表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

泥と宝石 3

 暗闇の中から、なにかがこちらに向かってくる。

 ライトに照らされた「そいつ」を見て、チカは全身の血が凍りついた。

 そいつは七色に光る宝石でできた銃を持っていた。

 けど、そいつのからだは泥まみれだった。

 そして、そいつには頭がなかった。

 そう。そいつの正体はマッドマンだった。


「ユウマがいるのは『きらぼし公園』よ。できるだけ早くきて」

「わかった。全速力で行くよ」

 通話がおわると、はなは日傘を剣のようにかまえた。

「は、花子ちゃん……」

「逃げなさいっていってるでしょ。早く!」

「そうしたいけど脚が……脚が動かないよ」

「じゃあ、そこから動かないで」

 花子が腰を落として、大きく脚を振りあげた。

「すぐに片づけるから」

 振りあげた脚を、花子はハンマーのように勢いよく地面に打ちつけた。

 それが相撲の「四股(しこ)()み」だとチカが知るのは、もう少しあとのことである。

 花子が四股(しこ)を踏むと、地面に金色の魔法陣が出現。

 あたりの景色が金色に染まった。

(え、なに?)

 景色が金色に染まったのは一瞬だけで、すぐにもとの暗闇にもどった。

 その直後にマッドマンがふたりに銃を撃った。

「きゃあっ!」

 思わずチカは目を閉じた。

 けど、いつまでたっても痛みは感じない。

 不思議に思って目を開けると、花子が、広げた日傘を盾にして、銃弾を防いでくれていた。

 だが、マッドマンの攻撃はおわらない。

 2発、3発、4発。

 連続で花子に銃を撃ち続ける。

「花子ちゃん!」

「心配しないで」

 絶望的な状況なのに、花子の声は落ち着いていた。

「すぐに片づけるっていったでしょ」


 その言葉の直後に、またも信じられないことが起こった。

 まるで小石を投げた水面みたいに夜空に波紋が広がり、そこに金色の穴が出現。

 その穴の向こうから銀色の(たか)があらわれたのだ。

 鷹は、矢のようにマッドマンに急降下。

 そして――グサッ。

 するどいツメで相手の手首を攻撃。

 マッドマンの手から銃が落ちた。

「花子、いまだ!」

 鷹がさけんだ。しかも日本語で。

 武器をなくしたマッドマンに、花子は一気に駆け寄った。

 折りたたんだ日傘が金色に輝いている。

 光をまとった日傘は、まるでSF映画に出てくるビームの剣だ。

 距離を詰めると、花子はマッドマンのおなかに日傘を突き刺した。

 それが勝利の一撃となり、マッドマンのからだはドロドロに溶け、シューシューという音を立てて蒸発した。

「思ったより到着が速かったわね」

「いっただろ。全速力で行くって」

 のばした花子の腕に鷹がとまる。

 花子はマッドマンが完全に蒸発をするのを見届けると、

「太郎、元のすがたにもどって」

「でも、あの子が――」

「いいのよ。彼女、スペシャルだから」

 鷹がおどろいたようにクチバシを開いた。

「すべてを見られたんですもの。いまさら隠す必要なんてないわ」

「わかった」

 花子の腕から飛びたつと、鷹はチカの足元に着地した。

「このすがたでは『はじめまして』ですね、(つち)()さん」

 鷹のからだが銀色の光につつまれ、シルエットが人間へと変わっていく。

「もっとも、人のすがたなら、きのう見てるでしょうけど」

 銀色の髪に、黒いタキシード。

 銀色の鷹の正体は、なんと銀髪ぎんぱつしつろうだった。

(つち)()さん、あなたにはいろいろと話さなくてはいけませんね。まずは――」

 そのとき、グウゥゥゥとタイミングよく(?)チカのおなかが鳴った。

 信じられないことが起こりすぎて、ショックでお腹が空いてしまったのだ。

「もしかして、おなか空いてますか?」

 グウゥゥゥ! 

 主人の代わりに、おなかがこたえた。

 しかも、さけぶようにはげしく。

「花子、この様子じゃ、話はあとにしたほうがいいかもね」

「そうね。大事な話のとちゅうで、そんな音を鳴らされても困るもの」

 花子がもう一度四股(しこ)を踏むと、地面の魔法陣が消滅。

 さっきまで吹いていなかった風が、どこからともなく急に吹きはじめた。

「どうなってるの、いったい?」

「いままでわたしたちは〈フラスコ〉っていう結界の中にいたの。それをいま解除したのよ。どうせ行き先はおなじなんだから、このまま一緒に『ハーヴェ』にもどりましょう」

 花子が公園の出入口に向かって歩きだした。

 けど、買い物袋を持ってないことに気づき、すぐにベンチへ取りに行った。

「これ、夢じゃないよね……」


 夢じゃないよ。


 そうこたえるように、またおなかがグウゥゥゥと鳴った。


(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ