契の証
「落ち着いた?」
びっくりするくらい、優しい声。
「うぎゅ・・・」
まだ何か喉がつっかえてる。
「うぎゅって何?」
「それより、さぁ・・・」
「何?」
「放してくれない?」
さっきからずーっと抱きしめられてるんですけど!
「ヤダ」
はぁ?
その言葉と同時に、榎本彼方はあたしの体をさっきよりもきつく抱きしめた。
「放してって、言ってんぢゃん!」
「ん~・・・放したくない」
意味わかんない。
「あのさ、俺と契約しない?」
「けーやく?」
あたしは抱きしめられたまま、聞き返した。
「ん。
伊藤ってゆー奴と、付き合えるよーに」
「え?!」
ガバっと・・・見なきゃよかった。
あたしが上を向いたせいで、榎本彼方との顔の距離が縮まった。
あと1cm前に行けば、キスしちゃうくらい。
「ご、ごめ、」
「する?」
「え?」
男って、息臭いと思ってたけど、榎本彼方は違った。
む、無臭・・・。
しかも、何このきめ細かい肌!
ムカつくなぁ~!!
そんなことを考えているあたしに、涼しげな瞳は言った。
「契約、する?」
「え?あ、あぁ・・・どうするの?」
小夏の邪魔は、したくない。
でも・・・初恋なの。
とっても好きなの。
小夏は凄くモテるから・・・いいよね?
伊藤君の代わりなんて、すぐ見つかるよ。
「なんだかんだ言って、あっちもアンタのこと好きだと思うよ」
「そ、そーなの?!」
「知らないけど。
キライではないことは確か」
あ・・・あ~。
「だから。
俺が指導してやるよ。
恋愛の」
「まぢ?」
「ん。
っても、適当に女らしさ出させるから」
「あー・・・」
「んじゃ、証拠、残しとくから」
そう言うと、榎本彼方はあたしのシャツのファスナーを下ろした。
「はぁ?!
ちょっ・・・何してんの!!」
「言ったじゃん。
証拠残すって」
証拠って?
ぼーっとするあたしを他所に、榎本彼方はブラが全部見えるぐらいまで、あたしの服を下ろした。
「どこに残すの?!」
「どこって・・・彼氏意外の男が見れない所」
「それって、」
あたしが言い切らないうちに、榎本彼方はあたしの胸元に吸い付いた。
「っつ!!」
いった・・・。
「アンタさ、胸だけはあるんだね」
「んなっ!!」
「サイズ幾つ?」
「・・・・D・・・・」
「おぉー。
そりゃー立派だな」
あたしは自分の胸元を見た。
そこには・・・。
「き、キスマーク?!」
「ん。
証拠ね」
それが、あたしと彼方の始まりだった。




