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皇女として育てられた皇子は、失われた王冠を取り戻す  作者: 未来


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姫巫女の謎

第三話 姫巫女の謎


謁見を終えた後。

レオニスは宮廷の客室へ案内されていた。

長い廊下を歩きながら、先ほどの出来事を思い返す。

エーデルヴァイド帝国第一皇女。

アナスタシア・エーデルヴァイド・フォン・アイゼンベルト。

未来視を持つ姫巫女でありこの世で俺に次ぐ血統を持つ存在。

「……面白い」

そう呟いた時だった。背後から足音が聞こえた。

振り返る。

そこにいたのはアナスタシアだった。

侍女も護衛もいない。一人だった。

「少しお話がしたくて」

静かな声。レオニスは肩をすくめた。

「俺も同じです」

二人は客室へ入る。扉が閉まった。

しばらく誰も口を開かなかった。

やがてアナスタシアが言った。

「貴方は変わっているわね」

「よく言われる」

「褒めていないわ」

「知っている」

少しだけ。

アナスタシアの口元が緩んだ。だがすぐに表情を戻す。

「貴方は自分の立場を理解しているの?」

「どういう意味だ」

「亡命者という意味です」

アナスタシアは言う。

「今の貴方は国も軍も持たない」

「それなのに国を取り戻すと言う」

沈黙。

二人の視線がぶつかる。その時だった。

アナスタシアの表情が変わる。

未来視。

突然流れ込む映像。

血。短剣。

そして――

レオニスの死。「危ない!」

アナスタシアが叫ぶ。同時に窓ガラスが砕け散った。

黒装束の男が飛び込んでくる。暗殺者。

一直線にレオニスを狙っていた。

速い、だが。レオニスは動じない。

「遅い」

炎が弾けた。轟音。暗殺者が吹き飛ぶ。

壁に叩きつけられた。さらに。

風、水、土

三つの魔法が同時に発動する。

完全拘束。数秒。それだけで終わった。

静寂。

アナスタシアは息を呑む。

(これも未来が変わった……)

本来なら死んでいたはずなのに。今の未来は違う。

レオニスは未来そのものを書き換え他初めての存在になった。


騒ぎを聞きつけた皇帝と貴族たちが集まった。

暗殺者は兵士によって連行される。

しかし

貴族たちの関心は別にあった。

「四属性……」

「本当に存在したのか」

ざわめきが広がる。その時だった。

一人の老侯爵がレオニスを見る。

「やはりアルカディアとエーデルヴァイド、大帝国である二つの国の血を持って生まれた唯一の存在」

沈黙。

「この大陸で最も高貴な血」

さらに。視線がアナスタシアへ向く。

「そして、それに次ぐ血統を持つアナスタシア殿下」

広間が静まる。

別の貴族も頷く。

「大帝国エーデルヴァイドと大貴族アイゼンベルト、そして巫女の力を受け継ぐ方」

「レオニス殿下以外皇女殿下に並ぶ者はおりますまい」

アナスタシアは何も言わない。ただ静かに立っている。

それが当然であるかのように。

皇帝が笑った。

「面白い」

「この場に二つの頂が揃うとはな」

視線が交差する。

レオニス。アナスタシア。

「アルカディア」

「エーデルヴァイド」

そして。

皇帝は続けた。

「王の血と」「姫巫女の血か」

その言葉に。

レオニスの眉がわずかに動いた。

姫巫女。

またその言葉だ。

先ほどから何度も耳にする。

「姫巫女?」

思わず口に出る。広間が静まった。

老侯爵が目を見開く。

「知らぬのですか?」

「何をだ」

「姫巫女をです」

沈黙。

やがて侯爵は口を開こうとする。しかし。

「やめなさい」アナスタシアだった。静かな声。

だが有無を言わせない。

「その話はここですることではないわ」

侯爵が頭を下げる。「失礼いたしました」

レオニスはアナスタシアを見る。だが。

彼女自身もどこか複雑そうな表情をしていた。

まるで。本当の意味を知らないかのように。



その夜の客室。

レオニスは眠れずにいた。

机の上には宮廷から借りた古い書物。

アルカディア帝国の記録。何気なく頁をめくる。

そして。ある言葉で手が止まった。

『巫女討伐記録』

レオニスの目が細まる。数百年前の記録。

封印されていた文書。その中の一文。

『王族と巫女の間に生まれし者を姫巫女と呼ぶ』

沈黙。

さらに読み進める。

『初代姫巫女ジャンヌ』

『神の声を聞き』『未来を示し』『王を選びし者』

レオニスの瞳が見開かれた。

(まさか……)

未来視。巫女。王を選ぶ存在。そしてアナスタシア。

全てが繋がる。

彼女はただ未来を見る皇女ではない。

王族と巫女。

二つの血を継ぐ存在。歴代の王を選び続けてきた者。

姫巫女。レオニスは静かに本を閉じた。

そして窓の外を見る。

月明かりの下。一人の皇女の姿が脳裏をよぎる。

「……そういうことか」

全ての謎が繋がった。だが同時に。

新たな疑問も生まれる。

なぜアルカディア皇帝家は、その存在を歴史から消そうとしたのか。その答えは。

まだ闇の中だった。

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