魔都
「魔族領周辺の魔物は非常に強いけど、魔都付近は比較的安全……ただ、魔都の中にいる魔族は様々な種族がいて、魔王様のように強い方も……」
「……だからこの辺の魔物は弱くて歯ごたえがないのか。」
「なの。」
「……これでも、十分に脅威なんだけど……」
今村たちは魔都が見えるくらいの場所に着いた。そこでガイド、サーシャの説明を受けながらその場で狩りを行う。その規模にサーシャは呆れたような顔をする。
「……私、一応上級魔族なんだけどね……? それでも、町から出ないようにするべきと言われる位は危険で……」
「民間人だろ。戦闘には期待してねぇよ。」
「クルルのかちなのー!」
襲ってきた魔物を固有魔術で磨り潰し、返り血を顔に浴びているクルルが笑顔で戻ってくる。それを見てサーシャは微妙な顔をした。
(非戦闘民だけど……一応、上級魔族における貴族で固有魔術を操るから、かなり強い方なのに……)
目の前の幼子は平気で規模の違う固有魔術を乱発する。自分が強い方だとは何となく言い出せない中で【珣】を使い、玉製の器を生み出した今村は目の前の動物で料理を始める。
「クルル、玉葱を微塵切り。」
「なの♪」
「玉菜はざく切り。」
「な~のなの♪」
風の魔術ですぱすぱ斬られて準備はすぐに出来上がる。大方を【玉】が吸い上げた巨大な魔物からスライムが好きらしい一部分を与えつつ醤油をかけて昆布出汁の素を入れる。
「……ふむ。これに馬骨出汁を入れるか……」
過去殺してきた魔物たちの出汁やエキスを入れて完成だ。
「んむんむ……むふー……」
「たべるのはやいなの……」
「味が沁みてからの方が良いのになぁ……」
食費だけ掛かるガイドを見つつ今村は本を出す。少し冷めるのを待ってから今村とクルルも食事を始めた。
「……あぁ、ついでに……何か注意することはある?」
食事を摂りながら今村がサーシャにそう尋ねるとサーシャは小首を傾げてから少し考えて答える。
「魔王様は、別格に強いから……喧嘩は売らないでね……?」
「人を戦闘狂みたいに言いやがって……」
「後は……力が正義だから、喧嘩売られると思う……殺してもいいけど、町の破壊はあんまりしないで?」
「人を破壊神みたいに言いやがって……」
両方とも大体当たってるとクルルは思ったが口には出さない。正直通って来た道を見れば今村が否定していることがどうなのかは分かると思うのだが本人が否定しているのだから何も言わないことが正解なのだ。
「俺は復讐するために力を付けているのであって強くなるために戦闘をしているわけじゃない。別に戦わないでも奴らを絶望に叩きつけて完膚なきまでにその人格を否定できるならそれでいいんだよ。」
「……できないの?」
「できるが、一番ダメージが大きいのはこれだろ。弱いから、叩いても許されていた相手にその武力を遥かに上回られて悪いのが自分になる。何か言い返しても過去の所業が自らを苛む。丸っきり自業自得。王道的な復讐だね。まぁ、執行人が邪道だから外道な物語になるが。」
今村はその光景を思い浮かべながら笑う。
「そう……」
「特に今回はこの世界で好き勝手できるほどの強さを手にした奴らだからこそこの手法がいい。上げて落とす。王国自体の勇者の使い方として内政をさせてるのはいないからな。」
今村はそう言ってクルルを見る。食後の食休みを取るかどうか見て判断した結果、要らなさそうなので今村たちは食事を片付けて魔都に入った。
「……そんなことより、お前喰い過ぎじゃね……?」
「美味しいから……それに、私の種族は体型が変わらない……健康が悪くなってもそれで200年は生きるから……」
「……悪いの分かってて食うんだなお前……」
「我慢して長生きするより、好きなことして生きて行きたい……」
その精神は大体同じだったのでそれ以上は言わないことにして今村たちは魔都へと向かう。今村やクルルの足であればこの距離など無きに等しい物なのですぐに魔都に入ることが出来た。
「さて、魔王様に謁見と行きますか。」
「喧嘩、ダメ……!」
もう魔都の外での会話を忘れたのかと言う視線をされるが心外だと言う目を返して今村は告げる。
「いや、有益な情報を持って行ってあげるの。【目玉】で入手してる王国の内情を全て……それと、これからの展望についてのお話をね……それで出来れば就職したいな~って。」
今村はそう言って魔王城にアポイントを取りに行った。それに喧嘩をされたらどうしようという2人が付いて城門まで移動する。
「そこで止まれ。城に何のようだ?」
「いえ、魔王様に耳寄りな情報がありましてね。」
「……治世の方か。少し待て。係りの者を連れてくる。」
治世の方とはなんだ……? と言う顔をしているとサーシャがそれを察して今村に告げる。
「魔王は基本的に絶対者だから……いつ、いかなる時でも何人の挑戦も受けるの……そっちの方が謁見できるのが早いって知ったら戦うかと思って……」
「……もっと内政を大事にしろよ……」
「待たせたな。」
今村の呟きの後に人間の胴体に顔を皺くちゃにしたカエルのような頭を持つ魔族が現れて、今村の話を聞き、3日後に謁見を許されることになった。
取り敢えず魔都の宿に泊まった一行は世間話を開始した。
「あなたなら魔王を倒せるかもしれないけど……駄目よ……?」
「いや、だから俺を何だと思ってるんだっての……」
更に念を押された今村は何とも言えない顔でそう告げるがサーシャは続けた。
「過去、卑劣な人間たちが和平と嘘をついてこの地に乗り込んだ時には魔族が滅びかけたの……」
今村は魔力を循環させてトレーニングをしつつサーシャの言葉を聞く。彼女は続けた。
「その時、魔神さまが降臨されて、魔族は救われた……魔族に因る魔王交代の際には起きないけど、他種族からの攻撃では毎回起きるの……」
「ふーん。別に戦闘しに行くわけじゃないからどうでもいいって何回も言ってるんだが……そう言えば、サーシャって人間嫌いなんだな。」
「……両国間の貿易と友好の為の使者と称して来た人間をにもてなそうとした両親を殺されたから……」
割と重い話でもふーんで済ませた今村は慰めは要らないけど食べ物なら欲しいと言う顔をするサーシャに干し肉を与えてその日のトレーニングも終えた。
そして、3日後。
「やっと、着いた……!」
「クルルちゃんの反応はこの町にまだある……! 急いで行かないと!」
「魔王はすぐそこだ。皆、行こう!」
アシュリーたちと勇者たちの向かう先は同じだった。城に突撃し、その様子を見ていた門番たちは溜息をついて宣言する。
「挑戦者だな? 実力を確かめさせてもらう。」
「うらー! 邪魔だー! あるじー!」
ルナールが全力で攻撃し、門番たちは軽く目を見張るとその道を譲った。
「確かな実力を見せてもらった。王の間は門を通って真っ直ぐだ。」
「やけに素直に通してくれるんだな……」
「もしかして、魔族の皆さんも本当は戦いたくないのかも……」
「平穏な街もたくさんあったからな……その通りかもしれない……」
小声で良いように解釈した勇者たちに付いて勇者パーティは移動する。それに対してルナールたちも走りながら作戦会議だ。
「もしかしたら、魔王かもなー……魔人って。そういう意味かも。」
「……凄く、似合いますね……その通りかもしれません……」
「玉座に座って嗤いながら勇者を出迎えて潰しそうですね。」
今村を勝手に魔王に仕立て上げながら進む一行。実際に悪魔王になってしまった今村は何も言えないだろう。
その頃、玉座では喧々諤々の話が繰り広げられていた。
「ですから、中央山脈を突破して王国を滅ぼした後は魔物を倒し、国内の統治を進めるべきでしょう? 薄く広くの統治では反乱が起きた際に困る。」
「だが、王国を倒した後に再びこの魔族領に戻れば戦争の意味がない。相手は異世界から稀人を招いているのだ。戦争に掛かる費用を考えると向こうの土地を焦土にしても財を得なければ。」
「その勇者共は俺が個人的に殺すって……つーか、何で話し合いなのに殺し合いしながらじゃないとダメなんだよ!」
そして、今村は根本的な所に突っ込んだ。現在、戦闘中だ。
「強者が出会い、欲しい物を見つけた時、やることは一つだろう?」
「俺のじゃねぇ! 話を聞け!」
魔王はどうやらサーシャに一目ぼれしたらしく、このような様だ。
「お前が勝てば、お前が思う通りにこの国を扱える。俺が勝てば、【傾国の妖美姫】は我が妃だ!」
「国の統治なんかしねぇよ! 天下の大罪人になってやることは隠遁した後の死だけだ!」
「ならば俺が勝った際にはもう一つ追加だ! お前は俺の下に付け! その力を死なせるのは惜しい!」
「うっせぇ! 大体、テメェが勝つ前提で話を進めるな!」
まともに話をするのがバカらしくなってきてイライラして本気を出し始めた今村。丁度その時、運命の扉が開かれる―――
イマムラ ヒトシ (17) 魔 男
命力:10310(前回+20)
魔力:10365(前回+28)
攻撃力:10378(前回+32)
防御力:10272(前回+18)
素早さ:10284(前回+22)
魔法技術:12368(前回+29)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉石】【悪魔王の方途】
【上級技能】…【言語翻訳】
【中級技能】…【気配察知】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【調合】
≪称号一覧≫
【不羈なる悪魔王】【戦場の悪夢】【戦屍蛮行】【真玉遣い】【異界の超越者】【薬師】
現在所持金…200万G




