであちらの待合室にてお寛ぎ下さい」

 「あいよ」


 別の店員に奥の部屋へと案内される。

 俺は部屋のソファーに腰を掛けたが、ニャンコは俺の後ろに立って控えている。

 私的な空間なら座った方が良いだろうけど、さほど時間が必要とも思えないしわざわざ座らせるほどでもないな。

 部屋にある俺が入ってきた扉とは別の扉からメイドが出てきてお茶を入れる。

 1人分だ。

 奴隷にお茶を出したりはしないと言う事か。


 メイドがお茶を入れ5分ほど待っただろうか?

 扉がノックされる。


 「どうぞー」

 「失礼致します」


 最初に手に折り畳んだ服を入れていると思われるかなり大きい鞄を持ったメイドが1人と、台車を押す男性店員が入ってきた。


 台車には買う予定の奴隷が乗っている。

 

 台車に乗せて運ぶとか完全に荷物扱いじゃん。

 いや、自力で歩けないだろうからしょうがないのか?

 切断されてる腕と脚が両方右だから松葉杖とかも無理だし。

 

 「こちらの品となります。返品は受け付けておりませんが本当に宜しいですか?」

 「構わないよ。世間の評価は4日後に廃棄処分される500リルで売れれば儲けものの生ゴミらしいけど、俺が求める理想的な奴隷の片割れだしね。需要と供給が生み出す値段が必ずしも普遍的な価値を示す訳ではないよ。素人目には木製のゴミにしか見えないガラクタでも、彫刻の名工から見れば千金の価値ある理想の素材になる事だってある」

 「そう言うものですか」


 回復チートで奴隷を回復させるのは王道であろう。



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