第七話
最近、毎日後輩の楠木と一緒に帰るようになった。
授業が終わると必ず教室まで迎えに来てくれるし、デートの時だって、
映画が終わるまでずっと抱きしめられていた気がする。
「あれ…これってハグ?」
「どうしたんだ?」
「えっ…別に……なんでもないよ」
「後輩の事か?」
「あ……うん、でもね、悪い子じゃないんだよ。でもね、ちょっと距離
が近いって言うか…」
「嫌なのか?」
「嫌じゃ……ないっていうか………なんかドキドキしちゃって」
なんと言えばいいのだろう。
好きになった?のだろうか?
あんなに自分は一途だと思っていたのだが、こんなに早く切り替えれる
ものだったのだろうか?
月島は少し不思議に思っていた。
あんなに酷く振られたのに、楠木がいたおかげかそこまで寂しくない。
逆に、今が楽しいとさえ思ってしまっているのだ。
「僕って単純なのかな?」
「…?」
「だって、先輩の事あんなに好きだったのに…今は後輩の楠木くんの
事がすっごく気になってるんだよ?」
「そんなもんじゃねーの?」
素っ気なく言う水戸に抗議しようと窓の外を眺めるとちょうど目に入
ったのは楠木の姿だった。
遠くから見てもカッコよくて、男の月島を好きになってくれるような
感じには見えなかった。
女子にいつも囲まれるように笑っていて、どこからどう見ても王子様
というあだ名が似合う人だった。
「どうして僕なんかに告白したんだろ?」
「同情とか?」
「まさかっ………違うよね?」
「いや、俺に言うなよ…」
「うん、そうだよね……」
見れば見るほどわからなくなってくるのだった。
そんな時、いきなりスマホが鳴った。
いつもの着信音にビクッ震えると手の中で鳴り響いているのに、出る
気持ちにはなれなかった。
「誰?」
「う…うん…ちょっと間違い電話みたい…」
月島の反応を見て、水戸はすぐにスマホを取り上げた。
画面には一条と書かれていて、多分電話の向こうではイライラしてい
る事だろう。
いつもならワンコールするまでには取っているのに、全く出る気配す
らないのだから。
プチッと切ると月島に返した。
「もう出る必要もないでしょ?ブロックしたら?」
「そう…だよね…」
スマホをいじる指が震えているのに気づく。
いくらブロックすると言っても、少し前までは好きで仕方がなかっ
た相手なのだ。
そう簡単には割り切れないのだろう。
「気になるなら楠木にでも相談したら?」
「えっ、なんで楠木くん?」
「だって、今付き合ってるんでしょ?」
「それは……そうなんだけど…」
これ以上情けないところを見せたくないという心情もわからなくは
ない。
が、本人以上にあの後輩はきっと月島の事には敏感な気がする。
「まぁ〜黙っていたいならそれでもいいけど、あの先輩なんだかし
つこそうだらかさ〜」
「しつこいって、僕には全く構ってもくれなかったのに?」
「そうなら…いいんだよ。」
水戸は窓の外にいる楠木に一瞥すると離れたのだった。




