第10話 『贈り物』
ギィ・・・・・・と建付けの古さを感じさせる音を響かす閉開音。
この音を聞くのもこれで最後か、と哀愁を内に宿らせるユレスはハルマレアと共に礼拝堂から外に出た。彼らを迎えるように、陽光が二人の全身を照らしていく。
「・・・・・・あ」
バタン、と教会の扉が閉まると同時、目の先に広がる光景を見たハルマレアが何かを想起したような声を上げた。
ユレスも彼女と同じように目の先を見やり、ハッとする。
まだ片付けていない問題があったのだ。
「そういえば放置したままだった・・・・・・どうしようか、レア」
「ふむ」
二人の目線の先にあるのは——地面に転がったままのダラネモアと怪魔達の死体だ。
どう扱おうか決めかねて、決められずにここまで来てしまった。
墓を作るなんてゴメンだ。この村を滅ぼした奴らの為に作る義理などどこを探してもない。
かと言って、このまま放置して行くのも気分は悪くなる。
「・・・・・・一つだけ無い事も無いが」
そう言うハルマレアは言いたくないとハッキリ顔に出している。
それでユレスも直感した。確かにこの方法なら片付けられるが・・・・・・。
思うところはあるが、ひとまず彼女が思い浮かんだであろう方法をユレスは口にした。
「『吸黒魔雲』で吸収しろ、か? けれど死体を吸収したら邪神魔法を発現する事になる・・・・・・さっき使いたくないと言ったばかりなんだが」
「うむ。前言撤回にも程があるな。だが吸収してすぐに邪神魔法を発現しなければならない、というワケでもないのだぞ」
「? どういう事だ?」
「蓄えられるのだ。それこそ今日の朝飯の備蓄のようにな。今のなれなら、使いたいタイミングで吸収した魔法、邪神魔法を発現出来るはずだ。ただし重大な事が一つ。よく覚えておけ。蓄えるのはいいが、蓄えたモノを消費するまでは次の『吸黒魔雲』は出せぬのだ」
「つまり・・・・・・仮にダラネモア達の死体を吸収しても邪神魔法をすぐに発現せずに使わないままでいられるが、その邪神魔法を使わないと『吸黒魔雲』は二度と出せずに、また魔法が使えない人生に戻るって事か」
「まさしく、そうさな」
「久々にレアから魔法について教わったな」
基本を覚え、慣れてきた頃にはもう独自で『黒魔刻魔法』を磨いていた日々を脳裏に思い起こすユレス。ハルマレアは一応見てくれていたが、ほぼ寝てた。
昼寝が大好きな彼女である。
「邪神魔法は教えるつもりはなかったんだが、もうなれは知ってしまったからな。未知のままではこの先、何かやらかすかもしれぬのでな」
「否定は出来ないな」
未来は分からないのだから。
さて、結局どうすべきかと本題に回帰する。
ここは——前向きに捉えるべきか。ダラネモア達は憎き怪魔どもだ。吸収して消費する事に躊躇いはない。それにこの先、ダラネモア達のように集団で囲まれる可能性も高い。その時に蓄えている邪神魔法で昨日のように蹴散らせば——。
ここでユレスはふと気付いた。
自分が、攻撃的な性格になっている事に。
戦闘に怯えていた自分はどこにいったのやら。
「・・・・・・よし」
「決めたのか?」
「ああ。全部、吸収しとくよ。また襲われた時まで蓄えとく」
「ふっ。なれも前言撤回が早すぎるな。・・・・・・ユレスよ」
「何だい?」
あの時のように両手を天にかざし、『吸黒魔雲』を目一杯出そうとするユレスに彼女は、
「チカラに溺れるなよ・・・・・・」
そう、真剣さを滲ませて言った。
その彼女の顔を見つめつつ、ユレスは無言で大きく首肯し、『吸黒魔雲』を発現させていった。
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「これで良し」
ポポポン!! とダラネモア達の死体を飲み込んだ『吸黒魔雲』が一斉に消える。彼らがいなくなった事で密度が減り、元の広がった空間が帰ってきた。
否、広すぎる空間だ。このテルスタ村にはもう、自分達以外誰もいないのだから。そしてこれから自分達も旅立つことで、テルスタ村は廃村として完成してしまう。
——たとえ風化して誰からも忘れられたとしても、自分だけは絶対に忘れない。
故郷の姿を心中に刻み付けるように見やった後、ユレスは村の出入口に顔を向けて口を開いた。
「行こう。隣村のメデルス村に」
「うむ」
二人並んで歩き出し、出入口を抜けて街道に足を踏み入れる。懐かしい。村の外に出るのはいつぶりか。
「そういやなれ、メデルス村に行った事はあるのか?」
歩き出しながら隣の彼女がそう尋ねてくる。まさに今回想していたところだ。
せっかく一緒に歩いているのだ。無言で歩き続けるのはつまらないだろう。目的地までの無聊を慰めるために、彼女が持ちかけた雑談に乗る事にしよう。
「確か最後に行ったのはソムロス様とで・・・・・・まあ一緒に行く相手はソムロス様しかいなかったんだが」
「そんな寂しい情報は別に言わなくていい」
「あ、ああ。で、いつ行ったかだな。確か一年前ぐらいじゃないか?」
「結構間空いてるな!? 一年も村外に出なかったのかなれは・・・・・・」
「特に行きたいワケでもなかったしなぁ」
「遊び心が無い奴よ・・・・・・お兄ちゃんかわいそっ」
「妹目線で憐れむんじゃないッ。それにもう君が圧倒的年上だと分かってるんだぞこっちは!」
「だがしかし、少女にしか見えぬだろうあては。生物は視覚に依存するからな。頭では分かっていても、心根の方では目の前の現実を受け入れているものなのだ。特に人間はな」
「まぁそうだけどな・・・・・・とにもかくにも、もう私の中ではメデルス村の風景は色褪せている。もはや行った事がないと同義。初めて村外に出る気分だよ」
「閉じた世界にいたのだなぁ。なれにとっては今、新たな世界に踏み出しているというワケか。それなら早く言えば良かったものを。そしたら三人で、」
あ、と彼女は口を閉じる。つい言ってしまったのだろう。
そんな彼女にユレスは頷き、
「そうだな。言えば良かったよ、本当に」
もっと活動的だったらと、ユレスは過去の自分をなじる。無駄な行為だ。過去はもうどうしたって変えられないのだ。
だから必要なのは、反省である。
そうして、言葉を詰まらせた彼女は気を取り直すように「あ、そうだ!」と明るく言った後、
「ずっと気になっていたんだが、なれはなぜ一人称が〝私〟なのだ? 別に悪いワケではないが、男なら基本〝俺〟か〝僕〟ではないか?」
「あぁ、それは簡単な話さ」
下が川の橋を渡りきり、ユレスは子供のような無邪気な笑顔を浮かべて、こう言ったのだった。
「——ソムロス様に憧れて使うようになったんだよ」
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雑談をしながら歩いてしばらく。ユレスとハルマレアは目的地であるメデルス村に到着し、入り口の近くで雑踏と喧噪が溢れる村内を眺めていた。
入り口から少し離れた所には運送業者——蜥蜴車を扱う大きな店がある。その店の隣に人を乗せる用の荷車二台が置いてあるだけで、肝心の荷車を引っ張る走巨蜥蜴はいない。恐らく店内に飼育所があってそこにいるのだろう。
蜥蜴車には無論用はあるが、今は他の優先事項——彼女に服を買い与えなくてはならないという使命がある。故に蜥蜴車は後回しだ。
そうして、久々にこの村に来たユレスは新鮮さを、ハルマレアは愉快さをメデルス村から受け取りつつ、
「活気が溢れておるな?」
「もう少しで昼時だからな。じゃ、服屋を探すか」
「うむ!」
笑顔で返事をする彼女を皮切りに歩き出す。この村は必需品の種類が多く、今は亡きテルスタ村の村人達も食料、衣類、娯楽を求めてよくここに来ていたのだ。
服屋を探しながら人とすれ違っていく。その彼らの視線がハルマレアに流れるのがハッキリと見える。
当然だろう。一目見て分かる高級な服。それがところどころ切り裂かれて破けているのだから。
「(やはり嫌でも目立つな・・・・・・早めに買わないとな)」
ユレスとハルマレアの立場上、勿論目立つのはよろしくない。早急に解決しなくてはならない問題だ。
「(どこだったかな、ホント覚えてないな)」
そうして、少し先に外にも飾られている様々な服をユレスは視界に捉えた。
ようやくか、と彼女の肩をそっと叩き、
「レア、見つけたよ。あそこだ」
「お? おーおー! よし、ゆくぞっ」
高揚とした気分を維持しているハルマレアは、我慢が効かないとばかりに件の服屋に駆け出していく。よほど楽しみで仕方がないと見える。
彼女を追い、ユレスも見つけた服屋の店内に足を踏み入れた。中はそこそこの広さだ。先客が三人程いる。あまり繁盛している風には見えないが、混んでない時間帯に偶然来ただけの可能性もある。
どちらにしろ、目立ちたくないユレスとハルマレアにとってはありがたい。少しだけ間を置いてから「いらっしゃいませ!」という挨拶がユレスの耳に届いた。精算場にいる店員が言ったのだろう。
置いてある服を適当に冷やかしつつ彼女の元に辿り着くユレス。先に店内に入った彼女は、うきうきと喜色を顔に浮かばせながら両手に持っている服を自分に重ねて見比べていた。
しかし気に入らないのか、彼女は首を捻ってから服を戻し、ため息をつきつつこう言った。
「残念だが、ここにはあての求める服はないようだ」
「そうか・・・・・・じゃあ次行くか?」
「うむ。次こそは良いのがあるのを期待しよう」
何も買わずに彼女と店を出て行く。その途中で「ありがとうございましたぁ~・・・・・・」という先程とは圧倒的にやる気を感じさせない挨拶がユレスの耳に飛び込んで来た。店員の義務として仕方なく言ったであろう挨拶を背に、再び服屋探しに出向きしばし歩くと、二店舗目の服屋を発見した。
似たような店は一か所に集まるものか、とユレスが利便さを感じている時、ハルマレアは左手の人差し指を二店舗目の服屋に指し、
「二つ目の服屋発見だな! よしよーし、早速突撃だっ」
言うや否や駆け出すハルマレア。その彼女に追随するためユレスも向かおうとしたが、
「・・・・・・なるほど」
とある露店が視界に入り、ある物を発見して考察し——決めた。
その露店に向かう前にハルマレアに一声掛けたかったが、もう彼女はすでに店の中だ。
「(まぁ、すぐに済むからいいか)」
そう思案し、早速白髪の彼はその露店へと歩み出していく。
喜んでくれればいいのだが、と不安を胸中に抱えながら・・・・・・。
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「——あ! こらユレスっ。どこほっつき歩いていたのだ! なれがいなければ服が買えぬではないか!!」
「ごめんごめん。買いたい物があったからさ」
露店で買ってから二店舗目の服屋の店内に来るまでの時間はそうかかっていないはずだが、彼女はご立腹であった。しかしその怒りも当然だ。ユレスがいなければ彼女はただの無一文の冷やかし客にしかならないのだから。
そんな彼女の両手には朱色の上衣と茶色のロングスカートが乗っている。それらを見つつユレスは、
「その持ってるヤツでいいのか?」
「うむ。なるべく目立たない色を選んだつもりだ。特に茶色などはそうであろう?」
「確かにな。朱色はまぁ、赤色に近い色だが、赤よりは優しい色をしてるよな」
「まさしく完璧な組み合わせよ・・・・・・! これであてもただの少女にしか見えまいて。だっはっはっは!!」
ただの少女になるのが嬉しいのか、楽しいのか。先程の怒りとは打って変わって笑顔で高笑いするハルマレア。
露店で買った物を渡したいところだが、渡すのは彼女が新しい服装に着替えた時がいいだろう。
「それじゃ、精算場に行くか」
「うむうむ。ふっふーん♪」
これから購入する服を持ちつつ全身を回転させながら歩く彼女はまさにご機嫌だ。他の客に迷惑な動きをしてるにも関わらず、周囲の視線は穏やかである。確かに客観的に見れば、小柄な少女が服を買ってもらうという場面は結構微笑ましい。
そうして精算場に着いたユレスは懐から一つ革袋を取り出し、服の金額分のイユ銀貨四枚を払う。金を受け取った店員はにこやかな顔のまま口を開いた。
「良ければなのですが、そちらにある試着室で着替えてから行かれてはどうでしょうか?」
そう言う女性の口は微笑んだままなのだが、視線は悲し気なのが窺えた。ハルマレアのボロボロの服装を見て、我慢が効かずに言ったのだろう。
ここは彼女のお言葉に甘えた方が賢明だ。そう判断したユレスは首肯し、
「ええ、その通りですね。じゃあレア、そこの試着室で着替えておいで」
「まるで妹に接するような態度だな・・・・・・やはり?」
「いいから! 早く行ってこいっ」
「ひ~ん、お兄ちゃんこわい~」
ふざけた様子でハルマレアが試着室に駆け込み、シャッ! と覗き防止のカーテンを展開する。
そんな彼女に白髪の彼が呆れたため息をつく傍ら、店員の彼女はクスクスと笑いつつ片手で口元を抑え、
「可愛い妹さんですね?」
「いえ、いもう、」
妹ではない、と否定するのは簡単だが、その後が結構面倒だ。ではどんな関係なのか、やらの話題はまずい。無意識にボロを出してしまうかもしれない。
故にここは、賛同しておくのが吉で間違いない。
「——ええ、可愛いですが、困った妹ですよ。ホント」
「ふふっ、でも兄妹にしては似てないような気が・・・・・・」
「!!?」
「なーんて、深読みするのは失礼ですよね。すみません」
「い、いえっ」
唐突の爆弾発言にユレスの心臓の鼓動が一気に高鳴ってしまう。肯定も肯定で危ういという事か。
額の冷や汗を拭きつつ、勉強になったとユレスが深呼吸をした直後。
シャッ! と再びカーテンの動く音が耳朶を打った。
呼吸を整えたユレスがそちらに向くと・・・・・・、
「——どうだ? 似合っているか・・・・・・?」
今まで着ていた高級な服を両手で持つ、新しい装いになったハルマレアが視界一杯に広がった。
「————」
下衣の茶色のロングスカートは、小柄な少女を大人へと錯覚させるようなモノを孕んでおり(錯覚も何も彼女は大人だが)、上衣の朱色の長袖は、落ち着いた年季を感じさせる服装だ。百歳なのだから落ち着いて欲しいが。
とにかく、どこからどう見ても、普通の少女にしか見えないのだ。
そして、とても似合っている。
「んん? どうなのだ? あてはなれの感想が欲しいのだが?」
「ぁ、ああ・・・・・・」
思った事を口にするだけでいいのに、なぜか舌に言葉が乗らない。
なぜなのだろう、と疑問をもたげるユレスがじれったいのか、彼女は肩をすくめつつ「まぁ、いいわ」と言い、
「して、こちらの元々着ていた服はどうするかだが」
「そ、そうだな。レアはどうしたいんだ? 持っていたいか?」
「いや、そこまで未練は持っていないな。別に処分しても構わん」
「そうか。じゃあどこかで、」
「あ! それでしたらこちらの方で処分しましょうか? 服屋の店員としてその服に興味がありまして」
黙って二人の話を聞いていた店員の彼女がそう割り込んで来た。まさに願ったり叶ったりだ。彼女の提案に乗らない手はない。ボロボロだから売却も無理だろうし。
目線をハルマレアに送る。決めるのは彼女だ。
「うむ、そうさな。では煮るやり焼くなり好きにするがいい!」
「いえ・・・・・・さすがにそんな真似はしませんよ・・・・・・」
ハルマレアから高級な服を受け取った店員は引きつつそう言う。これでもうこの服屋に用は無くなった。
あとは、例の物を彼女に渡すだけである。
新たな服を纏ったハルマレアを連れ、店外に出て行く。その二人の背に「ありがとうございました! またお越しください!!」という元気溌剌な挨拶が飛んできた。やはり買うのと買わないとじゃ違うものだな、と一店舗目の服屋を思い出しつつ外に出た。
そうして、少し歩いてから横道にそれて立ち止まる。彼の隣で歩いていた彼女は不思議そうにしながらも同じく追随して立ち止まり、
「どうした? 休憩したいのか?」
「いや、実は・・・・・・君に渡す物があってね」
「あてに?」
さらに疑問で首を傾ける彼女に頷き、ユレスは懐から右手でシュルッ、と——水色の何かを取り出し、その右手を彼女に伸ばして、照れたようにこう言った。
「服を買うだけじゃまだ足りないと思ってな・・・・・・一応、君に似合うと考えて買ったつもりだ・・・・・・」
「これは・・・・・・リボン、か」
白髪の彼から渡された物は、どこにでもあるような水色のリボンだった。
ハルマレア的には服を買ってもらうだけで良かったのだが、どうやら彼は責任を強く感じているようだ。
「・・・・・・・・・・」
左の手のひらに乗せた水色のリボンを彼女は見つめる。無論このリボン以上に高級な装飾品などを与えられた経験は多数だ。
普通なら、なんだこの安そうな物は、と文句が心中に浮かぶものだと思われるが、ハルマレアに浮かんだ感情は——心地よい、純粋な喜びであった。
自分が選んだ物ではなく、ユレスの意思で選んだ物。
それが、とても良い。
口元を綻ばせ、ハルマレアは言葉ではなく行動で礼を示す事にした。
両手を頭の後ろに持っていき、紫髪を束ねて水色のリボンを結んでいき・・・・・・、
「ふぅ」
頭を軽く左右に振り、ぶらぶらと出来上がった長いポニーテールを尻尾のように揺らす。
そして、無言でユレスにニコッと笑いかける。その視線は挑戦的だ。
彼女の意図を理解したユレスは、一度顔を俯かせてから口を開いた。
「リボンは責任なのもあるんだが、そうやって見た目を変えることで身元をバレにくくするという効果も、」
「それが、なれのあてに対しての感想か?」
「・・・・・・・・・・」
そっと息を吐き出し、白髪の彼は改めて、こう言った。
「似合ってるよ、すごく。服と合わせて印象が大分変わったね」
「そうか・・・・・・そうか・・・・・・」
今度はしっかりと言えた事にユレスはホッとしつつ、彼女を見やる。ご満悦な様子だ。リボンがお気に召したようで良かった、とユレスも口元を綻ばせる。
次第に彼女はぐるぐると、自分の長いポニーテールを追いかけるように回り始めた。
「だっはっは! 待て待てー!」
「何やってんだか・・・・・・」
そんな彼女をユレスは、綻んだ口のまましばし見つめるのだった。




