突貫工事
「……そう言えば、何で来たの?」
魔王城を後にしてこれから中央山脈に向かおうとするところでそう言えばこの話をしていなかったとばかりに今村はルナールたちに尋ねる。
「群だから! 早く所有者になって! 忘れない内に!」
「……何か良く分からんが、そう。嫌じゃないの?」
「嫌なのにここまで追っかけて来るわけないだろー! 早く!」
「……まぁ、これから戦争だし人手足りなくなるからいいけど……」
「ふー……これでよし。」
ルナールは腕にタトゥーのように紋章が入るのを見てそれを撫でて大きく息をついた。その様子を見ていたアシュリーも今村に頼む。
「あ、あの……私もこの首輪を嵌めてください……何でも言うこと聞きます……」
「アシュリーとか戦うの嫌いじゃん。俺と居ると酷い目に遭うのに……」
今村が反対するとアシュリーは前に回り込んでその場に正座する。
「こんなの全然酷くないです! お願いします……!」
「えー……公共の場で土下座は止めてほしいな……」
「ご命令ですよね……? 奴隷に、戻って……いいんですよね……?」
「……まぁそうしたいならそうすれば?」
好意を無駄にされた気分ながら今村は【悪魔王の方途】を用いて契約をしてアシュリーを隷属する。
「首輪……」
「着けなくても契約できるんだけど……着けたいの……?」
「はい……」
「幼気な美少女に首輪を嵌める……」
サーシャを睨むアシュリー。そう言われると嵌め辛いので別の物にした。
「これにしよう。」
「……! も、勿体ないです……恐れ多い……でも、あの、もしくださるなら嬉しいです……」
「何か正直になったなお前……これなら……幼気な美少女に高価なネックレスをあげる……援交……? いや、俺はまだ若いから大丈夫。事案じゃない。」
ネックレスを付けられて元気になったアシュリーを連れ、今村は空に【玉璧】を浮かせた。
「そーそー……ステータスが跳ね上がったから分かったんだが……【玉壁】は間違えてた……と言うより足りなかったんだな……だから変な飛び方をするらしい。正しくは【玉璧】、これなら安定して飛べる。ついでにもの凄く堅い。」
そう言って今村はアシュリーとルナールを【玉璧】の中に入れて飛ばすとクルルとサーシャを見る。
「サーシャは、飛べたよな……?」
「うん。」
「クルルは言うまでもない。」
「なの!」
じゃあ大丈夫だな。そう判断した今村は一声掛けて空を駆けた。
「は、はや……」
「なのぉっ!」
サーシャは完全に出遅れた。クルルも割と全力で飛んでやっと追い縋れるくらいの速さだ。
ローナは置いて行かれた。
「おぉ……山が、消し炭になったなー……」
「割と経験値が入った。つーか3日も要らなかったな。」
サーシャがやっとの思いで辿り着いた時には山の一部が崩壊するどころか抉り取られていた。
「行軍のために、ちょいと土を中に入れるべきかな……いや、そこからは自分たちでやって貰おう。」
今村は別の山の一角からこちらにやって来るナニカを見て考えを改めて、そちらを見据える。その方向を見たサーシャが警告を発した。
「あれは……宝石老龍! アースドラゴンの最上級に位置する……」
「どんな感じで階級は決まるの?」
「えぇと……砂幼龍、石仙若龍、岩山魔龍、金属成龍は色々あって鋼鉄成龍とかから……そんなこと言ってる場合じゃない……!」
話をしている内に既に目の前に現れたドラゴン。その姿を見て全員が恐怖で固まる中、今村は安堵する。
「よかった。東洋系の竜じゃない。飛龍系の、西洋系のドラゴンなら狩っていいんだ。」
謎ルールに安心して【抜けば玉散る玉鋼】と呟いて今村は刀を生み出し、目の前の巨大なドラゴンと対峙する。それを見てルナールが警告した。
「ちょ、超獣大決戦だ……! あるじの邪魔にならないとこに逃げないと!」
「誰が超獣だ……」
『待て……私は争いに来たわけではない……』
頭に響くような声が聞こえた。周囲が驚く中で今村は目の前の龍に至極普通に話しかける。
「では、何をしに来たのですか?」
『……我を恐れぬか。ならばよし。頼みがある……我が娘を、攫ってくれ。』
「……ちょっと何言ってんのか分からないんですけど。」
今村がそう尋ねると龍は理由を一言で述べた。
『反抗期なのだ。』
「……いや、反抗期に親元を離れると拗らせますよ?」
一応正論をぶつけてみると、竜もそれは承知らしく頷いた。
『いや、頭を冷やすまでで構わぬ。そうだな……精々、2~30年ほどか。』
「超長いんですけど。」
そこには種族の差が歴然として存在していた。龍の方は説得に入るが言葉が上手く浮かばないらしく言い辛そうに告げる。
『お主は力があり、美女を侍らせている……つまり、適任だ。』
「……色々間違えてるけど言い返せない……」
『娘は可愛いぞ。少し我儘だが……そこはお主が力で捻じ伏せればよい。』
「あんた、親としてどうなんだ?」
『……割と情けないことに我は娘として育てたつもりなんだが……奴は我のことを食べるのでな……ならば、こちらも親として厳しく当たる所存だ。』
「……あんた親じゃなくておやつなの?」
今村がそう返していると龍が来た方角から龍よりも更に高速で黒い粒が飛翔して来て気付いた時には今村と組み合っていた。
「……ん?」
「何だテメェ……」
『フハハハハ! こやつは我の友よ! 友よ、しばらく娘を頼んだぞ!』
龍は辺りが振動するほどの大きな声で笑った後、その巨体を跡形もなくこの場から消していた。それを受けて今村と組み合っている女の子は叫ぶ。
「あ、待つのだ! 父殿! これはじどーぎゃくたいなのだ! あたしのご飯はどうするのだ!」
「結局押し付けられた……いや、頑張って追いかけるんだ!」
「投げるななのだ! あんた、父殿の言ってた、言うことを聞かないと女として生まれたことを後悔するくらい凌辱する化物なのか……?」
「あいつ……俺をそんなのと同一視しやがったのか……!」
今村は大分キレた。それに対して竜人と言う言葉がしっくりくる目の前の少女は周囲を見渡して頷く。
「そうに違いないなのだ……でないと、こんな冴えないのに可愛い女の子を連れられないのだ……!」
「……俺のことは放っておいていいから親追いな。」
「この子たちのことを見捨てられないのだ!」
今村は少し考えた。さっき連れて行くと約束したのにもう置いて行っていいだろうかと言う良心、そして面倒臭いという本音。
「……【悪魔王の方途】……」
「おいだされるなの!」
「あいつ何とかするぞ!」
「回復します! 防御を気にせず突っ込んでください!」
「お、おぉー? 私は……じゃあ補助魔術かな……?」
面倒臭さが勝ったのを敏感に察知した周囲が避難状態から飛び出て龍の少女と今村の間に割り込む。
「え……何なのだ? あたしはあんたらを助けようとしてるのだ……?」
「いいえ、とても邪魔しようとしてます。」
「ねぇ……イマムラさん? あの、もうちょっと考えてほしいな……」
「考えても結果は同じだ。折角の大詰に来てるのに面倒なことは嫌だ!」
成り行きを見た龍の少女は一先ず臨戦態勢を解いた。
「話を、してほしいなのだ……」
「まぁ、よく分からんが……取り敢えずここに至った経緯を話すか。」
戦闘態勢を解くとおそらく【傾国】のシリーズを持っているのだろうと思われる程の美少女に今村は説明を開始した。
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:10650(前回+322)
魔力:10761(前回+376)
攻撃力:10823(前回+423)
防御力:20592(前回+321)
素早さ:10520(前回+218)
魔法技術:12736(前回+347)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【薬師】
現在所持金…200万G




