涙
カラン、と、グラスの中の氷がぶつかり合う。
涼しげな音。
「で」
あたしをこの豪邸に引き込んだ張本人、榎本彼方を思いっきり睨む。
「何であたしを助けたの?」
そういえば、家に人いないのかな・・・。
「それはさっき答えた」
グラスの中のレモネードを、すっとのどに通す榎本彼方。
「榎本彼方!
アンタ一体なんなの?」
凄んで見せた。
「何って・・・人間?」
「そういうことぢゃない!
榎本彼方!!
もう一度言うわ。
アンタ一体、」
「てゆーか、さっきから気になってたんだけど。
何でフルネーム?」
「っくっ・・・そこか!!」
「彼方でいいってば」
ちょーメンドくさそうに言いやがる。
「っくぅ~!!」
ホンッとに腹立つ!!
「それよりさー・・・」
あたしから視線を外しながら、涼しい顔で告げた。
「何で泣いてんの?」
「え?」
あたしが泣いてる?
あたしはそこで気づいた。
さっきから視界を邪魔していたものの正体を。
「泣いてないし」
「目から何か出てるよ」
「これはっ・・・汗よ!!」
「目から汗出す奴なんていねぇよ。
それを涙っていうんだよ」
「ぅ・・じゃあ、汁!!」
「・・・・は?」
さっきまでの涼しげだった目が、白黒している。
「ぷぷぅ・・・」
ヤバッ。
「あははははは!!」
「なーに泣いてんだよ」
「泣いてないもん!」
「もういいよ」
目の前のコイツは、急にあたしを抱きしめた。
その時、あたしの中の糸が切れた。
「う・・・ぅ・・・・うぅ」
止まんないよ。
汁・・・どんどん出てくるよ。
何でかな?
何であたしは彼方の優しさに、もっと早くから気づけなかったのかな?
伊藤君より先に、出会っていれば良かったのに。
今だから思うよ。
誰よりも・・・誰よりも・・・
キミを・・・




