帝国へ
「父殿は、あたしを飢え死にさせる気なのだ……」
「じゃ、そういうことで……」
話し終えると龍人はその場にぺたりと座り込んだ。それを見届けて今村は立ち去ろうとするが竜人が回り込む。
「さっき、臨戦態勢に入ったからお腹空いたなのだ……宝石、持ってない?」
「持ってたとして、何で渡さにゃあならんのだ。」
「ケチ~! この際、水晶とかでもいいのだ~!」
今村は目の前の存在が面倒臭すぎるので地面に手を当てて土を弄り【石】の力で石英を操り水晶を創り出した。
「おぉ~! いただきますなのだ!」
「よし、行くぞ。」
アシュリーとルナールを捕まえて今村は【玉璧】を形成してこの場を後にするが、竜人が着いて来た。
「もっと頂戴なのだ。う~……これ、美味しそうなのに硬過ぎなのだぁ……」
「うっぜぇ……」
「む、そうなのだ。物を貰ったらお礼とお返ししないとダメなのだ……ちゅーで良いのだ?」
「対価に見合わなさすぎるだろ……自信過剰か……」
「父殿はそれで許してくれたのだ。」
けろっとして言う竜人に今村は溜息をついて速度を落とし、クルル達を待つ。
「そのドラゴンの所行けよ……そしたらちゅーで許してくれるんだろ?」
「汚いから嫌なのだ。」
「反抗期かよ……そういえばそう言ってたな……」
「あんたは……まぁ格好良くはないけどちゅーくらいなら許容範囲なのだ。」
小声でルナールが「ルナは最後まで大丈夫だぞー」と告げて来たこと、そしてアシュリーもそれに対抗して来たことは無視して今村は諭す。
「帰れ。自立も出来ない半人前が生意気言ってんじゃねぇ。」
「養ってもらうのだ! 代わりに一国を滅ぼす武力を貸すのだ!」
「……それならまぁ……見合うけど。」
そこで今村はあることを尋ねる。
「……竜に、なれる?」
「失礼なのだ! ニーナは立派なドラゴンなのだ!」
「いや、お前の父さんみたいな形に。」
「……ご褒美、あるならやるのだ……」
今村は【金剛玉】を作って目の前に浮かべる。
「やるのだ。」
即断するとニーナは服を捨て、全裸になって体を発光させる。そして次の瞬間には全長8mはありそうなドラゴンになっていた。
「どうなのだ?」
「声で台無し。」
「……ぎゃおおおおおお!」
「もっと台無し。その辺は【音玉】……いや、【悪魔王の方途】で雰囲気を出すとするか……」
「戻っていいのだー?」
「いいよ。」
元に戻る竜人、ニーナ。その姿は堂々とした全裸だった。
「よし! 食べるのだ!」
「どーぞ。」
とても食事中とは思えない音が響く中で追いついたクルルに下に服が落ちているのを探しに行かせてサーシャも待つ。そうしているとローナがこの場に追いついた。
「ま、まさか置いて行かれるとは……!」
「おぉ、よく追いつけたなー……」
「頑張りましたからね……! それで、そちらのおっそろしいお嬢さんは?」
「宝石老龍の娘。」
金剛石をバリバリ言いながら恍惚な表情で食べているニーナに今村が端的にそう告げるとローナは目を見開いて叫んだ。
「わ、私は基本的に烏ですから、食べても美味しくないです!」
「……言われなくても食べないのだ……」
「そうなのかー……」
【金剛玉】をガリガリ食べながら半眼になるニーナにがっかりするルナール。身近な捕食者にローナが引き攣った笑みを浮かべているとクルルが服を持ってこの場に戻って来た。
「はいなの。」
「んー……あ、そう言えば服着てないと変態に犯されるんだった。でも正直邪魔なのだ。弱いし。あの黒いお菓子を出す人が変態なら着るのだ。」
「……お菓子は出した覚えないんだが……まぁ、俺は変態だな。うん。着ろ。」
「じゃあ着るのだ。」
厚手の服を身に纏い、食事を終えるころにはサーシャもこの場に着いた。そろそろ紛争地帯に差し掛かるところで今村は尚もついて来る竜人に視線を向ける。
「どこまでついて来る気だ?」
「え? 父殿いないし、あんたにちょっとだけお世話になろうかなって思ったのだ。ほんの2~300年でいなくなるのだ。」
「……桁が増えてんじゃねぇか……俺は今忙しいんだが?」
「じゃあちょっと待つのだ。」
竜の基準のちょっと待つなら大丈夫かと判断した今村は何も言わずにその場を過ぎ去るが気配がすぐについて来たので後ろを向く。
「……ちょっと待つんじゃないのか?」
「待ったのだ。」
「テメェ……それは本当にちょっとだな……」
「だから言ったのだ。」
ぶっ殺してやろうかと思ったが、今は戦争への準備で忙しいので帝国への交渉が終わってから戦おうか考える。
(……でも正直材料があればいくらでも宝玉は作れるから扱おうと思えば楽に扱えると思うが……炭素でダイヤも作れるし、中央山脈は割とクロムとかが多いみたいだから他も大量に作れる……)
そんなことを考えながら後ろを向くと竜人はにへら? という笑顔でこちらを見ていた。
(そもそも、紅玉、蒼玉、碧玉、翠玉、藍玉、黄玉何かの玉が付く部類は魔力だけで創れるしな……燃料は俺の魔力……つーか、こいつはどこまでを宝石認定して食べるんだ……?)
気になったので紅玉、蒼玉、碧玉、翠玉、藍玉、黄玉、瑪瑙、瑠璃、続けて石の力で蛋白石、柘榴石、橄欖石この辺りには石英があまりないようだったので紫水晶などは諦めて食べさせてみた。
「おぉ~! おほぉ~! 凄いのだ……!」
「ふむ……ジャスパー、瑠璃、ペリドットは食べない……オパールは透明な部分だけを食べて半透明の部分は残してる……透明で光沢、それも金属かガラス光沢がある物だけを選んで食べてるのか……よし。」
分かったのでもういいと紛争地帯に入ると魔物の群れが襲来した。
「よし! 轢殺パーティの始まりだ!」
「……あたしの、ご飯の、邪魔するななのだ……」
ニーナの睨みだけで魔物の群れは死滅した。
「ん。……魔力はこっち行きなのだ。お代はちゃんと払ったのだ! もっと頂戴なのだ! 毎朝あたしに宝石作って欲しいのだ!」
「……付いてきたい奴だけ中に入って。」
今村はクルルとサーシャを呼んでそう告げた。
「何で私だけ毎回仲間外れなんですか!?」
ローナが抗議するが今村は無視して丸薬を飲み、【魔皇】を発動する。
「おわ……」
余裕で付いて行こうとしていた竜人が今村を見て驚く。
「ぉらぁぁあぁぁっ!」
「ま、待つのだー! りゅ、【竜仙氣発勁】!」
「何!?」
まさかついて来られるとは思っていなかったので今村は驚いて少し後ろに付いた竜人を見る。
「び、びっくりしたのだ……本当に……父殿より、速いっぁっ! ふぅっ……生物がいたのだ……」
「……今、ルナたち竜とレースしてるんだぞー……?」
「凄い光景ですね……」
「……クルルももっとがんばらないとだめなの。ごしゅじんさまののりものとしてのいじがあるなの……!」
「おい、サーシャ、お前、俺に何か言いたいみたいだな? 断じて乗ったことはないからな?」
「……乗られる方……?」
「放り出すぞテメェ。」
そんな会話をしつつ今村が少し後ろを見ると竜人は笑っていた。
「あははー! 全力って楽しいのだー! かけっこなのだー!」
宝石のようにキラキラとした笑顔で付いて来るニーナを今村は無言で見てしばらく考え事をしながら紛争地帯を抜け、帝国領に入った。
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:12650(前回+2000)
魔力:12504(前回+1743)
攻撃力:12823(前回+2000)
防御力:21592(前回+1000)
素早さ:12520(前回+2000)
魔法技術:14568(前回+1832)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【竜の愛人】【薬師】
現在所持金…200万G
【竜の愛人】…変な意味ではない。半龍化、ステータスに補正。




