王都戦
「……あ~……久し振りに戻って来たな……」
今村は笑顔で帝都を見下ろしていた。
城壁は壊れ、堀は埋められ、防御施設として形を成していない城。
魔族が往来する城下街の通りでは人間たちが生気をなくしたかのように顔色を悪くして黙って粛々と暮らしている。
「さて、そろそろ古美門の両腕が届けられたところで滅ぼしますかね。今日は会議が3時から。なので天守閣にはまだ人がいません。ぶち抜け。」
「おー!」
今村のパーティが城の頂上部を吹き飛ばす。瓦礫も残らないようなその一撃に城はハチの巣を突いたかのようなパニックに陥るが外に出ることは許されない。
「よし、じゃあ……兵糧攻めを始めるか……」
「面倒なことが好きなのだ……プチってした方が早いのだ……」
「それじゃ、面白くない……共食いを始めるまで追い詰める。」
「……仙氣使って代謝を異常にすればすぐにお腹空かせられるのだ。」
特に戦争には興味のないニーナはそう言って城に何らかの付与を行った。それにより彼らは恐ろしい勢いで調理すらされていない食べ物を喰らい始める。
「あぁ、ストップストップ! ダメ! 城の物資は民衆のだから魔王軍が接収する手筈なの。」
「面倒だから魔族も滅ぼすのだ。大体、あたしは最近人間も魔族も増え過ぎだと思うのだ。ちょっと減らすべきなのだ。」
「ちょっとじゃねぇ……いいから止めろ!」
「あう。」
暴論で城に災厄をまき散らしたニーナを止めて今村は物資の残りをクルルとルナールに運ばせ始める。
「おわったなのー」
「ちょろかったぞー」
「おう。お疲れ。」
今村は現在も強制空腹の残りに苛まれている城の中を見て笑う。
「よし、料理人たちが食料がなくなったことでスティルルームメイドにブチ切れて殺したな。後はそれをどう隠蔽……ま、有効活用してますな。」
食糧庫担当のメイドに全責任を負わせて口封じに殺し、そしてそれを調理して食事として運ばせるところまで見届けてから今村は【音玉】で放送する。
「えー、現在城で人肉試食会が開かれております。カニバリズムに興味のある人間の方々は是非お越しください。人非人たちが笑顔でおもてなししてくれるはずです!」
普通の肉料理と偽って運ばれてきた人肉料理を見て顔色を悪くする勇者たち。そんな中で今村が見知った顔の少女が空を見上げてこちらに飛んできた。
「……今村……もう、気は済んだでしょ……?」
「小野か……まだ済んでないんだが?」
現れたのは【雷女王】小野だった。彼女は今村を見て溜息をつくとキツイ眼差しで今村を責める。
「もう、こちらに戦闘意思はないわ。戦争は終わりよ。降伏……」
「……ん?」
小野は町で行われている凶行、そして魔族が盾にしている人質を見ると言葉を切って今村に襲い掛かった。
「っチィッ!」
まさに稲妻のような一撃。今村は真っ向から受けるのを諦めて逸らす。そして返す槍捌きで今村の【玉璧】を1枚打ち破った。
「っとっとっと……凄いね。」
「……私がこの戦争を終わらせる。あなたを殺せば、戦況は持ち直すはず……」
「手遅れもいい所だろ。ん~……まぁここに来ての初期、世話になってたからコンタクトがあったら宮廷魔術師のじ様みたいに逃がしてやったんだが……」
猛攻を前にして今村は少しだけ考えて告げる。
「あんまり殺そうと言う気にならんのだが、逃げないなら殺すよ?」
「……逃げない……刺し違えてでも、私は皆を救う……今村こそ、魔族が人間にあまり残酷なこと、例えば奴隷なんかにしないように誓ってくれるなら人間は今回降伏するけど……」
「するわけないだろ? そっちが仕掛けてきた戦争だ。」
今村の返答に小野は軽く目を伏せて首を振り雷神の武器、三叉戟のピカーナを構えた。それを見て今村も【琨瑚】の武器を構え、そして口を開く。
「じゃあ……」
「えぇ、さよなら……今村……好きだったよ。」
勝負は一瞬だった。
雷光のような突きに対して今村は僅かに半身を逸らし懐に入ると太刀を以て斬り捨てる。小野は、それを見ることはできるが何も出来ず、そのまま微笑して斬り伏せられた。
今村はしばらく魔力が流れ込む様子を見つつ仙氣で更に吸収を早めると小野をアシュリーに渡す。
「で、まぁ魔力は大体盗ったかな。はいアシュリー。こいつは元協力者だから殺しはしないでどこかに放り投げておいて。」
「え……殺さないんですか……?」
「恩は二倍に、仇は五倍に。まぁ余裕があったし協力してくれた分は返す。次来たら殺すけど。」
そう言って今村は王城に入った。飢えた城の内部の人々を見ると今村は仙氣で更に飢えを進ませ、そして弱火で殺していく。
「城の防御能力を潰して安眠を破壊し、仙氣で飢餓状態に。そして最後は酸素を奪う……あ、性欲を破壊しておくの忘れてたわ。」
「飽きたのだ~早くこの城から出たいのだ~」
「じゃあ出て行けよ……」
「……宝物庫漁って来るのだ。」
ニーナは王城を自由に移動し始めた。そのついでに城にいた人々は殺されて行く。
「あーあ。きっちり復讐を果たそうと拷問方法を決めてた奴まで……」
「かかったな!」
その声に前を向くとそこには【糸】を操る勇者、トミオカがいた。彼は手元に細い糸を絡めつつ勝者の笑みで目をギラギラ光らせながら告げる。
「グレイプニル。お前は自分で拘束されたんだ。間抜けが!」
気付くと細い糸が今村たちに絡まっている。しかし、今村は敢えてそれを無視して普通にトミオカに近付くと尋ねる。
「何だ? 一般人はさっさと避難していればよかったのにな。まぁ……取るに足りない雑魚でも、ここにいる限りは一応戦闘員として殺さねばならんが……」
「な、何で……き、切り裂け!」
「……あやとりはもっと幼い奴相手にやるんだな……」
憐憫の眼差しを向けて今村はトミオカの腕を斬り落とす。
「ぎゃ……!」
「あぁ、そう言えば思い出した。一応、勇者みたいなものとして扱われていた気もする滓か。ゴミならまだ拷問にかけてストレス解消できる程度には役に立つんだがカスは……有効活用のしようがないな。さっくり死んで。」
屈辱に顔を歪ませたところで四肢を斬り落として魔力を吸収し、目玉をくり抜いて城内に既に放たれていた【目玉】に合流させて今村は移動する。
その時だった。誰もいないはずの召喚の間、異界の民を呼び出す場所で今村が驚くほどの巨大で神々しい魔力が溢れてきた。
「……何だ? 馬鹿げた魔力が……まさかまた異世界から……?」
「……!? ご主人様! 転移術に……」
アシュリーが気配察知で何かに気付いた時、今村たちは既に廊下から移動して別の場所に移動していた。
「っ……何だ、いきなり……」
今村はいきなり飛ばされた場所ですぐさま臨戦態勢に入り【玉璧】で体を覆って周囲の状況の把握を行う。
「【門】、古美門は廃人になってるはずだが……」
このようなことが出来そうな人物は民衆に裏切られ、どんな場所での食事にも毒を入れられることで小野以外の誰もが信じられなくなり自室に引き籠りをしているはずだ。
そうやって周囲を見ていると上座に目を閉じたままのこれまでこの世界でも見たことのないような美女がこちらを向いていた。
「……非道な方、どうして人の身でありながら魔族の味方をするのです……?」
彼女は悲しそうな目をしてこちらにそう尋ねて来た。
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:14222(前回+321)
魔力:17486(前回+3563)
攻撃力:14881(前回+427)
防御力:23151(前回+187)
素早さ:14627(前回+620)
魔法技術:19270(前回+3304)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【金玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】【特魔武術】【竜技】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【狂乱覇王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【竜の愛人】【薬師】
現在所持金…200万G




