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よそ見厳禁

「――兄貴、聞いとっと!」


「あ~ごめんごめん。卵やろ? 帰りに買っとく」


 もう、わすれんでよ。と、信号が変わった横断歩道を自転車で渡る中学生。

 季節も冬に近いからか、セーラー服にはマフラーが巻いてある。


 我が妹ながらびっくりするくらい男勝りな美人に成ったなぁと独語するのは俺こと、西住・歩だ。

 特に何の変哲もない、普通の高校二年生をやっている。


 少しあるとすれば戦車とかそういうものが好きというぐらいかな。

 とは言っても触りぐらいなものでマニアの方々ほどの知識があるわけでは無い。

 戦う機械にロマンを感じるのは男の子なら仕方ないと思っている。


「それにしても冷えるな」


 白い息と共に吐きだす声。

 思わず首をすくめる位には冷えている朝。弓道部の朝練に間にあうよう、歩は自転車をこいでいた。


 これからの季節の練習はほんとに辛い。

 弓道場はその構造上、どうしても屋外に開放的な形に成っているし、袴も足袋も決して防寒とかには成っていない。


 体はほとんど動かさないから練習中もガンガン冷える。

 風が吹く日なんかやってられない。

 弓道は好きだけど、寒いのは寒いのだ。


 とは言ってももうすぐ大会があるんだから仕方ないか。

 と、いつも以上に張り切っていた部長の顔を思い出して苦笑する。

 部長が頑張っているのに副部長の俺が休むわけにはいかないな、と歩は思う。


「お、バルーンだ」


 自転車を漕ぎつつ、眺めた西の空には色とりどりの熱気球が朝空一杯に浮かんでいた。

 熱気球にとって、空気の冷えて風の激しく無いこの時期の朝は飛ばすことのできる絶好のチャンスだ。


 それに加えて田んぼがとても多いこの地域は刈り入れも終わり、熱気球が万が一不時着するようなことになっても安心な環境にもなっている。


 そんな諸条件がそろう中、この県は毎年、熱気球の大きなイベントと大会を開催している。毎年、この時期に熱気球がたくさん飛んでいるのは練習のためだ。


 一応、県庁所在地でもある街中でもそんな遠くの光景が見渡せるこの街は、都会とは程遠いのは違いないだろう。

 そんな街だが、登校中に空を見上げればそこにバルーンがあるようなこの街の事を歩は好きだった。





 ……ただ、横断歩道で空を見上げるのは止めた方がよかったのだろう。

 けたたましいクラクションに思わず横に振り向く歩。


「ちょっ!?」


 最後に視界に飛び込んできたのは信号無視をして突っ込んでくる大型トラックだった。


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