戦争開始
戦争が、始まった。
魔族領に元々いた下級魔族たちが通った後は荒らされ、魔王に率いられた上級軍たちが通った後はほとんど何も残らない。
人々は悲鳴を上げ、異界の民……すなわち勇者を希求し、その声が叶わないとなると怨嗟の声を上げる。
聖教国は戦禍の渦に呑まれて行った。
「燃えろ燃えろ明るく燃えろ。消えないようにどんどん燃えろ。燃え終わったら【炎玉】の密度を上げるために回収するから安心して。」
「……焼肉食べたいな……」
「ルナも。」
戦場の中を今村たちは無人の野を行くが如く闊歩する。サーシャとルナールの呟きに今村は多文化だなぁ……と思いつつ目の前にいる青年を見据える。
そこに居るのは召喚時に巻き込まれたと嘆いていた青年だ。
「イマムラ……お前、こんなことやって……最低だな……何か言いたいことがあるなら言えばよかっただろう……!」
「くすくす……お前らが俺の声を本気で聞く気があったら俺の身代わりになった執事は助かってたよ。初日に毒を飲ませて来る王家の言うことを信じて【玉】の能力しか使えないとされているのに刀での殺人でも俺を一方的な悪と断じるような連中が……偉そうに正論を語るな。」
「ごちゃごちゃうるせぇな……お前、自分が何してるのか分かってるのか?」
「何って……」
今村は周囲を見て笑いつつ答える。
「戦争だ。正当な理由を持って、侵略者を追い返し、そして二度と攻めて来ないように完膚なきまでに叩きのめしてる。」
「狂ってやがる……もういい。御託はうんざりだ。」
「あ、そう。じゃあ【肉玉】……」
今村は笑いながらそう呟く。すると目の前の青年は頭を中心にして体が捻じ曲がり始める。
「なっ……!? あぎゃぁあぁぁあぁぁぁあっ!」
「大丈夫大丈夫。君くらいの力の持ち主ならまだ死なない。文字通り死ぬほど痛いだろうけどね。死ぬまで続けるから。……まぁ、どうしても止めてほしいなら死ぬ前に言った方が良いよ。」
「た、た……たしゅけっ!」
今村は口の中に【玉】を捻じ込んで黙らせる。
「はい。これでお前がさっき言ってたこと言うね。何か言いたいことがあるなら言えばいいじゃん。……あ、それと。」
今村はその青年の【目玉】を片方だけ視神経が切れないように慎重に伸ばして逆の目玉と向い合せる。
「ちょいと好奇心からお尋ね。これどういう風に見える?」
しかし、喋れない。そしてそのまま激痛によるショック死で【木】を操る青年は死んだ。
「……これで、後厄介なのは【光】と【門】、そして【金】か……いや、【雷】も場合によっては敵だからな……」
【雷女王】小野、そして【門王】古美門は王都にいる。【目玉】の情報を通して見るに、城の中は厳戒態勢で既に城下町などからの避難は締め切り、戦火を逃れてきた人々の備蓄品などは内通していないかどうかの調査と言う名目で問答無用で徴収している。
そしてそれら全ての責任は侵略者たちの所為にして勇者たちの義侠心を煽り立てていた。
「……さて、次の手は……民衆の扇動だな。【門】を差し出せばその部位に応じて何十人かは生きられるという……右手で3人。左手も同じ……」
そんな噂を流して今村は魔王の先遣隊の中で寛ぐ。周囲では王国民の女たちが犯され、男たちが殺されて行く。
子どもたちはまだ教育の余地があるとして魔族領に送られ、忌避感を見せず、抵抗もしなかった人々も手は付けられなかった。
「……おい、ウチのアシュリーに何か用か?」
「ひっ、い、いえ……失礼しました!」
「ご主人様ぁ……」
今村が今回の寝床に選んだ制圧された町の町長の屋敷でアシュリーが上級魔族たちに囲まれていたのでそれを助けて今村は屋敷の中に入る。
「みゃたたび酒、のみゃされみゃした……」
「そう。大変だね。」
「っ。たいへんでしゅ……」
今村の返事にコックリ頷いて体を擦り付けるアシュリー。
「私……この町の貴族様に、虐待されて……たので、知ってる人が……ご主人様の献上品だから毒見って、言ったので……」
「何言ってるのかよくわかんねーから取り敢えず解毒しなよ。」
「……あぁ、しょの手が……」
そう言って手を打つとアシュリーは自らに解毒魔術を掛けて顔を真っ赤にした後に真っ青にしてその場に平伏した。
「も、申し訳……」
「あーいーよ別に。それよりその貴族様とやら……拷問にかける?」
「い、いえ……二度と遭いたくないです……ぁ、八つ裂きにします……」
「急にどうした。」
言ってることが180度回転したアシュリーに今村は突っ込む。それに対してアシュリーは悪いことをしなければ捨てられることを思い出して貴族を殺すことにしたのだ。
「えぇと……この屋敷の、地下ですね……」
「んー捕まえた捕虜のどれかってことか……顔見ればわかる?」
「皆殺しちゃえばいいのだ。」
ニーナが帰って来たようだ。その手には【金】の勇者がボロボロになって生け捕られている。
「お土産なのだ。勇者はだぁりんが殺したいって言ってたの覚えてたのだ。だからわざわざ殺さずに持って帰って来たのだ。」
「……王都の包囲は?」
「ローナとクルルがお空から見てるのだ。地上は山脈に穴を開ける前から人間領に渡っていた魔族たちが包囲して、猫の子一匹逃がさないのだ!」
「純粋な猫は逃がしてあげたいなぁ……」
そんなことを呑気に言いながら今村は先遣隊に遅れること半日、魔王本隊がこの町にやって来るのを待つ。
「よぉ。」
「……大儀であった。して、そやつらは……」
今村の後ろにいる手が何本も生えて呻いている男を見て到着したばかりの魔王は奇妙な物を見る目で尋ねる。
「これ? アシュリーを虐めてたらしいから俺が虐めてみた。手を千切っては回復し、千切っては回復してた。来るのが遅いから……」
「殺じで……」
叫び過ぎて掠れた声でそう懇願する貴族に対して今村はアシュリーに尋ねる。
「殺す? 殺さないなら王都攻略戦の時に他の民衆と一緒に大盾に括りつけて敵の戦意を殺しながら進軍するけど。」
「ご主人様の言う通りにしたいですが……」
「じゃあ会いたくないって言ってたから殺すか。」
斬り殺して死体を【玉】に吸わせると今村は魔王に歪んだ笑みで笑いかける。
「さて、ここまで破竹の勢いで進軍してきたが……最後の砦、王都は全勇者どもが集まってやがる。」
「……そうだな。」
「そこで、【門】の勇者、古美門をこんな感じで炙り出すことにした。」
ポップな見出しで古美門を模した人体模型を描いて各部位ごとに魔族側で手厚く保護する人数を書いた紙を今村は魔王に見せる。
「えげつないな……」
「まぁ……普通にやっても勇者相手じゃ傷一つつけられないから特に意味はないんだけどね。さぁ、彼女は民衆の悪意にどれだけ耐えられるかな?」
流言飛語の結果、翌日には大量の人間の腕が送られて来たが【鑑定】結果として全てが偽物だと判明し、持って来た者は殺される。
その日の午後に指を斬り落としたという男が【鑑定】で本物だとされた瞬間、今村は狂気の笑みを浮かべて【悪魔王の方途】を行使し、ニーナにも【竜王の盟約】を使わせて、【魔王印】を持たせて王都に帰らせた。
その結果、勇者たちは守るべき民衆たちによってさらに追い詰められることになる。
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:13901(前回+1251)
魔力:13923(前回+1419)
攻撃力:14454(前回+1631)
防御力:22964(前回+1372)
素早さ:14007(前回+1487)
魔法技術:15966(前回+1398)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【金玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】【特魔武術】【竜技】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【狂乱覇王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【竜の愛人】【薬師】
現在所持金…200万G
【金玉石】…玉石の他、鉱物も扱えるようになる。
【特魔武術】…殺した相手の技を使えるようになる。
【竜技】…仙氣使用可能
【狂乱覇王】…大衆への煽動力に極大補整、統率力に大補整




