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これからの展望

「……そろそろ、奴らを殺させろ……」

「諦めないでどんな時も、君なら出来るんだどんなことも……? ふっ。それを決めるのは俺じゃない。戦ってる奴ら自身なのだよ!」


 泣きながら、汚物を漏らしても気にすることもせずに顔を血塗れにして戦う勇者たちを指さして今村はびしっと決めた。


「もゔ、じなぜで……」

「涙の数だけ強くなれるよ。……勇者がそんなこと言ったらいけません! 最期まで頑張ってください! じゃないと【守王】が大変なことに!」

「うぅ……ひっく……っく……」

「あぁぁあぁあぁああぁぁぁっ!」

「……もう、俺じゃなくあいつと戦え……」


 魔王ザッファールトはそう言って攻撃の手を緩めるが、シラヌイは殺気全開の今村の方を見ようともしない。


「俺と闘る? 拷問式戦闘術していいの? お前らが俺にした仕打ちの5倍にして返すけど。そこの魔王を倒せば見逃してやるってのに? ほらほら。1万回ダメで望みなくなっても1万1回目は何か変わるかもしれないよ?」

「うわぁぁぁぁあああぁぁっ!」

「……俺の方が弱いと分かっているからか……それとも、もう既に思考停止しているのか……」


 溜息をつき、ザッファールトはカウンターを入れ、すぐさま回復させられるシラヌイを憐憫の眼差しで見る。


「負けないで、もーぉ少し、最期まで走り抜ーけて。」

「う、うぅ……」

「この人……超ドSだね……」

「知らないで来てたのかー?」

「うん……でも、結構どうでもいいかな……所詮、相手は人だし……」


 最早【火】の能力すら使わずに突撃しては致命傷を負い、倒れ、回復させられるシラヌイは単なる惰性でこの作業を行っているに過ぎない。


「……【エル・グラ「お?」……チッ……」


 そして一撃で消し炭になるように最大級の魔術を使おうとしても今村が発動前に目を光らせて恫喝するかのように声をかけるので殺すに殺せなかった。


「終わらねーんだが?」

「うん。頑張って……それか、俺がここに来た最初の用件、王国侵攻の提案をきちんと受け止めて考えるかだな。」

「……あぁ、そうさせてもらうよ。」


 うんざりした顔でザッファールトはそう言うとシラヌイに背を向け……斬りかかられ、振り向き様に一閃して首を落とす。


「……さて、本題に入ろうか。」

「おい、椅子……まぁいい。」


 玉座に座ったまま今村が話そうとするので返してもらおうかと思ったが機嫌を損ねて国を破壊されても困るので取り敢えず話を思い出してみた。


「……中央山脈を越えて、王国に侵攻しその力を誇示して戻るか……」

「そう。共和国、帝国を巻き込んで王国を潰す。あんたが魔国を動かせば後は帝国を動かすだけだ。」

「動かせるのか……?」

「動かなかったら、帝国に渡すはずだった領地をあんたが取ればいい。と言うかあそこには予知の人がいる。戦後どうなるかはすぐに分かるからまず動かすだろうけどな。」


 今村の言葉にザッファールトは溜息をつく。


「だが、もし帝国が動いた場合、俺らに旨味の欠片もないぞ?」

「あるだろ。度々やって来る人間どもの駆逐、異界の民たちの召喚を潰す。元々交流のあった獣人領の復活と言う名の傀儡政権の成立。」

「……魔族と獣人は、思想が若干違うからなぁ……魔国ほど、実力主義でもなければ同族意識が強くても国としての結束もあまり強くない……」

「だから、滅ぼされたとしてお前らが国を建てればいい。それに、思考が違うことの何が悪い? 上前だけを撥ねて実際の運営の殆どを向こうにさせる。それに抵抗しようとすることへの重石として先に示威をする。何かおかしいか?」


 ザッファールトは唸った。そこに今村は一つ付け加える。


「王国の不当な亜人、獣人差別を撤廃するという名目、奴隷解放を謳って戦争をすればいいんだよ。獣人とか亜人は恩を感じやすいみたいだしな……」


 アシュリーはそこで見られて照れた。


「魔物も恩感じるぞー!」

「なの!」

「……お前らはちょっと特殊だろ……」


 ルナールとクルルが何か言ってきたが無視して今村は魔王ザッファールトに告げる。


「国内の魔物たちは、俺が狩りまくったから減ってる。それを進軍のために除去したことにすれば魔王軍の威光も上がる。それに同じ神を信仰する兄弟(獣人)が存亡の危機に晒されているのに見捨てろと強く言える奴はいない。殆どの奴らから賛同を得られるはずだ。」


 揺れている。ここは押しの一手だと判断して今村は続ける。


「それとも、魔族は人間が怖いのか? 帝国、共和国と連合して数の上では上回るのに……実力は違うの?」

「魔族は、強いに決まっているだろ……! 現に、数百程度の魔王軍だけで奴らの国を混乱させ、異界の民を召喚させるまで……」

「あぁそう、異界から来た人間からは逃げるの? 相手は、所詮、人間、なのにね?」

「貴様のような人間がいるか……!」

「俺の種族は魔だから人間じゃないよ。あいつらは人間だけど。何だ、俺みたいなのがいっぱいいると思ったの? ないない。」


 今村の失笑に対して後ろの魔物たちはそんなのがたくさんいたらこの世界はもう滅んでいると同調する。


「……資料だ。王国のデータ、全て。そう言えばここに通される時にそれ準備してたんだよ……誰かさんがアホな理由で攻撃してきたから忘れてたけど……」

「な、何であなたが……?」


 部屋の隅で怯えて小さくなっていたシロヤマが驚愕に目を見開いて思わず口に出してしまった。視線を集めてしまい、再び小さくなる彼女に今村は笑って応える。


「あぁ、王国は、勇者のことを処分するつもりだからな。お付きからの報告で性格や能力、戦闘傾向なんかを分析して対策を練ってるんだよ。それを覗かせてもらった。」

「……何だ……弱いなステータスで4桁行っている者の方が少ない……ここに来ていたあ奴ら程度が現在の実質トップクラスなのか……」

「そう。特にまさにチートと呼べる【守王】の防御値が最初から9999あるからこそここまで来れた。」


 それを片腕だけで破壊するお前は……とザッファールトは思ったが、おそらく答えないだろうと飲み込んだ。代わりに別の質問をする。


「だが、中央山脈には中立国がある。アレを敵に回すと進軍が……」

「あぁ、その辺は大丈夫。中央山脈の一部に俺が風穴開けてなだらかにしてくるから。」


 無理に決まっている……そう言いたいところだが、目の前の人知を超えた存在であれば実現しそうであることが魔王を黙らせた。


「石の方で岩盤を操れば地滑り起こしてある程度行く。そっからはぶち抜く「ルナも手伝う!」……竜巻とか、自然災害を起こしまくるから行けるだろ。」

「……構造力学と、土質力学、岩盤力学とか……私……分かるよ……? トンネルとかでも……」

「力技で行くかな。」

「そう……」


 微妙にしょんぼりするサーシャ。やっべ、超襲いたいとザッファールトは思ったが、それはともかく魔王として今村に告げた。


「もし、中央山脈の一部が崩壊した時、連携を取るならいつ進軍した方が良い? いや、いつ、王国領に入る?」

「……そうだなー流石に中央山脈開通まで3日は欲しいし……そこから共和国で交渉して……いや、あっちは交渉とか要らんか。既に戦争してるし……帝国との交渉の方を考えると……ふむ。大体10日ほどじゃないか?」

「急だな!」

「いや十。」

「急がないといけないと言う意味だ……」


 真顔でそんなことを言われては苦笑するしかない。今村はそこまで馬鹿ではないか……と安心しつつシラヌイたちの死体を見てあることを思い出し、お付きと思われる二人の荷物を漁り始めた。


「……えー、もしかしてこん中……? まぁいいけど。あ、やっぱり……」


 突如としてシラヌイのハーレム要因たちの身ぐるみを剥がして下着の中に手を突っ込んだ今村を何とも言えない目で見るが、今村は【水玉】で手を洗ってから魔王に白い巻物を投げ渡す。


「王国に通信する何か。ウチの烏がそれに干渉できるから準備が出来たらそれに干渉する。」

「……あのね、いきなり女の子の股に手を突っ込むのはダメだと思う……大事なところなんだよ? 私、布越しでも泣いちゃうくらい嫌だったから……それとね、あの通信タイプなら私は書きこめるから、頼っていいよ……」

「え? じゃあそっちで。」


 連絡手段を確保したその後軽く調整の話などをしてから今村たちはそう言って魔王城を後にした。




 イマムラ ヒトシ (17) 魔  男


 命力:10328

 魔力:10385

 攻撃力:10400

 防御力:20271

 素早さ:10302

 魔法技術:12389


 ≪技能一覧≫


  【特級技能】…【玉石】【悪魔王の方途】

 【上級技能】…【言語翻訳】

 【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】


 ≪称号一覧≫

 【不羈ふきなる悪魔王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【薬師】


 現在所持金…200万G

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