霧の中、橋の上で。
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翌日、キリクとウォーカーは長閑な農道をガラガラと荷馬車に揺られながら進んでいた。
宿舎を出る手続きを終え、お世話になった第二課の方々に挨拶を終えた三人は街から幾つも離れた別の地方へと訪れていた。
ウォーカーは挨拶に向かった時に自身を逮捕、拘禁するのではないかと危惧していたが、新しい情報を元に捜査へと出て行ってしまっており、待機していた三十路の男性捜査官しか残って居なかった。
行先とこれまでのお礼を告げると励ましの言葉とある程度の路銀を貰ってあっさりと出て行くことが出来たのである。
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数日後、霧が立ち込める街のある石橋の上に二人の少年が経っていた。
その二人の横を馬車がガラガラとせわしなく通り、橋の下を幾つもの魔導船がくぐり抜けていく。
キリクとウォーカーはシンニツ省の都市郊外にある、陸軍教練所へと来ていた。
先日のカールスへの告白後、更なる追及が行われるものと覚悟していたウォーカーだったが、その後特に支障も無く、クロエをとある孤児院に預けて、ここまで来ることが出来た。
気にかかることではあったが、一度軍の中に入ってしまえば関係のない事だと思い、心の隅に記憶しておくに留めておくことにしていた。
「じゃ、僕はもう行くね」
「ああ、気を着けてな」
「大丈夫、バカは風邪ひかないって言うし」
「そうか?」
「キリク兄ちゃんも頑張って」
「ああ」
書類の入った封筒を手に持ち、片手を差し出すウォーカー。
それに応じるようにして手をしっかりと握るキリク。
「月に一度はちゃんと連絡よこすんだぞ」
「うん、もちろんさ」
ニカッと笑うウォーカーに対し、名残惜しそうに手を放すキリク。
「……じゃあな」
「うん、またね」
ひらひらと手を振り確かな足取りで歩むウォーカー。
霧に包まれた町の中、二度と振り返ることも無く彼の姿は雑踏へと消えていった。
「――気をつけて欲しいのは心の方だったんだがな」
幾ら前世を思い出したからと言ってウォーカーはキリクの弟である。
そんな弟が気丈にふるまっているというのは兄から見てよく分かっていた。
だが、キリク本人の心の傷も癒えていない中、ウォーカーに気を駆ける余裕を残念ながら持ち合わせていなかった。
そんなウォーカーが何処か無理した状態でこれから更に激しい場所へと旅立つのをキリクはただ見守ることしか出来なかった。
「……次会う時は美味しいものでも食べに行くかね」
一人、橋の上で立ちすくむキリクは心に重いものを抱えながらつぶやき立ち去っていった。
……こうしてフロマージュ・ウォーカーはわずか10歳余りにして軍の門をくぐることとなる。これが後の歴史に如何に影響を及ぼしていくのか、この時点で見通すことが出来るものはいなかった。
実に帝国歴1203年10月、霧に覆われた肌寒い日の事であった。
これにて本章は終わりです!次回からは新しい場面へと変わります。
中々戦車を出せていませんが今しばらくお待ちくださいませ。
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(戦車が出てきたら魔法なんか蹴散らしてぎっちょんちょんにしてやるんだから!)




