皇女の覚醒
第一話 皇女の覚醒
1人の少女が断頭台に立っていた。
その少女こそマリー=テレーズ・アルカディアだった。
かつてアルカディア帝国第1皇女と呼ばれていた少女。
そして今日、彼女は処刑される。
「王家の生き残りを殺せ!」
「首を落とせ!」
広場を埋め尽くす民衆は叫び続けた。
つい最近まで彼らは皇帝家万歳と叫んでいたのに。
だが今は違う。
アルカディア帝国は滅びた。
皇帝と皇后は処刑され、皇太子である弟アレクシスも酷い虐待の上命を落とした。
皇家の人々は殺され最後に残ったのが女であり皇位継承のないマリー=テレーズだった。
それが世間の認識だった。
だがそれは間違いだ。
私は第一皇女ではなくアルカディア帝国最後の皇子だ。
私は生まれながらにして魔力を持たずに生まれた。
魔力というのは身分によって強さが変わり代々強大な魔力を受け継ぐアルカディア皇家においてそれは致命的な欠陥だった。
余計な火種を作るまいと両親は魔力を持たない女の子として育てることにした。
そして表向きの後継者となったたった1人の弟は、革命の中で命を落とすことになった。
「罪人マリー=テレーズ・アルカディア!」
革命軍の兵士が剣を掲げる。
「これより貴様の処刑を執行する!」
歓声が広場を揺らした。
私は静かに目を閉じた。
お父様。
お母様。
アレクシス。
そして民よ。
最後まで何一つ守れ無くてごめんなさい。
兵士が剣を振り上げた。
その瞬間だった。胸の奥に熱を感じたのは
生まれて初めて感じる感覚。
熱い。苦しい。
ドクン。心臓が脈打つ。
「な、なんだこれは....」
血が沸騰しているかのようだった。その瞬間。
頭の中に膨大な情報が流れこんできた。
知らない人生。魔法をたくみに操る男。
黄金の髪を持つ青年が振り返る。
「ようやく目覚めたか」
「この世で最も高貴な血統を持ち4元素魔術師である私の生まれ変わりよ」
バキッ――。
まるで鎖が砕けるような音が響く。
同時に。
足元の石畳がひび割れた。風が吹き荒れる。
空気が震える。群衆の歓声が悲鳴へ変わった。
「な、何だ!?」
「魔力だ!」
「馬鹿な! あいつは魔力なしの皇女だぞ!」
私はゆっくり目を開け理解した。
大魔法使いであったが血統が弱く高みまで行けなかった
男。それこそ俺の前世だ。
「遅い。」
この世で最も高貴な血。
前世で積み上げた魔術の知識。
本来なら決して交わるはずのない二つ。
その全てが今、俺の中にある。
少女は立ち上がる。
「おれは..」
革命軍は凍りつく
少女だった少女の瞳が変わる。
「俺は、レオニス・アルカディア」
静かな声だが誰も目を逸らせない。
「アルカディア帝国第一皇子であり皇家最後の後継者だ。」
群衆が息を呑む。
革命軍の兵士たちは震えながら剣を構えた。
だが次の瞬間。
轟音と共に魔力が解き放たれた。吹き荒れる風。
砕ける石畳。そして眩い光。
誰も目を開けていられなかった。
やがて光が消える。
そこにいたはずの少年の姿は、もうどこにもなかった。
残されていたのは、深く抉れた大地と、王家の紋章だけ。
この日。
誰もが滅んだと思っていたアルカディア帝国に。
最後の皇子が生きていることをみんなが知ることになった。
そしてそれは――
世界の運命が再び動き出した瞬間だった。




