魔王戦
「魔王! お前の悪行もここまでだ!」
「じゃかしいわい!」
「ご主人様!」
「! ここまで来やがったか……!」
扉を開けられた瞬間、今村と魔王は距離を取って襲来者の顔を見る。そして互いに目だけを合わせて告げた。
「一時休戦だ。貴様の話通り、異界の民が勘違いして来おったわ。」
「あぁ、こっちも何か来たんでな。休戦と行こう。」
「なんかつうじあってるなの……」
クルルの呟きに対して今村は一睨みすると視線を目の前に戻して戦闘を始める前に勧告しておく。
「攻撃を加えずに去るならこちらからも手出ししない。ただし、攻撃を入れた瞬間から殲滅戦だ。」
「お前の戯言など誰が聞くか! 行くぞ皆!」
シラヌイの言葉に続くのは彼の元々のパーティだ。しかし、紛争地帯で途中加入して来た面々は今村の前に戦闘する素振りを一切見せずに手を挙げて移動して話しかける。
「あの、ご主人様……私、何がいけなかったですか?」
「アシュリー! ルナール! 何をしてるんだ!?」
「何でもしますから、もう一度、チャンスを下さい……お願いします……」
「ルナも、何か悪いことしたみたいだから、ごめん……」
謝罪されて今村は首を傾げ、勇者たちの声を聞き、取り敢えず尋ねる。
「……何しに来たの?」
「奴隷に、戻してください……」
「群に、帰って来てよぉ……」
今村が何か言う前に戦闘による炸裂音と余波で襲来者と元々この場にいた者たちが分けられる。
「……取り敢えず、挑戦者はどこからどこまでだ?」
「ルナはあるじに謝りに来た。あんた誰?」
「俺は魔王ザッファールト。」
「そう……あるじがあんたと戦ってないならルナも関係ない。」
え? と言う顔で勇者たちはルナールを見るが、魔王はそうか。とだけ告げて次にアシュリーを見る。
「お前は、妃になりに来たのか?」
「え……私は……ご主人様の奴隷に戻りに……」
「そうか、やはり俺の妃にか……大丈夫だ。俺は女を大事にする。奴隷のようには扱わないぞ?」
「え? え……あ、あの……私のご主人様は……あの方です……」
「つまり奴を潰せば皆俺のモノと! うむ! 素晴らしい!」
笑顔で何度も頷く魔王に対して同行していた勇者のパーティは驚きの顔で固まる。特に、勇者2名は今村の顔を見て亡霊を見たかのような顔をしていた。
「……取り敢えず、こいつらを逃がさないことが最優先だから話は後だな。こいつら本当に何しに来たんだろ……」
「たぶん、またなかよくしたいとおもってるなの……」
「いや……多分、ご飯を食べたいの……」
今村の呟きにクルルとサーシャが独自の見解を述べるが今村にはしっくりこないので取り敢えず戦い始めた魔王ザッファールトの代わりに玉座に腰かけて成り行きを見守る。
「似合うなー……」
「なの。」
何か気分が乗って来た今村は手を挙げて高らかに言った。
「行け! ザッファールト! その力を以て勇者を薙ぎ倒せ!」
「俺に指図するんじゃねぇ!」
キレるが、実際に魔王として異界の勇者と戦わなければならない。相手も今村のことを認識したが、そもそもの戦争の原因である魔王を前にして大事の前の小事と判断し、戦闘を開始する。
その間にルナールたちはクルル達の方に移動していた。
「あー……取り敢えず合流できてよかったー……」
「ローナちゃんはどこなの?」
「んー? 城から誰か出て行ってないか外で見張り中……」
「か、回復を!」
「ダメ! 私だけじゃ間に合わないわ! アシュリー!」
「……ごめんなさい。」
ほのぼのしながら会話する前で死闘を繰り広げる勇者一行。助けを求められるアシュリーだが、今村の顔を見て何もしない。
「ん? アシュリー助けたかったら……」
「いえ! もう、命令にないことはしませんから、私のこと、見捨てないでください……!」
「いや助けていいよ? どうせ、あいつ等の力量じゃ1万年と2000年経っても勝てやしないから。寧ろ助けろ。」
「はい!」
アシュリーは今村の許可を受けて頷き、シラヌイたちを回復する。それとほぼ同時に魔王の必殺の一撃が入る。
「チッ……」
その一撃は【守王】、シロヤマの【守護結界】に阻まれてシラヌイには通らない。
「オラオラ! そっちばっかりにカハッ……! い、今だ!」
「ぬっ! 小癪な……」
アシュリーの回復、シロヤマの防御、戦況は硬直に陥った。その後ろで今村たちはお茶会を開く。
「あまいなの。」
「【玉露】で淹れた紅茶だ。秘蔵品。茶菓子も手製だが……」
「美味しい。」
「る、ルナも食べていい……?」
「どーぞ。アシュリーもいいよ?」
「あ、ありがとうございます……」
アシュリーが離れたことで戦況は魔王側に傾いた。武闘家が殺され、精霊使いは気を失い、戦闘不能になる。
「……うぅ……ありがと、ごじゃいます……」
「いや、泣くなら食べなくても……」
「違います……戻って来れたことが、嬉しくて……」
「お前食うの早過ぎ! 皆の分も考えろよなー!」
「新参の癖に……」
「ルナはあんたが入る前からこの群に居た!」
勇者シラヌイとシロヤマはアシュリーに目を向けて戦闘不能に陥っている精霊使いを助けるように怒鳴る。それに対してアシュリーは今村を見た。
「いーんじゃない? 好きにしなよ。」
「……アシュリー! 君は誰の物でもない! 自分自身に従って、正しいと思うことをしなよ! その男が何をしたのか知らないけど……今、君が間違っていることは分かるだろ!? 君の所為でラヴーナは……もう、これ以上犠牲者は……!」
その言葉を聞いて今村は嘲笑した。
「何でアシュリーの所為にしてんの? お前が弱かったからだろうが……一人だけ毎度【守王】の結界で守られてるくせに。」
「今村ぁ……亡霊になってまで、悪行を重ねる貴様は絶対に許さないからな……そこで笑っていられるのも今だけだ。」
「よそ見して、喋る暇もある……我が身が一番可愛いのに綺麗ごとばかりの君たちには俺からプレゼントだ。」
今村はそう言って丸薬を口にすると呟いた。
「【魔皇】……【玉体】【玉砕】さぁ、死にな!」
目にも映らぬ速さで玉座から飛び出し、シロヤマ目掛けて左手で捻り貫き手を繰り出す。それを見てシラヌイは余裕の笑みを漏らすが次の瞬間、それは絶望に彩られることになる。
「そう、その表情が見たかった。」
「あ……あぁ……!」
打ち砕かれる結界。聖なる光を反射しながら美しく崩れて行くその様子に左手を血塗れにしながら今村は笑顔でそう告げ、右手で懐から執事の宝石の中で最も高いとされていた物を出して呆け、あどけない顔を絶望に顔を歪ませるシロヤマの口に捻じ込む。
「いやっ!」
「チッ……」
「んむっ!? ……」
吐き出したシロヤマに対して今村は右手で逃がさないように抱え、左手が動かないので【玉】の力で無理矢理呑み込ませる。
「さぁ、楽しい楽しいガチンコバトルだ。今度はそのインチキ臭ぇ防御は使えないからな?」
そう言って今村は一足飛びに玉座に戻り自らの【癒玉】で腕を癒す。それを見てそわそわしてじっと傷口に手を向けながら呼ばれたらすぐに治療できるように魔力を整えるアシュリーに治してと頼んで戦況を見ると勇者は喧嘩をしていた。
「シロヤマ! 結界を……」
「壊された……」
「だから何だって言うんだ!? 何度でもやり直せば……」
「だから! 【守王】の力を、根本的に壊されたのよ! 私は、何も……」
「諦めるな!」
「あいつ太陽神マツオカみたいなこと言ってる。さすが【火】さん。格好いいッスね。チーッス。」
この場にいる人々では誰も分かってくれないことを言いつつ今村は逃げ出そうとする勇者たちにしかし回り込まれてしまったをやりながら戦場を眺めていた。
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:10328(前回+18)
魔力:10385(前回+20)
攻撃力:10400(前回+22)
防御力:20271(前回+9999)
素早さ:10302(前回+18)
魔法技術:12389(前回+21)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【薬師】
現在所持金…200万G




